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神の積み荷を守れ・上下 [読書・冒険/サスペンス]


神の積荷を守れ(上) (新潮文庫)

神の積荷を守れ(上) (新潮文庫)

  • 作者: クライブ カッスラー
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2013/08/28
  • メディア: ペーパーバック
神の積荷を守れ(下) (新潮文庫)

神の積荷を守れ(下) (新潮文庫)

  • 作者: クライブ カッスラー
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2013/08/28
  • メディア: ペーパーバック
評価:★★★

海洋冒険小説「ダーク・ピット・シリーズ」第21作。

第1作の刊行が1973年で、いまだに新刊が出るのだから、
もう45年も続いてることになる。
本作の原書が刊行されたのは2010年だけど、それでも37年。
もうそれだけでたいしたものだと思う。
ぜひ48作まで書いてもらって、
「男はつらいよシリーズ」と肩を並べていただきたい(冗談です)。


NUMA(アメリカ国立海中海洋機関)の特殊任務責任者として登場し、
様々な世界的陰謀を阻止してきた主人公のピットも
巻を追うごとに年を重ね、ついにはNUMAの長官へと登り詰める。
長年恋人関係にあった米国下院議員のローレン・スミスとも結婚し、
さらに成人した息子や娘も物語に加わるようになってきて
ここ何作かは「ピット・ファミリー・シリーズ」(笑)になってきた。


トルコ沖で沈没船の調査をしていたピットは
オスマン帝国時代と思われる船から引き上げた遺物を
トルコへ預けるため、イスタンブールへと向かう。

そこで外遊中の妻・ローレンと落ち合うが
二人が訪れていた博物館が謎の一団に襲撃される。

所蔵品の一部が盗まれ、ローレンは拉致され、強盗たちは逃走する。
ピットは直ちに追跡し、妻の奪還に成功するが、
これが中東地域を混乱に陥れる事件の幕開けだった。


オスマン帝国最後の皇帝メフメト6世の血を引く
実業家・セリク兄妹が今回の黒幕となる。

おりしもトルコは大統領選挙の時期を迎えていた。
セリクたちは歴史的遺物の強奪や聖地へのテロを重ねて、
イスラム教徒の怒りを誘おうとしていた。
兄妹の息のかかった急進的かつ過激な原理主義を標榜する候補を当選させ、
トルコ支配の実権を握るためだ。

それを阻止すべく立ち上がるダーク・ピット。
NUMAの長官職にあっても、相変わらず外洋を駆け巡っている。
今回も相棒のジョルディーノとともに、陸に海に大活躍である。

さらにピットの子供たちも見せ場がたっぷり用意されている。

息子のダーク・ピット・ジュニアはイスラエルの発掘現場にいたところを
セリクの一味に襲われ、危機に陥る。
ついでに発掘を仕切っているイスラエル人女性といい仲になるのは
父親譲りというかお約束というか。
親父が愛妻家になってしまったので、
そっち系の発展ぶりは息子の役回りになってきたのだね(笑)。

一方、娘のサマーは1916年に爆沈を遂げた
英国戦艦ハンプシャー号の謎に迫る。この船に乗船していた、
当時の陸軍大臣キッチナーの日記を追っていくうちに
沈没は事故ではなく、英国国教会による陰謀の可能性が浮上してくる。
どうやら、キッチナーの所持品の中に、
キリスト教徒の信仰を根底から揺るがすものがあったらしい。


さすがに長く続いているシリーズらしく、話の運びは手慣れたもの。
4世紀のガレー船に第一次大戦時の戦艦、
現代では小型潜水艇に大型タンカーと、
様々な艦船が登場するのはまさに海洋冒険ものならでは。
それらを駆使したアクションシーンもうまく盛り込んで
読者を飽きさせない。
そして最終的にはピット、ジュニア、サマーの話は
一つに収斂して結末へなだれ込んでいく。


水戸黄門的なマンネリ感を感じないわけではないが
いい方に考えれば、40年以上にわたって
安定した面白さをキープしてるわけで、それはそれですごいこと。
ひと時の読書の楽しみとしては十分なレベルだと思う。

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