予言の島 [読書・ミステリ]
評価:★★☆
瀬戸内海に浮かぶ霧久井(むくい)島。そこにある疋田山には、”ヒキタの悪霊” なるものが棲み着き、島の人々に祟りをもたらしてきたという。
そこはかつて一世を風靡した霊能者・宇津木幽子(ゆうこ)が、TV番組の企画で訪れた場所であり、生前最後の予言を残した場所でもあった。
「我が命の絶えて二十年後 彼の島で惨劇が起こらむ
怨霊の祟りか或いは報い 霊魂六つが冥府へ墜つる」
”予言された日付け” は2017年8月25日。
その日、幼馴染み仲間の天宮淳、大原宗作、岬春夫の3人が島に降り立つ。全くのオカルト趣味、興味本位で訪れたのだが、なぜか予約していた宿からは宿泊を拒否される。「ヒキタの怨霊が降りてくる」という理由で。
他の民家もみな、扉を固く閉ざしている。
島外からの移住者が営む民宿に泊まることができた3人だが、台風の接近によって悪天候となり、島は孤立してしまう。
そしてその翌朝、島の桟橋のたもとで宿泊客の一人が死体となって発見される・・・
というわけで、このあと続々と屍が登場してくるのだが・・・
本書は「角川ホラー文庫」というレーベルから出ているのでホラーかと思いきや、初刊の年の各種ミステリランキングでも上位に入ったりしていて、ミステリとしても評価されてる。
「ホラーなのかミステリなのか。いったいどっちなんだろう?」と考えながら読み進めていくと・・・
”ヒキタの悪霊” なるものの正体も、超常的なものではなくて合理的解釈が示されたりするし、島民の謎の行動の意味もそれで説明がつく。
このあたりは、往年の特撮TVドラマ「怪奇大作戦」のワイド版みたいな雰囲気もちょっぴりある。
作中の描写の中にも、作者が日本の特撮もののファンだということを匂わせる描写が多々ある。
往年の特撮ドラマに欠かせなかった名優、小林昭二さんをリスペクトしたと思われるキャラも出てくるし。
もっとも作者は、悪霊の正体については序盤からけっこうカードを開いて見せてくれているので、隠すつもりはハナからないといえる。だからほとんどの読者には見当がついてしまうだろう。
ということは、そこまで見破られることを計算に入れた構成になっているんだろう・・・というところまでは見当がつくんだけどね。
だけども ”ホラー文庫” だからねぇ。ある程度までは現実的な解決がなされても、それでは割り切れない部分も当然残されるのだろう、とも思っていた。
だからラストに向けての興味は、ミステリとして着地するのかホラーとして終わるのか、だ。そう思いながら終盤に到達すると・・・
「え? そっち?」
意表を突く結末と言えばその通り。ミステリとしても ”アリ” なのは間違いないので「やられたぁ」って素直に感じ入る人もいるだろう。
その一方で、あまりにも斜め上の展開なので「呆気にとられた」とか「拍子抜けだ」とかの感想も出てきそう。
ここをどう感じるかで本作の評価は決まるだろう。
私について言えば、”真相” を知らされた時点で「いったい今まで何を読まされていたんだろう」ってちょっと戸惑ってしまったよ。
私の評価は上記の星の数からお察しください。
たしかに、すべてを知ってから再読したら、とんでもなく恐ろしい話ではあるのだけどね・・・。