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キミは知らない [読書・ミステリ]

キミは知らない (幻冬舎文庫)

キミは知らない (幻冬舎文庫)

  • 作者: 大崎 梢
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2014/04/10
  • メディア: 文庫



評価:★★★★

ヒロインの水島悠奈は高校2年生。
12年前に歴史の研究者だった父親を火災事故で亡くし、
出張が多く留守がちな母と二人暮らしである。

ある日悠奈は、学校の図書館で父の著書を読んでいる青年と出会う。
彼の名は津田孝之。数学の非常勤講師だった。

ぱっとしない外見、野暮ったい服装にもかかわらず、
孝之と言葉を交わしていくうちに、悠奈は淡い恋心を抱くようになる。

しかし孝之は突然学校を退職し、実家へ帰ってしまう。
ショックを受けた悠奈だが、偶然にも
彼の実家の住所を知り、愕然とする。
父の遺品の手帳にも、同じ住所が記してあったのだ。

試験休みを利用して、彼の実家のある地方都市を訪ねた悠奈。
しかし、やっとの思いで巡り会えた孝之は、
別人と見違えるほどの精悍な風貌、そして冷たい眼をしていた・・・


巻末の解説に、本書を評して
「ジェットコースター・ノベル」とあるが、その言葉に偽りはない。
とにかくテンポが速くどんどんストーリーが進行していくのだ。

何せ、物語の開始から上記の展開まで、文庫で40ページもない。
全部で370ページほどの作品なので、
物語はまだ9割ほど残っていることになる。

そしてこれ以後も、予想外の展開は続く。


翌日、父の焼死したロッジ跡を訪れた悠奈の前に
謎の黒服三人組が現れる。
彼らは「お迎えに上がりました」と言いつつ
悠奈を拉致同然に連れ去ってしまう。

到着したのは資産家・大公路(おおこうじ)家の豪邸。
そして当主・誠太郎は一族郎党を前にして
「悠奈に財産の相続権を与える」と宣言してしまう。


なんと突然の「犬神家の一族」展開?
なあんて思ってる暇もなくどんどん物語は進む。


誠太郎の宣言直後から悠奈は命を狙われ、
そこに現れた孝之に連れられて屋敷を脱出するが、
さらに彼女の行く先々でさまざまな事件が起こっていく・・・


孝之以外にもマキやレンと名乗る青年が登場し、
悠奈は3人のイケメンに囲まれるという逆ハーレム。

彼ら以外にもさまざまな人物が悠奈の前に現れるが、
みな腹に一物も二物も抱えていて、
いったい誰が味方で誰が敵なのか、ラストに至るまで判然としない。

そして、ひとり悠奈だけが事情が分からずに右往左往。
まさにタイトル通りに「キミは知らない」状態。
しかし彼女は逃げずに、自分の運命に果敢に立ち向かっていく。
すべてを明らかにして、自らの進む道を切り拓くために・・・


恋あり、冒険あり、出生の秘密あり、父の死の真相あり。
後半に入ると、古の因習に囚われた村に秘められた悲劇やら
旧家同士の確執やら因縁やらも絡んできて、まさに横溝正史の世界。

もう大盛りの幕の内弁当みたいにお腹いっぱいの大盤振る舞い。
しかし胃もたれの心配は御無用。
大崎作品の持ち味とも言える、爽やかな読後感が待っているから。

女子高生・悠奈ちゃんが巻き込まれた、手に汗握る5日間。
とにかく読み出したらページを繰る手が止まらない。
ロマンティックでアドベンチャー満載の
ジュブナイル・ミステリの傑作だ。


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