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誘拐児 [読書・ミステリ]

誘拐児 (講談社文庫)

誘拐児 (講談社文庫)

  • 作者: 翔田 寛
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2011/08/12
  • メディア: 文庫



評価:★★★

第54回(2008年)江戸川乱歩賞受賞作。

昭和21年、夏。5歳の男児が誘拐された。
身代金の受け渡し場所に指定された闇市に
警察は50人以上の警官を配備し万全を期すが
身代金は奪われ、犯人は取り逃がしてしまう。
そして男児は行方不明のまま、帰ってこなかった・・・

15年後の昭和36年6月、20歳の青年・谷口良雄は
自らの出自に疑問を抱き、親類を訪ね歩いていた。
始まりは3日前に他界した母の残した、最後の言葉。
自分は、母の実の子ではなかったのではないか?
それどころか、誘拐されてきた身なのではないのか?
ならば、母は誘拐犯の一味だったのか・・・?

同じ頃、家政婦を生業とする女・下條弥生が何者かに殺される。

捜査に当たった刑事、輪島と井口は被害者の遺品にあった写真から、
弥生が15年前の誘拐事件について
何かを知ったために殺されたのではないかと睨む。

一方、同じ刑事仲間の神崎と遠藤は、
あくまで現在の弥生の人間関係の中に動機が潜んでいるとみる。

過去の経緯から互いに反目を抱く二組の刑事は、
それでも地道な捜査を粘り強く進め、事件の核心へと迫っていく。

そして母の秘密を解き明かすべく行動する良雄とその恋人・幸子。

3つのストーリーが絡み合いながら進行し、
サスペンスたっぷりなクライマックスで一つになり、真相に至る。
そして同時に、良雄の母が抱えていた
"本当の秘密" もまた明らかになるのだった・・・


誘拐事件の真相はともかく、一連の出来事の "黒幕" については
途中で「何となくこいつじゃん?」って見当はつくので
意外性には乏しいかもしれないが
(誘拐の実行犯はけっこう意外だけど)
それよりも、本書のあちこちで断片的に語られる
良雄の母のエピソード、そして最後に明らかになる "母の思い"。
そのあたりを読んでいた私は、涙で活字が追えなくなってしまったよ。

ああ、母親とはありがたいものだねぇ・・・


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