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神楽坂謎ばなし [読書・ミステリ]


神楽坂謎ばなし (文春文庫)

神楽坂謎ばなし (文春文庫)

  • 作者: 愛川 晶
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2015/01/05
  • メディア: 文庫
評価:★★★

「神田紅梅亭」に続く、落語ミステリ・シリーズの1巻め。

主人公は31歳独身の編集者・武上希美子(たけがみ・きみこ)。

幼い頃に両親が離婚、父・寅吉が家を出た後に母は早世してしまい
今は祖母・道代と二人暮らしである。
道代と寅吉の間にはかなりの確執があったようで、
父親がどんな人だったのかと希美子が聞いても、道代は黙して語らない。


「セキトリとセキテイ」

希美子が働く「中内出版」は、教科書の出版で手堅く経営してきた
中堅どころだったが、3年前に30代の若さで経営トップについた
三代目社長・中内達也は、新分野開拓として
大学時代の同級生で落語家の鶴の家琴平(つるのや・きんぺい)の
書き下ろし本の出版を提案する。
社内の会議では非難囂々だったが、実際に出版してみると大当たり。

気を良くした三代目が次に企画したのが、
日本一の人気落語家・寿々目家竹馬(すずめや・ちくば)の書いた
コラムの書籍化。琴平の仲介で竹馬の了解は得られたが
編集作業の最中に担当の女性編集者が産休に入り、
彼女の上司も急病で入院してしまう。

そんなわけで、急遽この本の担当が回ってきた希美子だが
落語は彼女にとって全くの未知の世界でもあり
最終段階の校正で大ポカをしてしまう。

 落語のことを全く知らなかったら、こういう勘違いはしそうではある。
 でもまあ、詳しい人の方が少数派だろうけど。

刷り上がった本を見た竹馬は激怒し、販売禁止を言い出す。
もし出版できなかったら会社は莫大な損害を被ることになり、
その上、5年越しの恋人・志田健太郎の浮気まで発覚してしまう。
まさに踏んだり蹴ったりのどん底に落ちてしまうのだが・・・


「名残の高座」

竹馬の出版騒動の結果、不思議な巡り合わせで
希美子は老舗の寄席・神楽坂倶楽部への3か月の出向を命じられ、
席亭 "代理“ として働くことになる。
しかし寄席の経営状態は左前で、先の見通しも決して明るくない。
そんな中へ飛び込むことになった希美子の奮闘が描かれていく。


基本的にはミステリなのだけど、本書では希美子の生いたちの描写に
ページが割かれ、物語が進むにつれて両親の離婚の真相とともに
父親と祖母との確執の理由も少しずつ明らかになっていく。

もちろん寄席の中でもささやかながら ”謎” が発生し、
それの解明も語られていく。
探偵役となるのは、数少ない寄席の使用人のひとりで
下足番の稲城養蔵(いなぎ・よしぞう)老人。
寄席で下足番として働き出した後になぜか警官へ転身、
敏腕の刑事となったらしいのだが、今は再び寄席の下足番。
この人も何かウラがありそうではある。

主役の希美子さんが、ごく普通の感覚を持つ人として描かれているので
寄席の中で働く人たちやそこで芸を披露する落語家たちとのギャップも
興味を引くし、読んでて笑いを誘う。”お仕事小説” としても面白い。

希美子の恋人の健太郎というのがまた典型的なダメンズで、
彼女の男を見る目を疑ってしまうのだが(笑)
二人の関係も次巻以降に引っ張るのかな?

このシリーズは、3巻目まで出ていて、
そこで止まってるので3巻で完結なのかな?
とりあえず手元にあるので近いうちに読む予定。

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