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SF飯 / SF飯2 [読書・SF]


SF飯:宇宙港デルタ3の食料事情 (ハヤカワ文庫JA)

SF飯:宇宙港デルタ3の食料事情 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 銅 大
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2017/11/30
  • メディア: 文庫
SF飯2 辺境デルタ星域の食べ物紀行 (ハヤカワ文庫JA)

SF飯2 辺境デルタ星域の食べ物紀行 (ハヤカワ文庫JA)

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2018/05/17
  • メディア: 文庫
評価:★★★

時代は、人類が銀河宇宙へと広がった、かなり先の未来。

主人公は中央星域の名家オリュンポス家の御曹司。
いちおう ”マルス” という名はあるのだけど、誰もその名では呼ばず
もっぱら ”若旦那” と呼ばれている青年。

人はいいものの騙されやすいという典型的な二代目のぼんぼんで
実家を勘当されて辺境デルタ星域の宇宙港・デルタ3へと流れてきた。

さまざまな生物や異星人が暮らすデルタ3には
貨物船や探査船が発着し、多くの人間/異星人が働いている。
当然ながら、毎日彼らは必ず何かを食べているわけで、
そこには大衆食堂も存在する。

ヒロインはその大衆食堂<このみ屋>の孫娘・コノミ。
16歳の彼女は、先代の店主だった祖父が亡くなって
閉めてしまった店の再開を目指して料理の修行をする日々。
とはいっても料理はもっぱら食料合成機がやってしまうので
その調整や使用法の習熟に務めるのが主な日課。

ある日コノミは、空腹で行き倒れになっていた若旦那を助ける。
彼女は3年前までオリュンポス家に奉公に上がっていた(笑)ので
若旦那とは顔なじみだったのだ。

辺境星域は食材も乏しく、メニューも味も単調そのもの。
そんな中で、コノミと若旦那は創意工夫と試行錯誤をくり返して
既存の調理法の改良、そして新しい料理の開発に挑んでいく・・・


強いて分類すればスペースオペラの変種、かな。
ビームもミサイルも飛ばないし宇宙船のドッグファイトも無いけれど。

”食” をテーマにしたSFは今までにもあったと思うけど、
それをスペースオペラ的世界設定の中で展開していくというのが面白い。

かつて人類に対して徹底的に奉仕していた機械知性(AI)たちが
自発的に人類世界から ”旅立ってしまった” という設定のもと、
残された一部の機械知性たちがいくつかの派閥に分かれて争っていたり
人類に対して陰謀を企んでいたりとか、
スペオペ的道具立ても用意されているのだけど
それらはあくまでストーリーの味付け的存在。

メインはあくまで、コノミと若旦那。
この二人が、辺境の食生活を変えていこうと奮闘する姿を
ユーモアたっぷりに描いていく。


サブキャラもふくめて、登場人物はみな個性的なんだけど、
やっぱり主役二人がいい雰囲気を醸し出してる。

本作の中での若旦那の描かれ方は、
いわゆる古典落語に登場するところの ”若旦那” そのもの。
かなり ”与太郎” が入ってるが(笑)。
SF的な設定と舞台の中を
”古典落語の人” が闊歩するギャップも面白い。

ヒロインのコノミさんのキャラも好きだなぁ。
祖父の店を再建するために奮闘する健気さは特筆ものだ。
物語が進むにつれて、若旦那にほのかな恋情を抱いていくあたりも可愛い。


いまのところ2巻目まで刊行されているのだけど、
コノミさんと若旦那の仲の決着もついていないし、
ラストにはさらなる波乱要因まで出てきたので、
作者はまだ続けるつもりなのだろうなあ。

とは言っても、1巻と2巻の間は半年間ほどだったのだけど
2巻が出てから2年経っても続巻は出てない。

さて、はたして3巻目は出るのか?

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