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幽世の薬剤師2 [読書・ファンタジー]


幽世の薬剤師2(新潮文庫nex)

幽世の薬剤師2(新潮文庫nex)

  • 作者: 紺野天龍
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2022/10/28

評価:★★★


 鬼や神霊などの "怪異" が跋扈する異世界・幽世(かくりよ)へと迷い込んでしまった主人公・空洞淵霧瑚(うろぶち・きりこ)は、漢方の薬剤師だった経歴を活かして働き始める。
 彼が巫女・御巫綺翠(みかなぎ・きすい)とともに幽世で起こる疫病や怪事件に立ち向かう、シリーズ第2巻。


 空洞淵が開業した薬処・〈伽藍堂〉(がらんどう)に一人の少女がやってくる。彼女は神屋敷花喃(かみやしき・かなん)と名乗り、山奥にある隠れ里・〈神籠(かみごも)村〉からやってきたという。

 花喃は語る。
 村には "ミズチ様" と呼ばれる "神様" がいること。"ミズチ様" は毎年一人ずつ、村の娘を "娶る" こと。娶られた娘は、神の子を "身籠もる" こと。
 しかし、娘は次第に衰弱し、出産する前にみな死んでしまうこと・・・

 もちろん、その代償はある。"ミズチ様" は、村を貧困・飢え・災害・疫病から守り、繁栄と安寧をもたらしているのだと。

 今年選ばれた "花嫁" は、花喃の姉だった。花喃の願いは、なんとか姉を救うことだったのだ。

 "神の花嫁" といいながら、実体は "人身御供" ではないのか・・・憤る空洞淵に対し、幽世の慣習にいたずらに干渉すべきでないと説く綺翠。
 しかし空洞淵の意思は硬く、〈神籠村〉へ向かうことを決める。そして綺翠もそれに同行することになった。

 村に到着した2人は、旅の夫婦を装って逗留することに。
 空洞淵は、既に "妊婦" の状態に化してしまった花喃の姉を診察して、彼女の肉体に生じた変化の原因を探り始める。
 さらには、村の長老から昔の話を聞き出し、 "ミズチ様" の正体に迫ろうと試みるのだが・・・


 ファンタジー世界の物語ではあるが、いくつかの謎は合理的に解かれていく。
 例えば "神の花嫁" が "妊娠" する現象は、"こちらの世界" の理屈で説明される。私もこれは見当がついたよ。たぶん、過去に何かで読んで知っていたからだと思うけど。


 ミステリやファンタジーとしての面白さもあるけれど、キャラ同士の掛け合いも楽しい。空洞淵と綺翠の関係も、"近づきそうでなかなか近づかない、でも終わってみれば着実に距離は縮まってる" っという経過を重ねていくんだろう。

 今回、2人は夫婦者と偽ってるので、ひとつの部屋に泊まることになる。しかし朴念仁かつ超草食系の空洞淵くんのことだから、自分の方から迫っていくことはない。
 まあ、彼が若い女性と仲良くしてると機嫌が悪くなったりと、綺翠の方も憎からず思っていそうだから、迫っていっても邪険に扱われないような気もするが(笑)。

 あと本書では、途中からは槐(えんじゅ)という新キャラが登場する。こちらもなかなか魅力的で、どうやらレギュラーキャラになるみたい。空洞淵と綺翠の周囲は、だんだん賑やかになっていくのかも知れない。



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