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サンダーバード55/GoGo [映画]


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■まずは昔話から

  『サンダーバード』は1965~66年にイギリスで放送され、日本では66~67年に吹き替え版が放送された。
 当時の私は小学校低学年で、ブラウン管(死語)を食い入るように見ていたことを思い出す。もちろんプラモデルも発売され、大人気商品となった。

 かつて宇宙飛行士だったジェフ・トレイシーは、妻の死をきっかけに退役し、実業家に転進して巨万の富を築き上げた。彼はその資産を元に「国際救助隊」を設立、太平洋の孤島にその基地を建設した。
 ジェフの5人の息子たちがサンダーバード1号~5号をはじめとする各救助用メカを駆り、巨大メカや巨大建造物が引き起こす、あるいは巻き込まれた災害から人々を救い出す活躍を描くのが『サンダーバード』だ。

 放映終了の半年後から開始した『ウルトラセブン』が、ウルトラホークの発進シーンのみならず『サンダーバード』からいろいろと影響を受けたことは有名な話だ・・・なあんてことはwikiに詳しく書いてあるのでそっちを読んでください(笑)。

 毎回登場する国際救助隊の各メカも素晴らしいが、各話のゲストメカにも忘れられないものが多々ある。
 超音速旅客機ファイヤーフラッシュ、超大型多脚戦車ゴング、有人火星ロケット(橋が崩壊して川に落ちたアレだ)、大型タンカー・オーシャンパイオニア号、移動工場とも呼ぶべきクラブロッガー・・・
 私を含めた日本の子どもたちが、そんな無数のメカたちにどれだけ心を躍らせたことか・・・

 閑話休題。昔話はここまでにして、表題にもどろう。

■『サンダーバード55/GoGo』とは

 本作は当時の手法そのままに人形劇形式で撮影された作品で、メカ類もミニチュアを使用した実写作品だ。
 現代ではCGを使った方が安く仕上がるらしいし、見栄えもぐっと良くなるみたい(時代は変わったものだ)。
 しかしそれでは当時の雰囲気が出ないからと、スタッフは60年代の製作方法にこだわったらしいが・・・

■内容について

 30分ほどのエピソードを3本連ねたオムニバス形式。wikiからあらすじを引用すると

第1話「サンダーバード登場」
 国際救助隊の創設にあたり、ジェフはペネロープをトレイシー島に招き、サンダーバード1~5号や家族を紹介するとともに島の案内を行う。

第2話「雪男の恐怖」
 世界各地でウラン工場の破壊工作が相次いでいた。その頃ヒマラヤでは雪男に襲われる人が増え救難信号をサンダーバード5号もキャッチしていた。そこでジェフはデリーにいたペネロープに調査を頼む。

第3話「大豪邸、襲撃」
 イギリスの大豪邸で宝石が盗まれ爆破される事件が相次いでいた。ジェフはペネロープを心配するも、彼女は出来ることがないと普段どおりの生活をするが、すでに強盗団の盗聴器がクレイトン=ワード邸(ペネロープの屋敷)に据えられていた。

■ ”本編” との関係

 3本とも主役となるのはレディ・ペネロープで、内容も「サンダーバード基地見学ツアー」「雪男の正体探し」「強盗団の捕縛劇」。
 どちらかというと ”番外編” に近い位置づけのエピソードのように思えて、巨大災害に救助メカを駆使して立ち向かうようなスペクタクル性あふれる ”本編” みたいな活躍を期待すると、ちょっと当てが外れるだろう(私も少なからずそう思った)。

 これは本作の出自に起因するものだろう。
 『サンダーバード』には、映像としてのTVシリーズ作品が32話あるのだが、これとは別に音声ドラマが3話あったのだという。
 映像はないがオリジナルの声優が出演しているもので、この映画はこの音声ドラマに映像を付け加える形で制作されたわけだ。

■映像について

 50年以上前の作品を再現するにあたっての苦労話は公式サイトに載っているのでそっちを見てもらうとして(笑)、サンダーバードメカの発進シーンや飛行シーンなどはTVシリーズのバンクをそのまま用いている。
 50年以上も昔にブラウン管(死語)にかじりついて見ていたシーンを、映画館の大画面で見られたのは感激もので、目尻にちょっぴり涙がにじんでしまったのはナイショだ。

 上にも書いたけど、メカのシーンは新撮したものと当時の映像を流用したものが混用されている。
 新撮シーンのほうがメカが若干ふらついて見えて、昔の映像のほうが安定して飛んでいるように見えるのは、思い出補正なのかなぁ・・・

■日本語吹き替え版について。

 オリジナルの声優さんも多くは鬼籍に入り、生存しておられる方もいるけれど、年齢を重ねたことによる声の ”変質” はいかんともしがたい。
 そこで本作では声優陣を一新しているのだが、私みたいなオールドファンからすると、やはり違和感は拭いがたい。

 ジェフはベテランの大塚芳忠さんが演じられているのだけど、やっぱり旧作での小沢重雄さんの重厚さとは色合いがかなり異なる。

 ペネロープは満島ひかりさん。旧作では黒柳徹子さんだったが、ひかりさんはNHKのドラマで若き日の黒柳徹子を演じたことがあったそうで(そういえばかみさんが観てたような気もする)、これが起用の理由かも知れない。
 この方も最初はかなり抵抗があったけど、最後の方ではなんとなく耳に馴染んできた。

 パーカーは井上和彦さん。これはけっこうよかった。最初は井上さんと気づかなかったくらい、老練かつとぼけた味を出してる。

 フッドは立木文彦さん。これも旧作の西田昭市さんとはかなり違うけど、悪役声としてはとてもはまってる。

 この4人はかなり台詞も多いけど、逆に5兄弟やブレインズは台詞が少なくてねぇ。けっこう豪華な声優さんを揃えてるんだけど、ちょっともったいない感じも。

■今後

 できれば、新作が作られるといいなぁと思う。今回のような外伝的なものではなく、ガチなディザスターものが観たいなぁ。
 それには、この映画が大ヒットとまでは行かなくてもそこそこは客が入り、配信でも観てもらえて、「サンダーバードは金になる」って制作陣に思ってもらわなくてはならないわけで・・・なんとかそのラインをクリアして欲しいとは思う。

 日本での人気は、本家イギリスと同等かひょっとして上回るくらいあると思うので、日英合作とかできたら最高なんだけどね。そしたら庵野秀明氏あたりが「シン・サンダーバード」を作りたいなんて言い出すかも知れない。

■最後にもろもろのこと

 観ていて気になったのは、やっぱり60年代当時のイギリスって階級社会だったんだなぁ、ってこと。

 支配階級のペネロープと労働者階級のパーカーの身分差は隔絶している。
 劇中でのペネロープのパーカーに対する扱いは、現代なら立派なパワハラだよ。まあ、描き方がコミカルだから救われるところもあるが。

 彼女がパーカーを何かと頼りにしていて大事に思ってるのは、旧作からのファンならわかっているとは思うが、この映画で初めて『サンダーバード』を観た人は「なんて高慢でいけ好かない女だ」って思うかも知れない。

 現在のイギリスでもこのままだとは思わないけど、こういうものは根が深いから、表面上消えたように見えても、水面下ではけっこう残っているような気もするし。

■おまけシーンについて

 本編の前後や各エピソードの合間には、日本のスタッフが制作した作品紹介映像が入る。製作のメイキングシーンなどだ。
 そのなかで、1話と2話の間に入るのがなんともオールド特撮ファンの琴線をくすぐる。

 『謎の円盤UFO』(1970年)というドラマ作品がある。『サンダーバード』と同じ製作会社がつくったもので、こちらは生身の俳優が出演するものだ。
 この『ーUFO』には、印象的なオープニングシーンがある。電動タイプライターが文字を打ち出しながらナレーションが入るものだ。往年の特撮ファンなら記憶に残っているだろう。

 このオープニングを模した映像で、『サンダーバード』の紹介が行われるのだ。

 『エヴァンゲリオン』から25年も前に、音楽とシンクロしたカット割りをしたオープニングをつくってたわけで、当時のスタッフのセンスが秀逸なのがわかる(YouTubeで見られるので興味がある人は是非)。
 庵野秀明氏がこのオープニングを観ていないはずはないので、たぶんこちらをリスペクトした演出なのだろうと思う。

 ナレーションはなんとオリジナルと同じ矢島正明氏。
 wikiでみてみたら御年89歳。さすがに声はだいぶ変わられていて、聴いた時には矢島さんとわからなかったよ。
 でも年齢の割には滑舌もハッキリしていて、まもなく卒寿とは思えないクリアなお声を聞かせてくれる。

 私には、ここがこの映画でいちばん感動した部分だっりする(おいおい)。

■おまけのおまけ

 『-55』の本編上映後に『ネビュラ・75』なる作品の特別編が上映された。つまり併映作品というわけだ。
 内容は『-55』の製作会社がつくった新作人形劇。

「地球から3300万マイル(約5300万km)離れた宇宙を航行するネビュラ・75に乗るレイ・ネプチューン船長、アステロイド博士、ロボットのサーキットらの宇宙での冒険物語。」(by wiki)

 ただこれはねぇ・・・よく分かりませんでした(笑)。
 あちらでは2シーズン・12話も作られたらしいのでそこそこ人気なのだろうけど、私にはその良さが分かりませんでした。

 日本ではBSの有料放送局スターチャンネルで、今月から日本語版を放送されるらしいのでその宣伝のための ”特別編” なのだろうけど、もうちょっと内容は何とかならなかったのかねぇ・・・。
 責任者に1時間くらいこんこんと説教したくなったよ(笑)。

■最後に

 2012年の「宇宙戦艦ヤマト」のリメイクに始まり、16年には「シン・ゴジラ」、17年には「マジンガーZ / INFINITY」が公開された。
 「ガンダム」は43年前の初登場以来、数年と空けずに新作が作られ続けている。

 そして今年は「シン・ウルトラマン」が公開予定で、来年には「シン・仮面ライダー」が控えてる。

 私が小学校から高校にかけて、ブラウン管(死語)で観ていた懐かしい作品群が、今もなお新しい命を吹き込まれて製作・公開されている。

 いやあホントにいい時代になったものです。長生きはするものだ。


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