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忍びの国 [読書・歴史/時代小説]

忍びの国 (新潮文庫)

忍びの国 (新潮文庫)

  • 作者: 和田 竜
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2011/02/26
  • メディア: 文庫



評価:★★★

時は戦国、天正四年。
織田信長が本能寺に倒れる6年前、
彼が天下統一へ向けて驀進中の時代である。

信長の次男・織田信雄は伊勢の国を併呑し、
その手を隣国・伊賀へ伸ばそうとしていた。

伊賀というと "忍者" しかイメージがないんだが、
本書を読むと当時の様子が詳しく描かれている。

伊賀には大名が存在せず、地侍が乱立していた。
(この物語の時代には66人いたという。)
しかもそれぞれに仲が悪く、お互いを討ち果たすために
"技" を磨いているうちに、それが "忍術" へと発展していった。

彼らは金のためなら何でも引き受けた。
義理や人情とかの倫理観は一切持たず、
親子兄弟の間でも騙し合い、殺し合っていた。
時には他国の戦国大名に雇われ、闇の仕事を請け負ったり。

しかしなぜか他国からの侵略に対してだけは
怨念や憎悪を一時的に棚上げして団結し、守りを固め、
不思議なバランスのもとで戦国の世に独立を保っていた。

主人公の無門(むもん)は、そんな伊賀の国にあって
最高の技量を持つ身ながら、無類の怠け者であった。

他国からさらってきた娘・お国を女房にしたはいいが
顔を合わせるたびに稼ぎの無さをなじられる。

無敵の忍者で、地侍たちに一目も二目も置かれているのに
お国の前では頭が上がらない無門がおかしい。
まあ惚れた弱みというところか。
このへんのキャラ設定が上手いと感じる。

信長は伊賀の国と関わりを持つことに慎重だったが、
父に認めてもらいたくて血気にはやる信雄は伊賀攻めを決定、
織田軍団は国境を越えて伊賀国への侵攻を開始する。

迎え撃つは百地三太夫率いる伊賀忍び軍団。
無門とお国も、いやおうなく戦いに巻き込まれていく・・・


忍法小説というと山田風太郎の名がまず挙がるが
彼の "忍法帖" は、「伝奇ファンタジー」の部類に入る。

本書の忍法は、「サスケ」とか「伊賀の影丸」とか
「カムイ外伝」とかのイメージに近いだろう。
子供の頃にこれらのマンガに心を躍らせた人たち(私もそうだが)なら
楽しい読書の時間が過ごせるだろう。


権謀術数が渦巻く忍びの世界、
弱肉強食、強い者しか生き残れない戦国の世。
そんな非情な物語の中を多彩なキャラたちが駆け抜ける。

普段はちゃらんぽらんを画に描いたような無門も
本気を出すと流石にスゴい。
最強の忍者の称号は伊達ではない。
しかしそれもこれもすべてはお国のため(笑)。

そんな無門の活躍を無心に追いかけているうちに
どんどんページがめくれていくだろう。


ここまで書いてくると、モノスゴイ傑作のようだが
(実際、よくできた作品だと思う)
そのわりに星の数が3つと少なめなのは
物語の決着の付け方がちょい不満だから。

戦国時代が舞台で、人がたくさん死んでいく話なので
平穏な結末を望む方が無理だとは思う。
思うんだが・・・でもねえ。

これじゃ無門が報われないんじゃないかねえ・・・
あんなに頑張ったんだからさあ・・・

まあ、これは私の好みの問題なので
このラストで全く問題ないって感じる人も多いでしょう。


解説を書いているのは、あの「児玉清」さん!
児玉さんは、もう双手を挙げての大絶賛である。

 解説を頼まれてけなす人はいないだろうけど、
 それを割り引いても、ビックリするくらいの絶賛ぶり。
 児玉さん、かなり気に入ったものと推察する。


「のぼうの城」でブレイクし、
最近では「村上海賊の娘」が話題の和田竜さん。

手元にもう一冊、「小太郎の左腕」って文庫があるので
これも近々読む予定。


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mojo

31さん、こんばんは。遅れましたが
nice! ありがとうございます。
by mojo (2015-05-25 22:26) 

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