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ゴジラS.P [アニメーション]


ゴジラ S.P<シンギュラポイント> (ジャンプジェイブックスDIGITAL)

ゴジラ S.P<シンギュラポイント> (ジャンプジェイブックスDIGITAL)

  • 作者: 円城塔
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2022/07/26
 2021年4~6月にかけて全13話が放映されたTVアニメのノベライズ・・・って言い切ってしまうのに、ちょっとためらいを感じる小説版。

 まあ、そのへんは後で書くとして、アニメ版の感想は2021年7月に記事をアップしてる。

 ストーリーのおさらいをしておくと、


 舞台は2030年の千葉県逃尾(にがしお)市。

 主人公・有川ユンは、そこにある町工場「オオタキファクトリー」で働くエンジニア。誰も住んでいないはずの洋館に気配がするということで調査へ向かうことに。
 もう一人の主人公・神野銘(かみの・めい)は、空想生物を研究する大学院生。
指導教授の代理で、逃尾市にある電波管理施設 “ミサキオク” で受信された謎の信号の調査へ向かう。

 まったく違う調査で、まったく違う場所を訪れた見知らぬ同士の2人は、それぞれの場所で同じ歌を耳にする。
 その歌は2人を繋げ、世界中を巻き込む想像を絶する戦いへと導いていく。

 孤高の研究者が残した謎、各国に出現する怪獣たち、紅く染められる世界。
果たして2人は、人類に訪れる抗えない未来<ゴジラ>を覆せるのか―。


 ストーリーのおさらいはここまで。
 もう少し捕捉しておくと、


 「ゴジラ」といえば ”放射能” が代名詞なのだが、本作ではオミットされている。その代わりとして設定されているのが ”アーキタイプ” という仮想物質。
 構造計算上では安定して存在するはずの分子なのだが、人間の手で合成することは不可能で、しかも通常の物理法則を超えた性質を持つというトンデモナイ物質だ。

 タイトルの「SP」とは singular point の略で、作品中では ”特異点” と呼称される物理現象のこと。
 ”特異点” は ”こちらの世界” と ”アーキタイプの存在する世界” をつなぐ、いわばトンネルのようなもの。
 ラドンやアンギラス、そしてゴジラなどの怪獣も、”特異点” から発生し、こちらの世界を ”浸食” してくる。
 怪獣たちは ”アーキタイプ生態系” とも呼ぶべき世界に属する存在で、”我々の生態系” に対して、作品内で ”覇権争い” を繰り広げることになる。
 ”アーキタイプ生態系” が勝利してしまったら、人類の滅亡はもちろん、通常の物理法則が支配する世界自体が消滅してしまうかも知れない・・・

 その破滅を回避すべく、有川ユンや神野銘をはじめとする多くの人々がゴジラの、そして ”特異点” の脅威に立ち向かっていく。

 捕捉はここまで。


 著者はアニメ全話の脚本を担当したSF作家・円城塔。彼の小説は、(私には)非常に難解に感じるものばかりなんだけど、本書は大丈夫でしたよ。
 やっぱりアニメで一度は映像として頭に入ってるので、理解しやすくて楽しく読むことができました。


 さて、冒頭で「ノベライズと言い切るにはためらってしまう」と書いたのは、これが通常の小説化とはいささか異なるから。

 一口にノベライズと言っても玉石混淆で、あらすじをなぞっただけのような手抜き作品も過去に読んだことがある。
 逆に、ストーリーはもちろん、映像では追えなかったキャラの心情や背景をていねいに書き込み、単独の ”小説” としても成立するような良心的な作品ももちろんある。

 では、本書はどちらか。実はどちらでもないのだ。

 本書は、読者が既にアニメ版を観ていることを前提に、本編のストーリーはほとんど追ってない。
 その代わり、部分部分のシーンの裏側や、そのとき他の場所で同時進行していた事態や、そのときそのキャラが考えていたこと、抱えていた事情、そしてアニメ版では明かされなかった諸々の設定などが詳細に記述されていくのだ。
 いわば本編の ”舞台裏” を延々と語っていくようなつくりになっている。

 語り手も三人称だったり一人称だったり、章ごとに変わる。その一人称も、人間ならまだしも、AIが語り手になったり、時には ”怪獣視点” で語られる章まで存在する。

 そういう意味では、映像では欠落していた(入りきらなかった)部分、映像にするとかえって冗長になってしまう部分の書き込みは十二分に行われている。
 アニメ版を観た人からすれば、補完情報が豊富で嬉しいプレゼントだろう。

 私にとっての最大の関心事は、アニメ版最終話の ”あの展開” がどう描かれるか、だった。あまりにも ”予想の斜め上過ぎる事態” の発生に、驚いたり戸惑ったりした人は少なくないと思う。

 そのあたりは本書を読んでもらうとして、ノベライズの中で明かされるアーキタイプの特性や、作品世界の ”裏設定” を知っていくにつれ、「何が起こっても驚かない」ような気になってくる(笑)のが不思議だったよ。
 うまく丸め込まれたような気がしないでもないが(おいおい)。←褒めてます。


 このように、アニメ版を観た人には楽しみが尽きない出来ゆえに、未視聴の人には極めて不親切なつくりになっている。いきなり本書を読んでも、ほとんど内容を理解できないだろうし、ストーリーを把握することさえ困難だろう。

 アニメ版を観た人には、オススメの本といえる。

 観てない人は、まずはアニメ版を観ましょう(笑)。ネット配信ならいつでも観られる。ちなみに私は Netflix で視聴しました。
 あの『ゴジラのテーマ』を新録したBGMも流れるし、ゴジラファン、怪獣ファン、SFファンなら、観て損はない出来だと思いますよ。



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