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蝋人形館の殺人 [読書・ミステリ]

蝋人形館の殺人 (創元推理文庫)

蝋人形館の殺人 (創元推理文庫)

  • 作者: ジョン・ディクスン・カー
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2012/03/22
  • メディア: 文庫



評価:★★★

ミステリ黄金期の巨匠、ディクスン・カーの
新訳再刊シリーズの一冊。
パリの予審判事バンコランが活躍する長編の4作目。


元閣僚の令嬢・オデットの他殺死体がセーヌ川に浮かぶ。
彼女の足取りを追ったバンコランは、
被害者が最後に目撃された場所である蝋人形館に向かう。

そして中の展示場で、半人半獣の怪物サテュロス像の
腕に抱かれた死体を発見する。
第二の死者はオデットの友人にして
これも名家の令嬢・クローディーヌだった。

やがて、蝋人形館に隣接する怪しい秘密クラブが
事件に深く関わっていることが判明する。


先月に記事に挙げた『髑髏城』と同じく、
本書もまた密室や不可能犯罪ものではない。
でも、カーの持ち味は充分に発揮されていると思う。
それはストーリー・テリングの才能だ。

秘密クラブの経営者ギャランの堂に入った悪役ぶり、
蝋人形館の館主の一人娘・マリーも
序盤からは想像できない終盤での顔をみせてキャラ立ちも充分。

さらに語り手のジェフ・マール君も後半になると、
手がかりをつかむために自らクラブに潜入し、
図らずも大立ち回りを演じてみせる。
いやあ、彼はそんなキャラとはまったく思ってなかったから
この展開にはビックリ。

ミステリというのは時として、
事件発生の発端と結末の謎解きの間、
手がかりの収拾や関係者への聴取などの中盤が
退屈になりがちなものだが、本作では次から次へと
いろんな展開を見せてくれて飽きさせない。

そして、肝心の謎解き部分なんだが、名探偵バンコランは
現場に残された "ある手がかり" を糸口にして、
いとも鮮やかにするするっと意外な真相を引き出してみせる。

やっぱりこの作者は伊達に巨匠と呼ばれてないね。
今回も "密室がなくても傑作が書ける" ことを証明したカーでした。


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