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消えた少女 吉祥寺探偵物語 [読書・ミステリ]

吉祥寺探偵物語 : 1 消えた少女 (双葉文庫)

吉祥寺探偵物語 : 1 消えた少女 (双葉文庫)

  • 作者: 五十嵐貴久
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2014/12/12
  • メディア: 文庫
評価:★★★

主人公・川庄(かわしょう)はフリーター。
女医の妻と離婚した後は、勤めていた銀行を辞め、
コンビニで働きながら一人息子で小学5年生の健人を育てている。

子供の養育費はもちろん、父子2人が暮らすマンションのローンも
慰謝料代わりに元妻が払ってくれているので
息子を寝かしつけた後は、毎晩のように飲み歩いている。

ある日、飲み屋で知り合った女子大生が持ち込んできた ”迷い猫探し” を
無事に解決したことで「探しものの名人」という噂が広がってしまう。

オカマの京子ちゃんが連れてきた、新たな「探しもの」依頼人は
柳沼純菜(やぎぬま・じゅんな)という専業主婦だった。

彼女の娘・裕美(ひろみ)は、小学生になったばかりだった
1年前の4月に、下校途中で忽然と姿を消してしまった。
警察の懸命の捜査にもかかわらず、少女は未だ行方不明のままだった。

素人に探し出せるわけはないと思いながらも川庄は依頼を受けることに。

銀行員時代に知り合った新聞記者の伝手を辿って
社会部の記者・岩村に会った川庄は、
事件を担当している警視庁の刑事・夏川を紹介してもらう。

さらに川庄は、純菜の夫で裕美の父である光昭と会う。
彼は資産運用会社に勤務する優秀なトレーダーで、
社内でもトップクラスの業績をあげ、高収入を稼いでいたが
周囲で彼のことを悪く言うものは皆無という人格者だった。

しかし光昭と会った直後から、川庄の携帯に
発信者不明の不審電話がかかり始める。自分の行動によって、
事件が再び動き出したことを感じる川庄だったが・・・

一介のフリーターが、セレブ家庭に降りかかった誘拐事件に関わっていく。
いったいどうやって探索行を始めるのだろうと思っていたが
作者は事件に関わった人間を巧みにつなぎ合わせて川庄に辿らせていく。
このあたりは本当に上手いと思う。

 夏川が事件の情報を部外者である川庄に開示するのは
 ちょっとやり過ぎな感もするが、
 夏川と川庄の行動に批判的な同僚刑事も登場するので、
 それでバランスを取っているのだろう。

後半になると川庄は一人の人物に狙いを定めて迫っていく。
その辺りの展開はいささか強引というか無茶なところもあるが
エンタメとしては許容範囲だろう。

ラストで明らかになる真相は、とてつもなく苦い。
本来なら星3つ半くらいにしたいところなんだけど
それを躊躇わせるくらいのインパクトで、星半分減(ごめんなさい)。

本書は全5巻になる文庫書き下ろしシリーズの第1巻。
続巻も手元にあるので、ぼちぼち読んでいく予定。


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