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夏へのトンネル、さよならの出口 [アニメーション]

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まずはあらすじの紹介から。

 塔野カオルは高校2年生。通学電車の中で ”ウラシマトンネル” なるものの噂を耳にする。そこに入れば欲しいものがなんでも手に入る。その代わりに年を取ってしまうのだと――。

 カオルの通う高校のクラスに転校生が入った。彼女の名は花城あんず。家庭の事情で東京から越してきた。クラスの女王・川崎小春は、さっそくに花城にちょっかいを出すが手ひどい反撃を喰らってしまう。

 カオルはその日の夜、線路伝いに歩いて、謎のトンネルを見つける。トンネルの入口あたりを覗いたら、5年前に事故死した妹・カレンのサンダルと妹が飼っていたインコを見つけた。ここが噂の ”ウラシマトンネル” らしい・・・

 カオルの家庭は、カレンの死によって崩壊していた。母は家を出て、父は酒浸り。このトンネルに入れば、カレンを取り戻すことができるかもしれない。

 しかし、トンネルの中の時間の流れは外と違っていた。トンネル内で2分ほど過ごしただけで外界では3日が経っていた。

 放課後にカオルは、一人で再度、ウラシマトンネルの検証を始める。とりあえず、亡くなった妹に会う方法を探るカオルだったが、そこを花城あんずに見つかってしまう。彼女にもまた ”手に入れたいもの” があり、2人は協力関係を結ぶことになる。

「”こちら” に帰ってくるのが1000年先の未来になってしまったとしても、”欲しいもの” を手に入れるために、2人でトンネルに入ろう」
 そう約束したカオルとあんずなのだが・・・



 2人とも、満たされない家庭環境にある。カオルの父は酒に逃避して家族を忘れ、あんずの両親は彼女の将来の希望に理解を示さない。
 そういう状況からの脱出を願うのも、分からなくはない。彼らを支えてくれる大人が一人でもいれば、この映画のような選択はしなかっただろうから。

 ボーイ・ミーツ・ガールのラブ・ストーリーとしてはよくできてると思う。2人が距離を縮めていくきっかけが、それぞれの家庭環境だったというのは哀しいところだけどね。

 SFとしてはちょっと不満。”ウラシマトンネル” によって ”時を超える” 物語が可能になったのだから、もうひとひねりくらいほしかったかな。
 とはいっても、作者にはSFを書くという意識が希薄なのかも知れない。”ウラシマトンネル” も、2人の ”愛の障壁” としての位置づけが大きいようだ。
 上映時間が80分ほどというのも微妙なところ。Wikipediaの記述をみると、原作から削られた要素も相当あるみたい。もう20分くらいあったら、また違った印象を受けたかも知れない。

 最終的に2人は ”家族の呪縛” から解き放たれて、新たな関係を結ぶに至るのだが・・・このラストはどうなのだろう。

 ネットでの感想をちょっと観てみたら、この結末を肯定的に捉えている人が多いみたいだ。だけど、私はちょっと引っかかるんだなぁ・・・。

 まあカップルの数だけ幸福の形はあるのだろうし、本人たちが満足しているところに外野からいろいろ言うのは、それこそ「大きなお世話」なのは百も承知なのだが・・・まあ、昭和の親爺の戯言ですから(苦笑)


 ちなみに、映画の入場者特典として、作者書き下ろしの ”後日談” がもらえます。文庫本サイズで26ページほどの掌編ですが、本作が気に入った人にはうれしいプレゼントでしょう。


 最後に声優陣について。

 周囲の脇役陣はベテランの声優さんで固めてるのですが、この映画は主役2人だけのシーンが大半なので、塔野カオルと花城あんずを演じる方の責任はかなり重大です。

 カオルは鈴鹿央士さん。まだデビューして日も浅く、声優としての仕事もあまりこなしていないと思いますが、心配していたほど下手ではなかったですね(おいおい)。
 カオルというキャラが、映画の前半ではあまり感情を見せないキャラなので、そこに救われているともいえるかな(笑)。でもやっぱり本業の声優さんを起用してほしかったかな、とは思ったり。

 あんずは飯豊まりえさん。こちらは思ったよりも達者でした。聞いていて違和感もなかったし。Wikipediaによると、声の仕事はこれが4作目のようです(メインキャラを演じるのは2作目かな)。声優としては及第点だと思います。


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