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レオナルドの扉 [読書・冒険/サスペンス]


レオナルドの扉 (角川文庫)

レオナルドの扉 (角川文庫)

  • 作者: 真保 裕一
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2017/11/25
  • メディア: 文庫
評価:★★☆

時代はフランス革命直後、皇帝となったナポレオンが登場するので、
1804年以降、19世紀の初めの頃だろう。

場所はイタリアの小さな村、
そこで時計職人として働く16歳の少年ジャンが主人公。
母は亡くなり父は失踪しており、祖父・ベルトランとの二人暮らしだ。

ジャンは村長の息子ニッコロ、医者の娘マドレーナと共に
300年前にレオナルド・ダ・ヴィンチが考案したという
”空を飛ぶ機械” をつくっていた。
彼の残した図面を見たことはないが、彼らなりの工夫を凝らし、
度重なる失敗にも挫けずに完成を目指す日々。

そんな平和な暮らしも、突然のフランス軍の侵攻によって終わりを告げる。
指揮官であるバレル大佐は、捕らえたベルトランから
ジャンの父のことを聞き出そうとする。

大佐の目的は、ダ・ヴィンチが書き残したという秘密のノート。
ジャンの父はそのノートを守るために村から離れたのだという。

目的のためには村人へ危害を加えるのさえためらわない大佐だったが
謎の修道女ビアンカの助けもあり、
ジャンたちはフランス軍の撃退に成功する。

天才ダ・ヴィンチは、数々の画期的な兵器も考案しており、
彼のノートには、それらの詳細が記されているという。

自らの覇権達成のためにダ・ヴィンチの遺産を手に入れようとする
ナポレオンの野望を阻止し、秘密のノートを守るべく、
ジャンもまた父の後を追って村から旅立つ・・・


・・・とまあ、ここまで書いてきたのだけど物語としては序盤。
でも、実はここまででページ数の半分くらいを費やしている。
ちょっと長すぎないかなぁ。
背景説明やキャラの描写も必要なのだろうけど、
小さな村の中の話が延々と続いて、読んでいて
「まだ出発しないんかい!」ってツッコミを入れてしまったよ(笑)。

後半はパリでの探索行にはじまり、
ルーブル美術館や絵画モナ・リザなども登場してくる。
ナポレオン、ジャンに加え、ビアンカも第三勢力として争奪戦に加わり
終盤は、フランス軍の政治犯収容所兼秘密兵器の工廠にもなっている
”監獄島” を舞台にした決戦とあいなる。
ダ・ヴィンチのノートからナポレオンが完成させた秘密兵器も
投入されてくるし、盛り上がっていく・・・のだけど。


どうにも読んでいて高揚感があまり感じられない。
なまじ時代と舞台を現実世界に設定してしまったせいか
全体の雰囲気がちょっと重めで、今ひとつぶっ飛んだ感じがしない。

ジュブナイルを目指すのなら、もっとフィクションに
振り切って、軽やかな物語を目指してもいいんじゃないかなぁ。
ジャンも、ダ・ヴィンチの再来かと思わせるくらいの発明少年にして
”こんなこともあろうかと” 用意していた新兵器で
フランス軍を翻弄するとか(笑)。

 どうも、パリを舞台にジャンという少年が活躍すると
 どうしても「○○○の海の××××」を連想してしまうのだよ・・・

この作品のヒロインは実はビアンカさんなのだろうけど、
マドレーナにももっと出番をあげてほしいなあって思ったり。
終盤にちょっと出てきたけど、主人公の添え物感は拭えない。

最終決戦はそれなりにかなり盛り上がるのだけど、そこにいくまでが
ちょっと地味めな感じがして仕方がない。
面白くできる要素はたくさんある気がするんだけど
ちょっともったいない素材だと思う。

あと、これはどうでもいい話なんだが、
巻末の解説で書評家の藤田香織氏が
作者である真保裕一の代表的な著作をいくつか紹介しているのだけど
その中に『ホワイトアウト』が入っていない理由を
小一時間くらい問い詰めてみたいと思った(笑)。
私は『ホワイトアウト』こそ、真保氏の最高傑作だと信じてるんで。

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