ドローン探偵と世界の終わりの館 [読書・ミステリ]
評価:★★☆
飛鷹六騎(ひだか・ろっき)・19歳。またの名を《ドローン探偵》。彼が所属する北神(ほくしん)大学探検部が廃墟探検に向かうことになったが、あいにくそのとき六騎は両足を骨折していた。そこで、自らが操るドローンを彼らと同行させるという形で参加するが、その廃墟の中で連続殺人事件が発生する・・・
「読者への挑戦状」とは、本格ミステリの様式美のひとつだが、たいていは手がかりが全部揃った時点、作品中では結末近くに置かれるのが普通だが、本書は開巻冒頭でいきなり提示される。
その ”挑戦” の中身は「本書にはドローンという最先端の科学技術を用いたトリックが仕掛けられている。そのトリックを当てろ」というものだ。
読者はこれを念頭に読むことになるのだが・・・
主人公は飛鷹六騎。身体的に、ある "ハンデ" がある。19歳になったにも関わらず、身長は130cm、体重は30kg。小学校4年生並の体格なのだ。
しかし彼はそれを強みに変えてしまった。小さく軽い故に、大型のドローンにつかまって空を飛べるのだ(おいおい)。
ちなみに本作はコメディではない。殺人事件を扱ったシリアスなミステリです。
ドローンと共に現れて事件を解決する、神出鬼没な新時代の探偵として、いまや有名人になっている。人は彼を《ドローン探偵》と呼ぶが本人はその呼称を気に入っていない。
六騎自身は大学生ではないが、ドローンが縁となって北神大学探検部に所属している。しかしある日、事件の解決中に両足を骨折してしまう。
そんなとき、北大探検部が廃墟探検に行くことになった。北欧神話に憑かれた御出院(おでいん)という男が建てた ”ヴァルハラ” という屋敷の廃墟だ。
六騎も車椅子で参加することになった。部員たちは廃墟に向かい、車に残った彼は2機のドローンを操作して探検に加わる。しかし早々と部員の一人が殺されてしまう。
さらに突然の嵐が屋敷を襲い、部員たちは内部に閉じ込められてしまう・・・
登場するのはほとんど探検部の部員だけなのだが、その部員たちがとにかく剣呑な人ばかり。
国府玲亜(こくふ・れいあ)は、内閣官房長官を父に持つ超セレブな女王様キャラ。
海部零(かいふ・れい)は、玲亜に忠実で、下僕のように仕える。
荒井透(あらい・とおる:部長)と兵務足彦(へいむ・たるひこ:副部長)は、二人ともヴァルハラのある土地の出身。
降継林檎(ふりつぐ・りんご)は、何を考えているのか分からない謎キャラ。
小樽猪知郎(おたる・いちろう)は、最近加入した新入部員。
事件の進展と並行して、彼らの内面も語られていく。表面上は仲が良さそうに見えるが、一皮むけばお互いへの嫉妬、悪意、憎悪がうずまくドロドロな集団で、こりゃ殺し合いが起こってもおかしくないと思わせる。
零が玲亜に従っている理由もそこで明らかになるのだが、この二人の関係も愛憎が渦巻いていて、なかなか複雑。
物語は典型的なクローズト・サークルものとして進行していく。犠牲者が出るたびに容疑者は減っていくものの、なかなか犯人が絞れないのもお約束の展開だし、密室トリックも出てくるなど読者サービス(?)も充分。
しかし、肝心なのは「ドローンを使ったトリック」だ。作者も自信満々で読者に挑戦するくらいだから、一体どんなものかと思ったのだが・・・
いやぁ、これは分からないでしょう。まあドローンというものについて、とっても詳しい人なら別かもしれないが・・・
そして "このトリック" を可能にしている "このオチ" は・・・いちおう書いておきますが、アンフェアではありません。
まあ好みは人それぞれですからね。
「そうだったのか!」って拍手する人もいるだろうし、
「いやぁ、それはないよぉ」って思う人もいるだろうし。
私は・・・前者4割、後者6割ってところかなぁ。
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