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その裁きは死 [読書・ミステリ]

その裁きは死 ホーソーン&ホロヴィッツ・シリーズ (創元推理文庫)

その裁きは死 ホーソーン&ホロヴィッツ・シリーズ (創元推理文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2020/09/10
  • メディア: 文庫
評価:★★★★

『カササギ殺人事件』でブレイクした作者の
『メインテーマは殺人』に続く、元刑事ダニエル・ホーソーンを
探偵役とするシリーズの第2作。

不動産業者エイドリアン・ロックウッドは
妻で作家のアキラ・アンノと別れることになり、
離婚を専門に扱う弁護士リチャード・プライスに依頼する。

リチャードは離婚問題をエイドリアンに有利なように導くが
二人がレストランで会食中のところに出くわしたアキラは激高し、
リチャードに向けて「ワインボトルでぶん殴ってやる!」と口走る。

そしてその直後、リチャードは自宅で撲殺死体で発見される。
凶器はなんとワインボトル、そして殺害現場の壁には
ペンキで ”182” という謎の文字が描かれていた・・・。

作家アンソニー・ホロヴィッツは、元刑事でロンドン警視庁顧問の
ダニエル・ホーソーンに引っ張り出され、再び殺人事件に関わることに。

リチャードのパートナーで、画廊を経営するスティーヴン、
リチャードの法律事務所の共同経営者オリヴァー、
リチャードの学生時代の友人チャールズ、その妻ダヴィーナ、
そしてもちろんエイドリアンもアキラも、ホーソーンの捜査によって
彼ら彼女らに隠されていた様々な真実が明らかになっていく。

そしてリチャード殺害の24時間前に、彼の友人だったグレゴリーが
鉄道の駅で線路に落ち、轢死していたことが判明する。
これは事故なのか、自殺なのか、それとも他殺なのか・・・

前作に引き続き、アンソニーはホーソーンと縁を切ろうかと悩んだり、
逆に対抗意識を燃やして彼より先に犯人を突き止めようと奮闘したり、
いろいろと奔走しまくりなのだけど、毎回空振りに終わってしまうのは、
まあお約束の展開ではある(笑)。

そして今回、ロンドン警視庁のカーラ・グランショー警部の介入も
アンソニーを苦しめる。ホーソーンのことを快く思わない警部は
あの手この手でアンソニーに嫌がらせを仕掛けてくる。
これがまあ、えげつないというか嫌らしいのなんの。

もっとも、やられてそのままで済ますホーソーンではない。
どこかのドラマの「倍返し」ではないが、終盤に至り、
痛快な方法でカーラにギャフンと言わせる(古い表現だなあ・・・)。

多くの登場人物が様々な言動をしていくので事態は錯綜し、
真相へ至る道は混迷を極めるように見えるのだが
終盤の謎解きシーンで、ホーソーンが真っ先に ”ある事実” を
明らかにすることによって、すべてのピースが一気に組み上がって
するすると事件が解きほぐされていく。

あたかも、難解な図形の証明問題に1本の補助線が引かれることで
解答への筋道がすーっと浮き上がってくるように。

数学の問題を、効率よく鮮やかに解くことを
「エレガント(elegant:優雅)な解法」というそうだが
本作の論理の筋道はまさにそれ。

20年以上前のことだが、有栖川有栖の『孤島パズル』の
解決編を読んだときのことを思い出したよ。

前作に引き続き、「上手いなあ・・・」とうならせる、流石の出来。

 ちなみに、数学の問題を強引な力業で解くことは
 「エレファント(elephant:象)な解法」というそうだ。


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