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アリス・ザ・ワンダーキラー 少女探偵殺人事件 [読書・ミステリ]


アリス・ザ・ワンダーキラー~少女探偵殺人事件~ (光文社文庫)

アリス・ザ・ワンダーキラー~少女探偵殺人事件~ (光文社文庫)

  • 作者: 早坂 吝
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2020/02/28

評価:★★★


 10歳の誕生日を迎えたアリスは、父親からウサギ耳型のヘッドギアをプレゼントされる。彼女はそれを使ってVR空間『不思議の国のアリス』の中で、5つの問題を解くゲームをすることに。制限時間は24時間。


「プロローグ」
 10歳のアリスの将来の夢は、父親のような名探偵になること。しかし母親は猛反対。「もっと堅い仕事に就きなさい」
 反発したアリスは家を飛び出して山小屋へ向かう。そこで出会ったのはコーモラント・イーグレットと名乗る青年。彼はアリスの父親から預かっていた誕生日プレゼントをもってきていた。
 それはウサ耳型ヘッドギア。これを装着するとVR空間『不思議の国のアリス』へ入り込むことができる。そこで5つの問題を解くゲームに参加する、それが父親のプレゼント。ただし制限時間は24時間だ。


「第一問 SOLVE ME」
 "食べると体が大きくなるクッキー"、"飲むと体が小さくなるシロップ" を使って、鍵のかかった部屋から脱出する方法を見つけ出す。

「第二問 ハム爵夫人」
 胡椒にまみれた屋敷に住んでいる公爵夫人は、なぜか子ブタを我が子のように育てている。その子ブタが誘拐されてしまう。犯人は誰か?

「第三問 カラスと書き物机はなぜ似ているか」
 この世界にはハートの女王が君臨している。彼女に反発するグループのアジトへやってきたアリス。そこには、メンバーの一人である帽子屋の死体が・・・

「第四問 卵が先か」
 ハンプティ・ダンプティ(人面つきの卵www)が塀から落ちて死んで(割れて)しまう。しかし "彼" は、"ある薬" を使って殺されたらしい。その薬とは?

「第五問 Hunt the Heart」
 ハートの女王の城(形もハート型)へやってきたアリス。ところが今度は女王が首を切られて殺されてしまう・・・


 『不思議の国のアリス』に登場するキャラやアイテムを用いた謎が設定され、そこに入り込んだアリスは、案内人の "白ウサギ" に導かれながら、謎解きに挑んでいく。ところがこの白ウサギ、腹に一物秘めていそうで、胡散臭い言動を繰り返す。

 本編の途中には「挿話」というパートがあって、クックー・ドレイクなる人物がアリスの両親と何らかの関わりがあることが示唆される。

 5つの謎は、それぞれのパートでいちおうの解決を見るのだが、「エピローグ」に至るとすべての謎が再吟味され、物語の様相が一変する。このへんはなかなか意外な展開で、作者の面目躍如と云うところか。

 ファンタジー世界での特殊設定ミステリなのも面白いけど、本書の魅力はなんといってもヒロインの造形だろう。
 アリス嬢は、とても10歳とは思えない言動で物語の中を疾走していく。よく言えば逞しく、悪く云えば図太い(笑)キャラで、頭の回転は速いが口は悪い(おいおい)。でもまあ、そのあたりはご愛敬だろう。



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