SSブログ

 [読書・ミステリ]

光 (光文社文庫)

光 (光文社文庫)

  • 作者: 道尾 秀介
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2015/08/06
  • メディア: 文庫



評価:★★★

本作の語り手である利一は小学4年生。
同級生の慎司、宏樹、清孝、そして
慎司の2歳年上の姉・悦子も加わった5人が、
夏休みの始まりから翌春までの間に過ごした
"少年の日々" が綴られている。

「長編」と銘打たれてはいるが、実際は
各章ごとにストーリーに区切りがある連作短編集になっている。
そして各章の合間には、成長した「わたし」による
短い回想が挟まれている。

「第一章 夏の光」
 野良犬のワンダが行方不明になり、
 殺されたのではないかと噂になるが、
 宏樹の父が撮った写真がもとで清孝に容疑がかけられる・・・

「第二章 女恋湖の人魚」
 女恋(めごい)湖には、かつて巨大な鯉がいたという。
 鯉は若い女性に姿を変え、
 村の若者とのあいだに人魚が生まれたと伝えられる。
 伝説の鯉を探しに湖を訪れた利一たちは、
 "人魚伝説の洞窟" を発見するが・・・

「第三章 ウィ・ワァ・アンモナイツ」
 暴風雨によって土砂崩れが起き、
 家から登校できなくなった慎司と悦子は、
 しばらくの間、利一の家に泊まることになる。
 そして、利一と慎司は、宏樹の鼻を明かすために
 アンモナイト化石の偽物を作り始める・・・

「第四章 冬の光」
 清孝の祖母が入院した。
 遠くの病院に転院したら、清孝も転校になるかも知れない。
 清孝と祖母を慰めるために、
 利一たちは "あるもの" を探し始める・・・

「第五章 アンモナイツ・アゲイン」
 利一たちは、市会議員の息子・劉生(りゅうせい)と知り合う。
 清孝への餞別として、利一たちは
 アンモナイトの化石を贈ろうとするが、
 化石の掘れる場所は既に開発の手が入っていた。
 そんな彼らに流星は「化石のある場所を知っている」という・・・

「第六章 夢の入口と監禁」
「最終章 夢の途中と脱出」
 この二章は前後編になっている。
 劉生が姿を消した。心配した利一たち5人は
 行方を追ううち、雑木林の中で彼を見つける。
 「実は "狂言誘拐" だった」と劉生は打ち明けるが、
 そこに現れた男たちに5人は捕らえられてしまう・・・


第一章がいちばんミステリっぽい雰囲気があるが、
第二章以降は彼ら小学生たちの日常の中で起こる出来事。
どちらかというと微笑ましい部類の話が続く。

ラスト二章で一気にサスペンスが高まり、
小学生6人が経験した "命をかけた大冒険" が描かれる。

読者は郷愁の思いとともに、しばしの間
"子供の時間" に戻ることになるだろう。

とはいっても、そこは道尾秀介のこと。
全体的にミステリらしさは希薄だなあと思って読んでたんだけど
実は作品全体にある "仕掛け" が施してあり、
最後はちょっとしたサプライズが待っている。


ミステリ読みとしては恥ずかしい話だが、作品の扉ページに
「市里修太」という作家の『時間(とき)の光』という作品から
抜粋された文章が掲載されているんだけど、
解説の大林宣彦氏(映画監督)の文章を読むまで
このページの意味に気づかなかった。
つくづく私のアタマはボケてるなあ・・・


あと、全く余計なことだけど、大林氏の解説文は本書の内容を、
無理矢理に自分の思想信条のほうへ結びつけているみたいに読める。
ちょっぴり "我田引水" じゃないですかねぇ、大林さん。


nice!(1)  コメント(1)  トラックバック(0) 
共通テーマ: