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ベスト6ミステリーズ2016 [読書・ミステリ]


ベスト6ミステリーズ2016 (講談社文庫)

ベスト6ミステリーズ2016 (講談社文庫)

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2020/04/15
  • メディア: 文庫

評価:★★★


 2016年に発表された短編ミステリから、日本推理作家協会賞短編部門受賞作を含む6編を収録したアンソロジー。


「黄昏」(薬丸岳)[
日本推理作家協会賞短編部門受賞作]
 アパートの一室で腐乱した遺体が発見される。死んだのは幸田二美枝(こうだ・ふみえ)。80代の老女で、40代の娘・華子と同居していた。
 遺体はポリ袋でくるまれてスーツケースに入っており、死後3年ほど経っているとみられた。華子が母親の年金を不正受給するために死体隠匿をしていた思われたのだが・・・
 私自身、老いた母親を抱え、年金生活者でもある。考えたくないことだが、老親を "看取る" 日はいつか必ずやってくる。離れて住んでいるので、その場に立ち会えるかどうかは分からないが・・・。そんなことを考えると、なかなか他人事には思えない話になってる。


「影」(池田久輝)
 何でも屋の "俺" は、知り合いの刑事・間宮から、強引に仕事を押しつけられる。病院で受付をしている女性・白石由里を尾行すること。なぜか理由は教えてくれない。
 いやいやながら尾行を始めた "俺" は意外な光景を目にする。由里は間宮と接触しているようなのだ。
 一方、"俺" には別の仕事も舞い込む。山岸というサラリーマンが、彼の婚約者・櫻井愛子の浮気調査を依頼してきたのだ。しかし、依頼内容がどうにも胡散臭い・・・
 いわゆる whatdunit 、「何が起こっていたのか」がテーマのミステリ。分かってみれば極めて今風の問題が浮き上がってくる。


「旅は道連れ世は情け」(白川三兎)
 "僕" は、伊豆諸島の式根島に向かう客船の中で、過去を回想する。
 高校生だった "僕" は、同じマンションに住む若妻・倉科桃恵(くらしな・ももえ)と知り合う。家庭教師として勉強を教えてもらううち、次第に彼女に対して慕情を抱いていく "僕"。そんな中、桃恵が夫から激しいDVを受けていることを知る。
 そしてある日、桃恵からの手紙が届く。そこには近々、夫と二人で式根島へ旅行に行くこと。そこで夫を殺すつもりであることが記されていた・・・
 過去と現在が交互に語られていくのだが、それがすばらしく効果を挙げてる。そしてラストの意外性と切れ味は抜群。


「鼠でも天才でもなく」(似鳥鶏)
 緑川礼(れい)は高校生。父は画廊経営者で、礼自身も画家を目指して美術部で活動している。
 「御子柴現代美術館」で〈真贋展〉(真作と贋作を並べて展示する)が開催されることになり、彼も父の手伝いで駆り出されていた。
 しかし展示室の床にペンキがぶちまけられ、さらに異臭が発生するという騒ぎが起こり、それに紛れて画壇の大御所・大園菊子の作品が損壊されるという事件が発生する。しかしその作品に近づくには、床のペンキの上を歩かなければならない。
 ”ペンキの密室” による不可能犯罪だが、礼は同じ美術部員の千坂桜(ちさか・さくら)の行動から事件の謎を解く糸口をつかむ・・・
 他のアンソロジーで既読。後に「極彩色を超えて」と改題・改稿されて、画廊の息子・礼と天才的な画力を持つ少女・桜の、高校時代から社会人までを綴った連作ミステリ短編集『彼女の色に届くまで』の一編として収められた。
 とにかく主役カップルが可愛くて大好きだ。絵画を扱ったミステリとしても一級品、ラブ・ストーリーとしても一級品。似鳥鶏の作品では一番好きな一冊。


「言の葉(コトノハ)の子ら」(井上真偽)
 語学留学の一環として保育園で働いているエレナは、子どもたちから大人気。そんな中、年長クラスにいる福嗣(ふくし)くんは行動に粗暴さが目立っていた。
 ある日保育士の一人が、福嗣くんが "お絵かきボード" に『ふくくんはなおとさんがきらい』と書いているところを目撃する。園にいる男性保育士の尚登(なおと)を嫌っているのだろうか?
 エレナは、ある推測を立てて福嗣くんの母親と話をすることに・・・
 近未来に実現する(であろう)科学技術をテーマにしたSFミステリ連作集『ベーシックインカムの祈り』で既読。
 いずれも ”ミステリとして驚き、SFとして驚く”、「一粒で二度おいしい」(古いキャッチコピーだねぇ。若い人は知らないかも)作品集になってる。


「みぎわ」(今野敏)
 臨海署管内で強盗致傷事件が発生した。犯人は被害者を刺して逃亡するが、防犯カメラの映像から身元が明らかになり、聞き込み情報から自宅アパートに潜伏していることまで判明する。
 強行犯係長の安積(あずみ)は、4人の班員を率いて現場に向かう。被疑者は一人暮らしであることから、直ちにアパートに踏み込むべきという意見が多いなか、班員の1人である村雨は反対する・・・
 警察小説としてはとてもよくできてると思うけど、ミステリとしてはちょい物足りないかなぁ・・・。



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