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オニキスII -公爵令嬢刑事 西有栖宮綾子- [読書・ミステリ]


オニキスII―公爵令嬢刑事 西有栖宮綾子―(新潮文庫nex)

オニキスII―公爵令嬢刑事 西有栖宮綾子―(新潮文庫nex)

  • 作者: 古野まほろ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2020/09/01

評価:★★★


 超大富豪にして日本皇室と英国王室の血を引く西有栖宮綾子(にしありすのみや・あやこ)。その肩書きは警察庁監察特殊事案対策官。司法権力掌握を目論む検察庁の裏組織〈一捜会〉が引き起こす警察の重大不祥事に介入し、極秘かつ迅速に解決していく。シリーズ第2巻。


 主人公メアリ・アレクサンドラ・綾子・ディズレーリは皇族を母に、英国王の親族を父に持つ(タイトルの "西有栖宮綾子" は通称)。"超" がつく資産を持ちながら、警察庁長官直属の監察特殊事案対策官の肩書きで、階級は警視正。

 検察庁裏組織〈一捜会〉は、警察の威信を地に落とし、司法権力を一手に握らんと全国の警察組織に様々な陰謀を仕掛け、"重大不祥事" を引き起こしている。
 箱崎警察庁長官の勅命によって、その "重大不祥事" を極秘裏かつ迅速に解決していくことがメアリの使命。有り余る資産、貴族ならではの豊富な人脈、そして特異な能力を持つ実働部隊を抱えた彼女は、奇想天外な手段で〈一捜会〉の野望を打ち砕いていく。


「第1章 女警をわたる風」
 Z県警の23歳女性巡査が、性風俗店でアルバイトをして報酬を得ていたことが発覚した。さらに、近隣の県警察の女性警官7名もそれに加わっていることが判明する。
 彼女らを勧誘したのは〈一捜会〉上級幹部にしてZ地検の元締めである宮本検事正だという。箱崎警察庁長官の密命を受けたメアリは、宮本の身辺調査を始めるのだが・・・
 今回のゲストキャラはオールバニ公爵夫人アンナ・オサリバン。冒頭で登場し、メアリをも圧倒するような強烈な個性を見せる。まあ、メアリさん自身が常人離れしたキャラなので、彼女の周りにはこんな人ばかりなんだろうなぁ・・・と、てっきり賑やかし要員かと思っていたらさにあらず、終盤で意外な大活躍。


「第2章 KOBAN NIGHT ZOMBIES」
 警察内部の秘密文書が漏洩した。総計5件の被疑者はみな女性警官。そして彼女たちの背後にいる黒幕は香呂泰也(こうろ・ひろや)警部補。その正体は現法務大臣の庶子(愛人の子)にして〈一捜会〉の手先だった。
 勤務評定は優秀でエリートコースに乗っており、現在はその一環として首都中央署の交番勤務。
 箱崎警察庁長官からの密命がメアリに下った翌日、香呂警部補は新設署への異動を命じられ、2名の女性警官を率いることになるのだが・・・
 今回は、メアリに仕えるメイドたちが大活躍である。メイドと云っても中身はスパイ並みの諜報能力をもち、彼女の手足となる "特殊部隊" なのだ。
 読者には、この異動はもちろん箱崎長官の差し金で、さらにはここで登場する2人の女性警官がメアリ配下のメイドたちであることは容易に予想できるのだが、ここからハニートラップを含めた壮大なペテンの幕が開く。その展開はおそらく誰も予想できないのではないか。
 今回は「コンフィデンスマンJP」+「必殺仕事人」モードの話。悪人なのに、真綿で首を絞めるようにずるずると罠にハマっていく香呂くんが、だんだん可哀想になってくるから不思議だ(笑)。


「第3章 丁半はここにある」
 現職警官による遺失物横領事件が発生する。被疑者の警官は皆、ギャンブルによる借金に困窮して犯行に走っていた。メアリたちの推理は、警官たちを陥れるべく、警察署内に賭場が開帳されていること、そしてその背後に〈一捜会〉があることを突き止める。
 メアリは、その賭場に乗り込んで "胴元" である署長と直接対決に臨むことになるが・・・
 なにせ彼女は超がつく大富豪だからね。ありあまる資金にモノをいわせて一気に敵を叩き潰しにかかるわけだ。
 今回のゲストは西有栖宮正英(まさひで)王妃正子(まさこ)殿下。要するにメアリのお祖母ちゃんなのだが、これがまた強烈だ。
 かなりの高齢ながら、矍鑠(かくしゃく)なんてレベルではなく、いまでも "現役"。なにが現役なのかは読んでのお楽しみなのだが、そのタフぶりに驚く。
 こちらも単なる賑やかしかと思ったら、第1話のアンナさん同様、終盤で大活躍。まぁあのメアリさんのお祖母ちゃんが温和しいわけがないなぁと思い知らされる(笑)。



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