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神様ゲーム [読書・ミステリ]


神様ゲーム (講談社文庫)

神様ゲーム (講談社文庫)

  • 作者: 麻耶 雄嵩
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2015/07/15
  • メディア: 文庫
評価:★★

もし神様がいたら、この世のことすべてを知っているはず。
だから、犯罪が起こっても犯人が誰かをも知っているはず。
ならば、神様は究極の名探偵になるじゃないか・・・
という神様シリーズの第一作であるが、なかなかの問題作でもある。

講談社の「ミステリーランド」という
ジュヴナイル・ミステリのレーベルから刊行された一冊。


主人公は小学4年生の芳雄。彼が住む神降(かみふり)市では、
野良猫が次々に殺されるという事件が起こり、
クラスメイトのミチルの飼い猫も犠牲となっていた。

ある日、芳雄は転校生の鈴木太郎から意外な話を聞かされる。
太郎は自らを「神様」だというのだ。
そして、猫殺しの犯人は秋屋という大学生だという・・・

芳雄は、地元・浜田町出身の子どもたちでつくった
"浜田探偵団" のメンバーだった。
彼の友人・英樹も探偵団に入りたがっていたが
出身地が違うと言うことで他のメンバーたちは加入を認めなかった。

探偵団は秋屋のことを調べ始めるが、その最中に英樹が死体で見つかる。

鈴木太郎は犯人を知っているだけでなく、
"天誅" を下すこともできるという。
芳雄は太郎に、「英樹を殺した人間に天誅を与えて欲しい」というが
その "天誅” を下されたのは意外な人物だった。

そして、彼の下す "天誅" はまだ終わっていなかったのだ・・・


ミステリを読み慣れた人なら、かなり早い時期から
ある人物が怪しいと思うだろう。
そしてそれは、終盤に至って芳雄が推理する犯人と一致するはずだ。
しかし・・・

ラスト2ページでの展開に驚かない人は少ないのではないか。
私も驚いたし、それ以上に戸惑ってしまった。
理解できなかったと言ってもいい。

私は普段、読書録の記事を書くときに、
他の人の文章は読まない主義なのだけど
今回はネットでいくつかのサイトを回ってしまった。

なかなか深く考察されてる人がいて、私なりに納得がいったのだけど
要するに鈴木太郎が神様であることを認めるか認めないかで
ラストの解釈が変わってくるということだ。

そして、こうも思った。
大人でも理解しかねている結末を、
年少の読者はどう感じるだろうか?と。

もっと言うと、こんなものを子どもに読ませていいのか?とも。

まあ、ホームズや少年探偵団みたいに勧善懲悪、
最後はハッピーエンドなミステリばかりじゃないんだが、
それにしてもねえ・・・

本書がイヤミス初体験になる子どもさんが、
トラウマにならないことを祈るのみ。

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猫間地獄のわらべ歌 [読書・ミステリ]

猫間地獄のわらべ歌 (講談社文庫)

猫間地獄のわらべ歌 (講談社文庫)

  • 作者: 幡 大介
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2012/07/13
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

作者は時代小説をメインに書いている人らしい。
本作もまた江戸時代を舞台にした時代小説なのだけど
ギャグ満載のユーモア小説でもあり、
さまざまなガジェットてんこ盛りの本格ミステリでもある。


猫間藩の江戸下屋敷で御広敷番(奥御殿の雑用係)組頭・禰津が
切腹して果てた。現場は書物蔵の中、
内側から留め金が下ろされ、完璧な密室状態。

藩の江戸目付を兄に持つ、藤島内侍の佑(ないしのすけ)は
下屋敷を預かる藩主の愛妾・和泉(いずみ)の方に呼び出される。

与えられた使命は「書物蔵に出入りする方法を見つけよ」。
つまり、禰津が自殺したとなると和泉の方の落ち度となってしまうので
誰が見ても自死である禰津の死を
他殺としてでっち上げよ、という無理難題だった。
しかもこれは、先君の御正室である豊寿院も了承済みのことだという。

徒(かち)目付の水島静馬を供に連れ、内侍の佑は"密室破り"に挑むが
これがまた難攻不落。もっとも、
そもそも誰も現場に出入りしていないんだからねぇ・・・

さて、猫間藩は猫の額のように狭い山里だったが、
銀山と林業によって栄えていた。

しかしその国許で、首なしの死体が次々と見つかる。
そこへ江戸での事件がもたらされると、
人々は藩に昔から伝わるわらべ歌の通りに殺されていく・・・
と噂をするようになった。

郡奉行・奥村は下手人を挙げるべく奔走する。
なにせこのわらべ歌は九番まであるのだ(笑)。
早く解決しないと大量殺人になっちゃうからね。

そして、江戸ではさらなる事件が起こる。
藩の御用商人である材木商・金太左衛門(きんたざえもん)が
自宅の蔵屋敷で殺されたのだ。
妻の証言から、犯人は藩産出の銀を扱う
銀二右衛門(ぎんじえもん)と目されたが、彼には犯行時に
離れた場所にある自らの蔵屋敷にいてアリバイが成立していた・・・

でも、このアリバイトリックは見当がつく人も多いんじゃないかな。
私も分かったし。


密室、わらべ歌の見立て殺人、そしてアリバイ崩しと
これが時代劇かと思うほどミステリ要素満載。
しかも、途中途中で登場人物同士がメタな会話を始めたりする。

「これは密室殺人じゃな」
「はて、この時代には ”密室” って言葉はなかったのでは?」
「そうじゃな」
「そういうところにうるさい読者はけっこういるんですけど・・・」

とにかく全編にわたってコメディタッチの描写が続く。
しかし終盤にいたって、3つの事件(実際は2つだけど)は
きっちり解決するし、内侍の佑が捻り出した(笑)密室トリックは
なかなかスケールが大きくてスゴい。さらに、
それらの背景にはある "陰謀" が隠されていたことも明らかになる。

そしてそして、最後の最後にもう一つサプライズが。
いやあ流石です。脱帽です。
そして、こういう物語の締め方は大好きです。

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