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犬王 [アニメーション]


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 まずはあらすじから。
 公式サイトの「STORY」とwikiの記述をちょいと編集して・・・。


 時は室町時代。2人の主人公の生い立ちから語られる。

 京の都の猿楽の一座に生まれた子・犬王(いぬおう)は、その異形の姿から周囲に疎まれ、顔を瓢箪の面によって隠されて育つ。父に忌み嫌われる犬王は、芸の修業からは外されていたが、自ら舞や唄を身につけていく。

 壇ノ浦に生まれた漁師の息子・友魚(ともな)。彼の一族は、海から昔の財物を引き上げることを生業にしていた。友魚の父は、かつて源平合戦で沈んだ三種の神器のひとつ、”天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)” を海から引き上げるよう依頼を受け、友魚もこれに同行する。
 ちなみに  ”天叢雲剣” は、別名 ”草薙剣(くさなぎのつるぎ)” ともいう。

 しかし、剣を引き上げた父は ”呪い” を受けて命を落とし、剣は再び海へ。友魚もその ”余波” を受けて盲目となってしまう。

 恨みを抱えて亡霊となった父の声に従い、友魚は京へ行き、出会った琵琶法師の所属する「覚一座」に弟子入りし、長じて自身も琵琶法師となる。

 この2人が京の橋の上で出会う。盲目ゆえに犬王の異形を厭わない友魚。
 名よりも先に、歌と舞を交わす2人。
 友魚は琵琶の弦を弾き、犬王は足を踏み鳴らす。
 一瞬にして拡がる、二人だけの呼吸、二人だけの世界。

 「ここから始まるんだ俺たちは!」
 壮絶な運命すら楽しみ、力強い舞で自らの人生を切り拓く犬王。
 呪いの真相を求め、琵琶を掻き鳴らし異界と共振する友魚。

 乱世を生き抜くためのバディとなった二人は、お互いの才能を開花させ、唯一無二のエンターテイナーとして人々を熱狂させていく。頂点を極めた二人を待ち受けるものとは――?


 まずは、幼少期の犬王の ”異形” ぶりに度肝を抜かれる。足らしい足がなく、両手の長さが極端に違う。そして目や口の位置が常人と異なる ”異相”。
 これが主人公で、映画の中で延々とこの姿を見せられるのは辛いなあ・・・と思っていたら、どうやらこれは ”呪い” によるものであることがわかってくる。
 平家の亡霊がその主体らしいのだが、それだけではなく、その真相は終盤に明かされる。

 この呪いは、犬王が舞の技術を身につけて、その技量が一段上がるたびに、順々に ”解けて” いくようだ。まずは両足が復活して・・・というように。
 映画の中で、犬王が次々に大舞台をこなし、人気実力ともに ”上り詰めて” いくうちに、残りの部分も順次呪いが ”解けて” いく。

 こう書いてくると、これによく似たシチュエーションの物語を思い出す人もいるかもしれない。手塚治虫の ”アレ” である(あえてタイトルは書かない)。


 この作品は史実を元にした室町時代の歴史アニメではなく、純然たるファンタジーである。登場する人々も、京の町も、みなファンタジー世界の中にある ”もう一つの京の都” だ。
 足利義満も犬王も歴史的には実在の人物だけど、この映画の中ではファンタジー世界の住人なのだ。


 その極めつけが犬王&友魚の ”舞&演奏”。これは強烈なまでに独特である。
 それまでの猿楽&琵琶法師の語りを ”古典的伝統芸” とすると、彼らのそれは(当時からしたら) ”超先鋭的な前衛芸術” である。

 友魚の演奏はまさにパワフルなロックのサウンド。彼の琵琶の音色にはいつしかエレキギターの響きが重なっていく。大きめの琵琶をコントラバスみたいに演奏する者や巨大な太鼓を持った者などの ”バンドメンバー” も登場する。

 そしてそれをバックに舞う犬王は、縦横無尽にジャンルを超越していく。
 あるときはバレエのように、あるときは体操、あるいは新体操のように。

 舞台の上で、スポットライトを浴びながら伸びやかな手足で華麗に舞う犬王。
 お堂の欄干の上を、あたかも平均台の演技のように舞う犬王。
 両端を燃やした松明を回転させつつ投げ上げ、舞いながら受け止める犬王。
 高所から垂らしたロープに体をつなぎ、観衆の上を飛びまわる犬王。
 (おまえは堂本光一か、ってツッコミを入れたくなる。)

 この時代にはどうみても不可能そうな演出もあるのだけど、彼らのパフォーマンスに圧倒されて、観ているうちにどうでもよくなってしまう(笑)。

 京の人々は熱狂的に彼らの ”舞台” を受け入れる。そしてついに将軍の前で披露することに。しかし、彼らの人気をやっかむ ”旧勢力” の者たちもまた、暗躍を始める・・・


 観終わった第一印象は、『竜とそばかすの姫』に近い印象。
 映像と音楽はスゴいけど、エンタメとしてはストーリーが今ひとつかな、という感じ。

 『竜-』の、電脳空間をゴリゴリのCGでこれでもかと描いたのとは対照的に、室町時代の ”前衛ロックコンサート” をこれまた独特の雰囲気で映像化してる。こちらもけっこうCGは使われてると思うのだけど、それを感じさせないのは上手いと思う。
 音楽も、ロックの演奏と主役2人の素晴らしい歌声で、確かに ”聴かせる” ものになってる。

 よく言えば超個性的、悪く言えばもの凄くアクが強いので、観る人を選ぶ映画かなぁとは思う。一番尺を取ってるのが犬王の ”ステージ” シーンなので、そこが受け入れられるなら、たまらなくハマる人もいるだろうし、全く受けつけない人も出るだろう。

 私は、うーん、その中間かなぁ。
 やりたいこと、訴えたいことは分かるのだけど、どうにもテンポが合わないというか・・・。”ステージ” シーンがちょっと長すぎるって感じてしまうのは、やっぱり波長が合ってないんだろうと思う。


 声優について。

 犬王は「アヴちゃん」という人。
 シンガーソングライターで「女王蜂」ってバンドのボーカルもしてるとか。
 声優としての評価はちょっと難しい。何せ演じてるのが ”ほとんど人外” なキャラなんで(笑)。
 でも、(多分にアニメの絵柄に助けられてるとも思うが)見ていて違和感がないのは流石だ。この作品だけに限っていえば、彼の起用は正解だと思う。意外と(失礼!)伸びのある、いい声だと思う。歌のシーンもハマってるし。
 今は歌を歌える声優さんも多いけど、彼のようなワイルドな歌声が出せる人はそうそういないと思うし。

 友魚は森山未來。
 この人も音楽活動してるみたいで、友魚の歌唱シーンにも違和感ない。
 総じて主役2人の起用は正解かと思う。

 将軍・足利義満は柄本佑。
 まあ下手ではないと思うけど、『ハケンアニメ!』を観たばっかりだったせいか、彼の顔が浮かんでしまうのは如何ともし難い(笑)。

 有名俳優さんを使うとこんなことが起こる。声優としては上手でも、演じてる俳優さんの顔が ”見えて” しまうんだよねぇ。21世紀に入ってからの宮崎アニメなんか特にそうだった。だから有名人の起用はやめてって何回も(以下略)。

 犬王の父は津田健次郎。物語のキーパースンとなる人物だ。ベテランらしく安定の演技で、映画を盛り上げる。
 『シン・ウルトラマン』にも出てたし、最近頻繁に ”出くわす” ような気が。ものすごく売れっ子になってるのを実感する。

 友魚の父は松重豊。
 とても印象的なキャラなんだけど、エンドロールを見るまで松重さんだと分かりませんでした(笑)。


最後に余計なことを。

 終盤に登場する ”アレ” を見て、「○○○ン○○!?」って(心の中で)叫んでしまいました。
 いったんそう思ったら、もうそれにしか見えなくなって困った(爆)。



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