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小太郎の左腕 [読書・歴史/時代小説]

小太郎の左腕 (小学館文庫 わ 10-3)

小太郎の左腕 (小学館文庫 わ 10-3)

  • 作者: 和田 竜
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2011/09/06
  • メディア: 文庫



評価:★★★★

「のぼうの城」「忍びの国」に続く、和田竜の長編第3作(たぶん)。
私としては、3冊の中でこれが一番面白かったと思う。


時は戦国、1556年。
南蛮から渡来した鉄砲が、合戦の場に現れ始めた時代。

勢力拡大を目指す戸沢家は、隣国・児玉家と衝突を繰り返していた。
戸沢家の猛将・"功名漁り" 林半右衛門は、
次期当主・戸沢図書(ずしょ)率いる軍勢に加わり、
児玉家の所領へと侵攻するが、
児玉家の猛将・"功名餓鬼" 花房喜兵衛の策略にはまり、
大敗を喫してしまう。

自領へ逃げ帰った戸沢軍だが、児玉軍の反撃が予想された。
当主・戸沢利高は半右衛門の反対を押し切り、
勝利の目算が全く立たない籠城戦を決断する。

そして大軍を以て侵攻してきた児玉軍を前に、
戸沢軍は半右衛門の指揮の下、よく持ちこたえるが
児玉軍の謀略によって糧食の蓄えを失ってしまう。

いよいよ全滅の危機を迎える中、半右衛門は起死回生の一手として、
雑賀党の流れをくむ少年・小太郎の利用を思いつく。
彼はかつて行われた鉄砲試合で、神がかり的な命中率を示したのである。
しかし小太郎の祖父は頑として小太郎が戦場に立つことを拒む。
そのために半右衛門がとった行動は・・・


タイトルに「小太郎」とあるけど、むしろ主役は半右衛門。

剛勇無双にして豪放磊落、人望も厚くまさに戸沢軍の要。
しかし愛した女性は図書の妻になり、その後夭折。
図書との確執はもちろん、当主でさえ半右衛門を当てにしつつも、
自らの体面を最優先に、家臣や領民は二の次として振る舞っていく。

そんな彼の最大の理解者は、皮肉なことに戸沢家の中ではなく、
敵である児玉家の中にいた。花房喜兵衛だ。
実際、この二人は敵味方を超えた "友情" 、あるいは "共感" を示し、
交わした約定は必ず守りあう、信頼に結ばれた好敵手として描かれる。

物語は、戦国の世を生きた不器用な男たちの軌跡を辿っていく。
そして、半右衛門が自ら起こした "過ち" に、
自ら "けり" をつけるところで "幕" となる。

私は時代劇・時代小説ってあまり好きでは無いし、
実際ほとんど読まないのだけど、本書はとても面白く読めた。
とくにラスト近くのあるシーンでは、
涙腺が緩んでしまったことを告白しておこう。

この作者の時代小説なら、次も読んでみたい。
そう思わせる作品だった。


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忍びの国 [読書・歴史/時代小説]

忍びの国 (新潮文庫)

忍びの国 (新潮文庫)

  • 作者: 和田 竜
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2011/02/26
  • メディア: 文庫



評価:★★★

時は戦国、天正四年。
織田信長が本能寺に倒れる6年前、
彼が天下統一へ向けて驀進中の時代である。

信長の次男・織田信雄は伊勢の国を併呑し、
その手を隣国・伊賀へ伸ばそうとしていた。

伊賀というと "忍者" しかイメージがないんだが、
本書を読むと当時の様子が詳しく描かれている。

伊賀には大名が存在せず、地侍が乱立していた。
(この物語の時代には66人いたという。)
しかもそれぞれに仲が悪く、お互いを討ち果たすために
"技" を磨いているうちに、それが "忍術" へと発展していった。

彼らは金のためなら何でも引き受けた。
義理や人情とかの倫理観は一切持たず、
親子兄弟の間でも騙し合い、殺し合っていた。
時には他国の戦国大名に雇われ、闇の仕事を請け負ったり。

しかしなぜか他国からの侵略に対してだけは
怨念や憎悪を一時的に棚上げして団結し、守りを固め、
不思議なバランスのもとで戦国の世に独立を保っていた。

主人公の無門(むもん)は、そんな伊賀の国にあって
最高の技量を持つ身ながら、無類の怠け者であった。

他国からさらってきた娘・お国を女房にしたはいいが
顔を合わせるたびに稼ぎの無さをなじられる。

無敵の忍者で、地侍たちに一目も二目も置かれているのに
お国の前では頭が上がらない無門がおかしい。
まあ惚れた弱みというところか。
このへんのキャラ設定が上手いと感じる。

信長は伊賀の国と関わりを持つことに慎重だったが、
父に認めてもらいたくて血気にはやる信雄は伊賀攻めを決定、
織田軍団は国境を越えて伊賀国への侵攻を開始する。

迎え撃つは百地三太夫率いる伊賀忍び軍団。
無門とお国も、いやおうなく戦いに巻き込まれていく・・・


忍法小説というと山田風太郎の名がまず挙がるが
彼の "忍法帖" は、「伝奇ファンタジー」の部類に入る。

本書の忍法は、「サスケ」とか「伊賀の影丸」とか
「カムイ外伝」とかのイメージに近いだろう。
子供の頃にこれらのマンガに心を躍らせた人たち(私もそうだが)なら
楽しい読書の時間が過ごせるだろう。


権謀術数が渦巻く忍びの世界、
弱肉強食、強い者しか生き残れない戦国の世。
そんな非情な物語の中を多彩なキャラたちが駆け抜ける。

普段はちゃらんぽらんを画に描いたような無門も
本気を出すと流石にスゴい。
最強の忍者の称号は伊達ではない。
しかしそれもこれもすべてはお国のため(笑)。

そんな無門の活躍を無心に追いかけているうちに
どんどんページがめくれていくだろう。


ここまで書いてくると、モノスゴイ傑作のようだが
(実際、よくできた作品だと思う)
そのわりに星の数が3つと少なめなのは
物語の決着の付け方がちょい不満だから。

戦国時代が舞台で、人がたくさん死んでいく話なので
平穏な結末を望む方が無理だとは思う。
思うんだが・・・でもねえ。

これじゃ無門が報われないんじゃないかねえ・・・
あんなに頑張ったんだからさあ・・・

まあ、これは私の好みの問題なので
このラストで全く問題ないって感じる人も多いでしょう。


解説を書いているのは、あの「児玉清」さん!
児玉さんは、もう双手を挙げての大絶賛である。

 解説を頼まれてけなす人はいないだろうけど、
 それを割り引いても、ビックリするくらいの絶賛ぶり。
 児玉さん、かなり気に入ったものと推察する。


「のぼうの城」でブレイクし、
最近では「村上海賊の娘」が話題の和田竜さん。

手元にもう一冊、「小太郎の左腕」って文庫があるので
これも近々読む予定。


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覇王の番人 [読書・歴史/時代小説]

覇王の番人(上) (講談社文庫)

覇王の番人(上) (講談社文庫)

  • 作者: 真保 裕一
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2011/09/15
  • メディア: 文庫




覇王の番人(下) (講談社文庫)

覇王の番人(下) (講談社文庫)

  • 作者: 真保 裕一
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2011/09/15
  • メディア: 文庫



評価:★★★

歴史小説って滅多に読まないんだけど、何と言っても
題材が戦国最大の "謎" である「本能寺の変」、
そして作者がミステリ作家とあれば、
一体どんな解釈を見せてくれるのかと期待もしてしまう。


物語は、永禄9年(桶狭間の戦いの6年後)、
越前朝倉家に身を寄せている明智光秀の元へ、
13代将軍足利義輝の弟・義昭が細川藤孝とともに
やってくるところから始まる。

光秀と藤孝は、一人の武将に期待をかける。その名は織田信長。
義昭を将軍とし、戦国の世に秩序を取り戻すことを胸に、
二人は信長に仕え、天下布武への戦いへ身を投じてゆくが
それは鬼畜の所業、阿修羅の道を歩むことだった・・・


明智光秀という人は、謀反人・裏切り者という
悪いイメージで語られてきたことが多かった。
しかし本書で描かれる光秀はいささか異なる。

乱世を終わらせ、万民に平穏な暮らしを与える、という
確固とした理想を持った深謀遠慮の人である。
戦で死んだ部下を一人一人手厚く葬り、
領民に対しても慈悲深く、家族への愛にあふれた人でもある。

そんな光秀だから、信長の下で働くのは容易ではない。

信長は、浅井一族を滅ぼしてその髑髏で杯を作ったり、
比叡山をはじめとする、織田軍に反抗する宗教を徹底的に弾圧し、
農民や女性、子供も容赦なく皆殺しにしていく。
信長が次々に起こす悪鬼のような仕打ちも
「すべては乱世を終結させるため」と
光秀は自分の心に言い聞かせ、堪忍を重ねて仕えてきたが・・・


光秀が本能寺の変を起こした理由は、
歴史的にはいろいろな説があるらしい。

本書の中で、作者の用意した理由は、
上記のように信長と光秀の "理想" が次第にかけ離れていき、
その違いが修復不能なまでに広がったことによる。
しかしそれは全く意外では無い。
文庫上下巻で1000ページを超える長さのうち、
下巻の半ばまではひたすらに耐える光秀が描かれているので、
謀反の原因が "忍耐の限界" だろうというのは、まあ予想できる。


しかしそれでは普通の歴史小説と変わらない。
本書の特色は、光秀が「本能寺の変」を起こした後にある。

詳しく書くとネタバレになってしまうんだが
「本能寺の変」の裏に隠された事情というか "黒幕" が明らかになる。
そして、いかにもミステリ作家らしく、「本能寺の変」から始まって
秀吉の台頭、関ヶ原、そして徳川の治政に至るまでの
一連の歴史的な出来事に、意外な解釈を引き出してみせる。
このあたりは歴史ミステリとしてけっこう面白い。


本書には、光秀以外にもう一人、主人公がいる。
信長軍の美濃侵攻によって家族を殺された少年・小平太である。
彼は忍びの里の頭目・弦蔵に拾われ、厳しい修行の日々を送る。
やがて成長した小平太は、明智軍配下の忍びとなって、
光秀と共に戦いの日々を過ごしていく。

修行のシーンや、敵の忍びと刃を交えるシーンは
昔懐かしい忍者マンガの世界。
白土三平の「サスケ」を思い出してしまった。

小平太にとっての永遠の女性は、ほんの一時だけ、心を通わせた
光秀の末娘・玉子(たまこ:後の細川ガラシャ)。
彼女の面影を胸に秘め、小平太は光秀のために闇を駆ける。


面白かったのは否定しないけど、やっぱり1000ページは長い。
歴史小説ってなぜか興味を惹かないんだよねえ・・・
戦国時代を扱ったNHKの大河ドラマはけっこう喜んで見るんだけど。

 「軍師官兵衛」は抜群に面白かったなぁ・・・
 岡田准一の熱演(怪演?)ぶりも見事だったし。

 ちなみに「花燃ゆ」は一回も見てない。


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神君幻法帖 [読書・歴史/時代小説]

神君幻法帖 (徳間文庫)

神君幻法帖 (徳間文庫)

  • 作者: 山田 正紀
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2013/10/04
  • メディア: 文庫



評価:★★★

山田風太郎の「忍法帖」シリーズって、90年代末頃に
講談社文庫で主なものがまとめて再刊されたはずで、
それは全部読んだはずかと思う。

魔人妖人が入り乱れて戦う様は、ユニークかつ凄まじいの一語に尽きる。
「伝奇小説」とはかくあるべし、という感じで
まさにこのジャンルでは空前絶後にして
唯一無二の作家だったのだろうと思う。

ちょっとwikiで見てみたら、
後続の作家に与えた影響も大きかったらしい。

著者の山田正紀も、「文庫版後書き」で、
「甲賀忍法帖」を「トラウマ小説」と呼び、
まさに「『甲賀忍法帖』のような小説を書きたい」と思って
このオマージュに満ちた作品を書いたのだという。


タイトルの「神君」とはもちろん徳川家康のこと。
そして忍者ならぬ "幻法者" たちが、死力を尽くして戦う物語だ。

戦国の覇者・家康が死して一年、二代将軍秀忠の治世。
生前の遺言に従い、家康の御霊が
久能山から日光・東照社へ移されることになった。
(現在の壮麗な東照 "宮" は、三代家光の建立による。)

それを仕切るは、天海僧正。
そして、彼の前に招喚されたのは、 "幻法者たち" のうち、
摩多羅(またら)一族の棟梁・木通(あけび)と、
山王(さんのう)一族の棟梁・主殿介(とのものすけ)。

天海は命じる。
「徳川家が盤石の礎を築くため、その捨て石となれ」

かくして、摩多羅一族七人 vs 山王一族七人による、
血で血を洗う総力戦が開始される。
タイムリミットは、久能山を出た家康の御霊が日光へ到着するまで。

壮絶な戦いに生き残り、
東照社の地に立つことができるのは果たしてどちらか・・・


彼らが戦いを始めなければならない理由付けが、
ちょっと弱い気もするんだけど、
それが後半のストーリーにも関わってくるので
そこを気にしてはいけないんだろうね。

後書きで公言しているとおり、まさに風太郎忍法帖の再来。
異形の魔人たちが繰り広げる妖術合戦を
頭を空っぽにして楽しむのが、正しい読み方なんだろう。

鎧のような硬度の筋肉に覆われた、螺鈿兵助(らでん・ひょうすけ)、
頭部の瘤で他人の思考を読み取り操る、首六衛(おびと・ろくえ)、
不死身の肉体を持つ、膚主善(はだえ・しゅぜん)、
肩の人面瘡にもう一つの人格を持つ、双伴内(ふたつ・ばんない)・・・

もう、字面を見ただけでワクワクしてくるじゃないか。

アクションシーンに加えて、エロチックな描写もしっかり。
さらには "親本" である「甲賀忍法帖」にならって、
木通と主殿介との禁断のロマンスまで織り込んで、
まさにサービス満点、全方位の需要に応える(笑)つくり。


ただ、彼らの超常的な能力が発揮されるシーンで、
バイオテクノロジーをはじめとして、
現代科学による解説が入るのは余計かな、とも思う。
物語の流れにやや水を差すような気もして・・・

SF作家としての "こだわり" なのかも知れないが、
ここはもう "そういうものだ" ってことにして、
吹っ切ってしまってもいいんじゃないかなあ。
この作品を読む人は、そういうところは気にしないと思うよ。


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「天地明察」 [読書・歴史/時代小説]

天地明察(上) (角川文庫)

天地明察(上) (角川文庫)

  • 作者: 冲方 丁
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2012/05/18
  • メディア: 文庫




天地明察(下) (角川文庫)

天地明察(下) (角川文庫)

  • 作者: 冲方 丁
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2012/05/18
  • メディア: 文庫



評価:★★★★

あらすじはあちこちで紹介されてるだろうし、映画にもなったので省略。

冲方丁といえば、私にとっては「蒼穹のファフナー」の脚本家。
ライトノベル作家としても評価が確立しているはずだが、
その彼が書いた(たぶん初めての)時代小説である。

まず、とにかく読みやすい。
若者向けの文章で鍛えたせいかも知れないが、すいすい読める。
時代小説を読んだことのない人でも、ほとんど抵抗なく読めるんじゃないかな。

次に、キャラが立っている。
主役級のメインキャラはもちろん、サブキャラにも魅力的な人物がたくさん出てくる。
そして、感情移入が非常に容易だ。
このへんはライトノベル的手法をうまく活用している感じ。
(とはいっても、実は冲方丁のライトノベルは一冊も読んでない。
 「マルドゥック・スクランブル」も1巻の途中で挫折してしまったし。)

物語の中盤過ぎあたりで、ある人物が死去する。
物語的に重要なキャラではあるが、そこまでに登場したシーンはわずか。
しかし、そこで私は涙が止まらなくなってしまった。
そのキャラが死んだことよりも(もちろんそれも悲しいんだが)、
それによって主人公が嘆き悲しむ姿がもう半端なく涙を誘うのだ。
このあたりは本当にうまいなあと思う。

褒め言葉のつもりで書くんだが、冲方丁はキャラの死なせ方がうまい。
というと語弊がありそうだが、
要するに、登場人物の「死」にちゃんと意味を持たせている、と言えばいいか。
その人物の死が、残されたものたちに与える影響とか
ストーリー上の必然性がきちんと計算された上で死なせている、と思う。
(「ファフナー」でもそうだったけどね)


世の中には、キャラを安易に死なせれば感動を呼べると勘違いしている製作者が
たくさんいそうだが、このあたりは見習ってほしいものだ。


この作品は、作中時間で20年以上経過する。
だから、年長者をはじめとして多くのキャラが死んでいく。
もちろんそれらは主人公に衝撃を与えるのだが、
それがまた主人公を使命完遂に向けて走らせる原動力にもつながっていくのだ。


年長者と言えば、この作品にはほんとオジサンにいいキャラが多い。
水戸光圀や保科正之なんて、そのまま長編の主人公がつとまりそう。
(と思ったらすでに「光圀伝」なんてもの書いてたんだね)
建部伝内と伊藤重孝というコンビも絶品。

この作品は映画になってるので、建部と伊藤のキャスティングを見たら
建部が笹野高史、伊藤が岸辺一徳。これはぴったりだねぇ。
ヒロインの宮崎あおいもドンピシャ。主演の岡田准一だけは微妙だが。
(映画自体は見ていないので、映画単体での評価はしない、というかできない。
 ここに書いたのはあくまでキャスティングのみでの話)


最後になってしまったが、この作品の最大の成功ポイントは
主役である渋川春海の造形だろう。

「日本独自の暦を作る」なんて偉業を達成した人物なので
どんな天才かと思いきや、算術の才能に非凡なところはあるものの、
同時代の数学者である関孝和には遙かに及ばない。
そのため、春海は終生、関へのコンプレックスを抱いて生きていくことになる。
しかし、彼はそのコンプレックスをバネにして、彼にしかできない使命に挑んでいく。

かといって眉間にしわを寄せたような気難しい人物ではなく、
明るくユーモアあふれる天然ボケに設定されていて、
親しみがいやがおうにも湧いてきて、誰にも好かれそうなキャラになっている。
(「銀河英雄伝説」のヤン・ウェンリーにちょっと似てるかな。
 ヤンほど切れ者ではないけれど、またそれがいい。)

暦の完成までの彼の半生は、それこそ山あり谷ありなんだが、
読者は春海にどっぷりと感情移入できて、
彼と一体化したまま最終ページまで駆け抜けられる。
それはとても楽しい読書体験だ。


何だかまとまらない文章になってしまったが、
読み出したら最後まで一気に読ませる作品だ。
笑いあり涙あり感動あり。
これぞエンターテイメント、といえる傑作である。

うーん、映画見ようかなあ。
岡田准一の「春海」はどうでもいいけど、宮崎あおいの「えん」は見てみたいなあ。
でも原作からの改変も多いらしいので、そのへんちょっと不安。


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「水滸伝 七 烈火の章」 [読書・歴史/時代小説]

昨年の積み残し分。11月26日読了。

水滸伝 7 烈火の章 (集英社文庫 き 3-50)

水滸伝 7 烈火の章 (集英社文庫 き 3-50)

  • 作者: 北方 謙三
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2007/04/20
  • メディア: 文庫
新幹部・聞煥章の登場により、
前巻のラストで官軍に包囲され、袋の鼠となった宋江。
今回の前半は、梁山泊による宋江救出の戦い。
またも何人かの方々がお亡くなりに。

そして宋国のCIA・青蓮寺の次なる標的は少華山の史進・・・

どうも中国ものは漢字が難しい。
「煥」なんて普通のかな漢字変換じゃ出てこないよ。

読んでる最中はけっこう面白いのだけど
読み終わって少し経つと内容がすっぽり抜けてしまう。
トシのせいか?

でも同時期に読んだ他の本はけっこう覚えていたりするのにね・・・


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「水滸伝 六 風塵の章」 [読書・歴史/時代小説]

水滸伝 6 風塵の章 (集英社文庫 き 3-49)

水滸伝 6 風塵の章 (集英社文庫 き 3-49)

  • 作者: 北方 謙三
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2007/03/20
  • メディア: 文庫
青蓮寺の謀略にはまって××を失った梁山泊は、
その後継者として官の将軍・泰明を仲間に引き入れるべく接触を開始する。

そして新たな幹部を迎えた青蓮寺は
梁山泊壊滅に向けての第一歩として
頭領・宋江の捕縛のために大規模な包囲網を敷く・・・

なんだか、だんだん中国の歴史物ではなく
異世界ファンタジーを読んでいるような気になっている
自分がいたりする・・・


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「明智佐馬助の恋」 [読書・歴史/時代小説]

明智左馬助の恋〈上〉 (文春文庫)

明智左馬助の恋〈上〉 (文春文庫)

  • 作者: 加藤 廣
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2010/05/07
  • メディア: 文庫
    明智左馬助の恋〈下〉 (文春文庫)

    明智左馬助の恋〈下〉 (文春文庫)

    • 作者: 加藤 廣
    • 出版社/メーカー: 文藝春秋
    • 発売日: 2010/05/07
    • メディア: 文庫
評価:★★★

「信長の棺」「秀吉の枷」とともに
「本能寺三部作」と呼ばれているらしい。

「秀吉の枷」の時にも書いたが、この3つの長編は
同一世界を描いていて、特に本能寺前後の部分は
1つの事件を3つの視点から描く、という試みだ。

今作は表題にもなっている明智左馬助。
旧姓は三宅といい、光秀の家臣だった。

光秀の娘、綸(りん)とは幼なじみで、
「左馬助の恋」の相手はこの女性である。

戦国の世の習いで、二人は結ばれることなく、
それぞれ別の伴侶を迎えるが、
時の流れは再び二人を結びつけてゆく。

本能寺の変のくだりも興味深いが、
それよりやはり主人公・左馬助の人間性がいい。
過酷な運命に翻弄されつつも
彼と心を通わせてゆく綸も健気だ。

主役二人が最後にどうなるのかは判っているのだけども
最後まで読んでしまった。
んー、でもやっぱ切ないなあ。

歴史上有名な人物や事件を扱った小説は、
歴史の知識があると登場人物や事件の行く末が
ある程度見えてしまう、というところがある。
私はその辺がどうもダメみたいで、
この手の話をあまり読まない理由の1つにもなっている。

いや別に私に歴史の知識がたくさんある、と言っているんじゃないけどね。
学生時代に日本史や世界史は赤点すれすれだったけど、
そんな私でも判ってしまう場合が結構あるんで。

歴史小説が好きな人は、歴史の知識も豊富で
私なんかよりはるかに物語の見通しがついてしまうんじゃないかと思うのだが
逆に、知識があればあるほど面白く感じられるんだろうなあ。
ある意味(私にとっては)不思議なジャンル。


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「秀吉の枷」 [読書・歴史/時代小説]

秀吉の枷〈上〉 (文春文庫)

秀吉の枷〈上〉 (文春文庫)

評価:★★★

物語は本能寺の変の3年前の天正七年、
中国攻めで播州に遠征している秀吉の陣に
余命幾ばくもない軍師・竹中半兵衛が訪れるところから始まる。

天下人となって亡くなるまでの秀吉の後半生が描かれるのだが、
途中、上巻の終わりあたりで本能寺の変が起こる。

この作品と、この作者の前作「信長の棺」、
さらに次作の「明智左馬助の恋」は同一世界の物語であり、
本能寺の変の描写はそれぞれの作品中の人物の視点から
描いたものになっている。

本能寺の変の真相については
この作者独自の解釈によって描かれているので
そこのところはとても面白いのだけど
その後の秀吉の人生については、
あまり新味はないかなあ。
まあ、いろんな作品で語り尽くされてしまっているからね。

全く関係ないけど、
大河ドラマ「天地人」で秀吉を演じた笹野高史はよかったねえ。
いろんな人が演じた秀吉を見たけど
あれほど見事に秀吉にハマっていた人はいなかったと思うよ。

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「水滸伝 五 玄武の章」 [読書・歴史/時代小説]

水滸伝 5 玄武の章 (集英社文庫 き 3-48)

水滸伝 5 玄武の章 (集英社文庫 き 3-48)

  • 作者: 北方 謙三
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2007/02/20
  • メディア: 文庫
北方水滸伝第5巻。

現時点で実は第7巻まで読んでいるのだけど、
この巻から、梁山泊側のメインキャラにも
死亡者が出始める。

原典では108人そろってから減り始めるらしいのだが
北方版はよりリアルな展開という感じ。

減った分だけ新しいキャラも出てくるし、
登場人物の交通整理という側面もあるのだろう。

でも、この巻でお亡くなりになる××をはじめ、
死にゆく男たちの散り際の光芒は限りなく眩しい。

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