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交渉人・籠城 [読書・ミステリ]

交渉人・籠城 (幻冬舎文庫)

交渉人・籠城 (幻冬舎文庫)

  • 作者: 五十嵐貴久
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2013/10/30
  • メディア: 文庫
評価:★★★★

交渉人・遠野麻衣子を主人公としたシリーズの3作目。

東京都目黒区で喫茶店「アリサ」を経営する福沢基之(もとゆき)。
彼は店にいた客8人を人質にとって、立て籠もり事件を起こす。

福沢は自ら警視庁に110番通報し、自分の犯行を告げる。
警察は岡部浩警視、遠野麻衣子警部、戸井田啓一巡査部長の
「交渉人」チームを現地へ派遣、福沢との交渉を開始する。

福沢の周辺捜査から、経営する喫茶店を3か月前に改装して
店内を外部から見えにくくし、さらには警察の突入が困難になるように
していたことが判明する。彼は周到に事件の準備を整えていたのだ。

さらに福沢は猟銃まで入手しており、岡部警視が撃たれて負傷、
交渉は麻衣子が一手に引き受けることになった。

やがて福沢から警察に対して要求が伝えられる。
「現場にマスコミを入れ、テレビカメラで事件を中継せよ」

3年前、当時小学1年生だった福沢の娘・亜理砂は
下校途中に誘拐され、翌日に惨殺死体となって発見された。
犯人として中学3年生の少年・小幡聖次が逮捕されたが
精神鑑定の結果、解離性同一障害と診断されて医療少年院に収容、
2年後には通常の少年院に移り、4か月前には出院していた。

今回の事件を引き起こした動機は、「少年法」に対する不満を
世間に対して訴えるためとも思われたが、同法の定めによって
未成年である犯人の情報を公表することは許されない。つまり
福沢が何を話すか不明なうちは、警察は要求を呑むことはできないのだ。

上層部の保身もあって交渉の選択肢を狭められる麻衣子だが
懸命に福沢との信頼関係を構築しようとする。

しかし福沢の要求はさらにエスカレートし、やがて警察に対して
前代未聞の要求を突きつけるのだった・・・

文庫で400ページ近い長さながら、緩んだところは全くない。
物語のほとんどすべてが、現場となる喫茶店周辺で進行するという
閉鎖空間の物語なのだが、巧みなストーリー展開と
麻衣子と福沢との緊迫したやりとりで、興味が途切れない。

詳しく書くとネタバレになるのだけど、事件の ”真の解決” を迎える
ラストまで、ページをめくる手が止まらない。

”ストーリーテリングの達人” とは、こういう人を言うのだろうと思う。


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