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芝浜の天女 高座のホームズ [読書・ミステリ]

芝浜の天女-高座のホームズ (中公文庫)

芝浜の天女-高座のホームズ (中公文庫)

  • 作者: 愛川 晶
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2020/07/22
  • メディア: 文庫
評価:★★★

昭和の落語界の重鎮にして名人、八代目林家正蔵が探偵役を務める
ミステリ・シリーズ、その第4巻。

主人公・三光亭鏡治(さんこうてい・きょうじ)は
3年前に真打ちに昇進して、現在38歳。
師匠は鏡楽(きょうらく)、弟弟子に二つ目の鏡也(きょうや)がいる。

「第一話 白兵衛と黒兵衛」
鏡也は鏡楽師匠の命令で庭の草むしりをしたが、
ろくな労いの言葉ももらえなかったことで頭に血が上ってしまい、
師匠の飼猫・黒兵衛に大量のスルメを食べさせてしまう。
それが原因で黒兵衛は動物病院に入院する羽目になる。
しかも、退院してきた黒兵衛はそのまま家を出てしまったのだ。
怒り心頭の鏡楽師匠は、鏡也に対して
黒兵衛を連れ戻さない限り破門だ、と申し渡す。
一方、尻尾や足を切り落とされた野良猫が見つかる事件が発生し、
鏡治は、鏡楽に容疑がかかっていることを知る・・・

「第二話 芝浜もう半分」
鏡治の妻・清子(きよこ)はかつて保険の外交員だった。
勧誘に訪れた際、鏡治の母親とすっかり仲良くなってしまい
それが縁で鏡治と結婚することになった。以来4年、息子も授かった。
清子は誰もが振り向くような美人で身長も170cmを超える。
しかし鏡治は160cmに満たない肥満体と、
およそ女性にモテそうにない体型。
彼にとってみれば、清子はまさに「天女」のような存在。
どうして自分と結婚してくれたのか、それは鏡治にとって謎だった。
そんなとき、鏡也が傷害事件に巻き込まれる。
その捜査の中で、鏡治は清子が出身地を偽っていたことを知る・・・

今回も正蔵師匠の推理が冴える。
特に、鏡治と清子の結婚にまつわる ”経緯” はなかなか意外なもの。

伏線はかなり最初のほうから張ってはあるのだけど、
この○○は、知らない人の方が多いだろうなあ。

鏡治はいろいろ疑心暗鬼になってしまうが
終わってみれば「雨降って地固まる」という人情噺だ。

本書も既刊の3冊と同じく、
現在を描く「プロローグ」「幕間」「エピローグ」で
本編を挟んで、昭和50年代と今をつなげてみせるのだけど、
毎回趣向を凝らして違ったパターンを披露してくれる。

本編に登場した人たちの ”その後” が語られるのも楽しい。


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