SSブログ

究極のドグマ 穗瑞沙羅華の課外活動 [読書・SF]

究極のドグマ―穂瑞沙羅華の課外活動 (ハルキ文庫)

究極のドグマ―穂瑞沙羅華の課外活動 (ハルキ文庫)

  • 作者: 機本 伸司
  • 出版社/メーカー: 角川春樹事務所
  • 発売日: 2011/10/15
  • メディア: 文庫



評価:★★★

人工授精によって(つまり "天才" の遺伝子を用いて)
誕生した少女・穂瑞沙羅華(ほみず・さらか)。

幼少期には量子コンピュータの理論を発表、
9歳にして粒子加速器の基礎理論を発表と天才ぶりを遺憾なく発揮し、
16歳にして飛び級を重ねて大学4回生となった。

自分自身が提示した理論を基にして設計された
巨大粒子加速器<むげん>を駆って
「宇宙を作ることはできるのか?」
という命題に挑むことになる沙羅華。

一浪してこれも4回生の綿貫基一くんは担当教授に命じられ、
沙羅華と行動を共にすることになる・・・といえば聞こえは良いが、
実際にはエキセントリック極まる沙羅華さんの
"お守り役" を押しつけられただけ、
というところから始まるのがシリーズ第1作「神様のパズル」。

そのラストで、思うところあって大学を中退し、
普通の女の子として高校生活を送ることを決めた沙羅華。
綿貫くんのほうは、沙羅華の理論を基に開発された
量子コンピュータを駆使して事業の展開を図る企業、
ネオ・ピグマリオン社の社員となる。

ネオ・ピグマリオンは、量子コンピュータの性能向上のために
沙羅華をオブザーバーとして迎えたが、
高校生活に忙しくさっぱりやる気を見せない彼女を引っ張り出すのが
綿貫くんの業務ということになった。
やってることは学生時代を変わらないわけだね。


天才美少女・沙羅華さんの大活躍、というよりは
凡人代表みたいな青年・綿貫くんが彼女に振り回される
"苦労話" が綴られた(笑)シリーズ第3作が本書。


ネオ・ピグマリオンは、持ち込まれた事件や調査を
量子コンピュータを用いて解決することを業務とする。

綿貫くんは沙羅華に協力を依頼しようとするが、
数々の事案の中から彼女が選んだ事件は、一匹の猫探し。
しかし謝礼は1000万円という破格なものだった。

量子コンピュータを駆使して "猫" の居場所を特定して
捕獲を試みるも、なかなか姿を現さない。

調査を進めるうちに、この猫にはある "秘密" が隠されていること、
事件の背後には世界的なバイオ企業・ゼウレト社が
絡んでいることが判明する・・・


綿貫くんは凡人だけど、23歳の健康な青年でもある。
男としての人並みの "欲望" だって持っていて(笑)
17歳の美少女と行動を共にしていて心穏やかなはずがない。
実際、ことあるごとに沙羅華と "深い仲" になろうとするのだが
ことごとく撃退されて "泣き" を見る。

この天才少女はとにかく性格が悪い。
何事に付けても高飛車で傍若無人、おまけに毒舌。

綿貫くんからすれば、沙羅華との仲は
「友人以上恋人未満」だと思いたいのだろうけど
本文中の描写を見る限り、彼女の綿貫くんに対する態度は
「下僕以上助手未満」だよなあ・・・


いやあ綿貫くん、こんな性悪女なんかさっさと放り出して、
気立ての良い普通の女性を捜した方が絶対幸せになれるよ、
って思うんだけど
時たま(ほんの時たま)見せる年齢相応の幼さや、
天才ゆえの悩みや苦しみを見てしまうから、
離れられないんだろうねぇ・・・

沙羅華自身も、意識の底では
綿貫くんを頼っているような気がしないでもない(笑)。
まさに究極のツンデレなのかも。

沙羅華さんは、知能と身体と心の発育が
極端にアンバランスなのだろうけど
その "教育係" になってしまった綿貫くんは災難だね。

彼女が(綿貫くんが相手かどうかは別にして)
普通に恋愛をするには、もう少し精神的な成長を待つ必要があるかな。

もっとも、彼女がそこまで成長してしまったら、
そこでこのシリーズは終わるのかも知れないが。


nice!(3)  コメント(3)  トラックバック(0) 
共通テーマ: