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シェルター 終末の殺人 [読書・ミステリ]

シェルター 終末の殺人 (講談社文庫)

シェルター 終末の殺人 (講談社文庫)

  • 作者: 三津田 信三
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2015/01/15
  • メディア: 文庫
評価:★★☆

ホラー・ミステリ作家の ”私” (三津田信三)は、
資産家・火照(ひでり)陽之助の屋敷を訪れる。
彼が自宅の庭に建設したシェルターを取材するためである。

シェルターの見学に参加した他のメンバーとともに
庭を歩いているとき、突然、空に巨大な閃光が走り
「走れぇぇ!」という火照の絶叫が。
その声に追われるように一同は慌ててシェルターに逃げ込む。

シェルター内に鳴り響く警報を聞いて、
”私” は慌てて鋼鉄製の耐久扉を閉ざす。
この警報は人体に影響のある放射線量を記録すると鳴り出すのだという。
いったい、外の世界には何が起こったのか・・・?

シェルターに逃げ込んだメンバーは ”私” 以外に
学術書の編集者・仙道賢人(けんと)、
看護師の母堂育子、月刊誌編集者の面家(おもや)かなお、
そして編集プロダクションの社長で名刺記載の名前が "星影企画"。

 たぶん "企画" は社名だよねえ。人名とは思えないんだが、
 彼の下の名は最後まで明かされない。

最後は書籍装丁のデザイン事務所に勤める明日香(あすか)聖子。
どうやら火照は逃げ込めなかったらしい・・・

シェルター内には水も食料も当座の分は用意されており、
この6人による共同生活が始まる。

このシェルターは地下に設置され、滞在用に用意された5人分の個室、
図書室、ビデオ室、洗面所兼シャワー室、台所兼キッチン、
機械室、倉庫と合計11部屋。TVはあるが映らない。
パソコンもあるが外部のネットと通信ができない。

そんな、外の世界の状況が全く掴めない状況下で
次々にメンバーが密室の中で殺されていく・・・という話だ。


この手のクローズト・サークルの場合、犯行が続いて
人数が減っていくと当然ながら容疑者が減っていく。
すると、残った人間の中に犯人がいなければならないわけで
サスペンスは増すかも知れないが
犯人の意外性という面では不利なパターンだ。

古今の同様の作品の中で "名作" と呼ばれているものは
あの手この手を繰り出して読者の裏をかこうとする。
中には裏技どころか犯則技に近いものがあったりするのだが
(それについてはいちいち書かないけど)
この作品の登場人物たちも、出版関係者が多いせいか
その方面のミステリ的知識は持ち合わせていて
生き残った者たちはいろんな可能性を検討していく。
もちろん、思いつく限りの "穴" を潰すような "捜査" も行っていく。

さて、そういうふうに展開していくと
「あのパターンではない」「このパターンでもない」
ってなっていくわけで
「じゃあ、どんな絡繰りなんだろう(わくわく)」
ってなるよねえ・・・

そしてそして、最後に明かされる真相を読んでみると・・・

だいたい、本格ミステリを読み終わった感想は
「そうだったのか!」って膝を打つ人と
「これはないよぉ」ってがっかりする人のどちらかだろう。

私の場合は後者でした。
そして私が思うに、後者の感想を持つ人が多いんじゃないかなあ・・・
怒り出す人もいるかも知れない。

終わってみれば、ちゃんと伏線は張られてはいるんだけどね。
でも、多くのミステリファンが期待する内容ではない気がする。

途中は面白いんだよねぇ。
閉鎖空間に加え、少ない登場人物。単調になりがちな展開を補うように
密度の濃いマニアックな会話が続いて、
このあたりの蘊蓄はなかなか読みでがある。
”私” が明日香に抱くほのかな恋愛感情なんかも
いい味付けになってると思うし。

やっぱりこの作者の(私にとって)最良の作品群は
刀城言耶シリーズなんだなぁ。

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