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ぐるりよざ殺人事件 セーラー服と黙示録 [読書・ミステリ]


ぐるりよざ殺人事件  セーラー服と黙示録 (角川文庫)

ぐるりよざ殺人事件 セーラー服と黙示録 (角川文庫)

  • 作者: 古野 まほろ
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2016/01/23
  • メディア: 文庫
評価:★★★★

バチカン市国が三河湾に浮かぶ人工島に建設し、
事実上の治外法権の下にある聖アリスガワ女学校。
しかしこの学校の実体は、なんと探偵養成学校なのだ。

この世界には『探偵士』という国家資格があり、
最高学府には「探偵学部」なんてものまで存在するのだから。
だからこの学校には、通常の授業科目以外に宗教系の科目はもちろん
探偵に必要な素養を学ぶ科目も多々設定されている。


本書は前作『セーラー服と黙示録』に続く第2作。
ちなみに「ぐるりよざ」とは、
グロリオーサ(ラテン語で「グレゴリオ聖歌」)を
日本のキリシタンが歌い継ぐうちに訛ってできた言葉だそうな。


時は1991年の5月、アリスガワ女学校は春季研修旅行を迎えた。
1~3年までの全校生徒180人を縦割りにして30班に分け、
班ごとに異なる場所で4日間を過ごし、
与えられた課題をこなすというもの。

本シリーズの主役である3人娘、
2年生の島津今日子・古野みづき・葉月茉莉衣も
1年生の八十桐八重子(やそぎり・やえこ)と杏樹恵美(あんじゅ・めぐみ)、
3年生の原磯晴美(はらいそ・はるみ)と木佐橋ユキ(きさはし・ゆき)
とともに研修場所である愛知県富山村へ向かう。

 ちなみに、通常6人編成(1・2・3年が各2名ずつ)のはずの班が、
 彼女らだけ何故か7人になっているのだが
 そこには学校側のある "思惑" が存在する。
 でもこれを書くと長くなるので割愛(笑)。

しかし彼女らを乗せたバスの運転手が謎の死を遂げ、
続けて7人も意識を失ってしまう。

そして彼女たちが目覚めたのは謎の "隠れ里"、
「鬱墓村」(うつはかむら)だった。

そこは厳しい断崖に囲まれた盆地で、外部と完全に隔絶された世界。
戦後46年経っているにもかかわらず、
総計108人の村民全員が終戦を知らないくらい徹底的に隔離されている。
もちろん電話もテレビもラジオもない。1991年だからネットもない。

ここはかつて隠れキリシタンが暮らした村で、
村民たちは今でも「キリスト教の "十戒" を厳しく遵守する」という
敬虔なカトリック信者たちなのだ。
すなわち、「偽証をしてはいけない」つまり「嘘をつけない」。
これは建前ではなく、ここの村人たちは
本当にこの戒律を守って生きている。
つまりこの村は、いわゆる「正直族」だけが住む地なのだ。

しかし今日子たち7人が村に現れた日から、
連続見立て殺人の幕が切って落とされる。
"十戒" にはもちろん「汝、殺す無かれ」という項目もある。
この「正直族」の村にあって
戒律を破っている(破ることができる)者はだれか。

村人たちの疑惑の目は当然のことながら
今日子たち外部の者に向けられる。
彼女たちは自分の身の潔白を示すためにも
事件の真相を探らなければならなくなる。
そして同時に、外部への脱出する方法も模索し始めるのだが・・・

戦前の時代を思わせるような風習・慣習に縛られた「鬱墓村」には
戦国時代に6人の落武者が黄金を携えて現れたという伝説が残る。
絶対的な権力を握る村長を務めるのは双子の老婆で、
半ば気が触れていると思われている修道女「焙煎の尼」が出没する。
そして中盤から登場するのだが、村の地下には巨大な洞窟が・・・

横溝正史の「八つ墓村」の雰囲気そのまんまの舞台で起こる
連続殺人事件に巻き込まれた女子高生たちの運命や如何に・・・?


第1作「セーラー服と黙示録」では、
主役の3人は2年生で季節は12月。
本作では同じ2年生ながら5月の出来事で、
つまり前作よりも時系列的には半年ほど前の話だ。

前作の記事の時、
「これはシリーズの設定を説明するための作品ではないか」
と書いたのだけど、時系列的にも
実は本書が第1作として構想されていたような気がする。


とにかく外部と完全に分離された世界で起こる事件で、
そこには「鬱墓村ルール」とも呼ぶべき "規則" が存在し、
村人たちはそのルールの下に生きている。
そういう意味では、一種のSFでありファンタジーに近い。
しかしその "規則" は厳然と存在し、
謎解きも犯人の指摘も、その "規則" に則って行われる。

米澤穂信の『折れた竜骨』もまた
ファンタジー世界を舞台にしたミステリだったが、
あれを横溝正史の世界に置き換えたもの、と言えるかも知れない。


文庫で700ページという堂々のボリューム。
その中で謎解き部分は170ページを占める。
<ホワイダニット>の茉莉衣、
<ハウダニット>のみづき、
そして<フーダニット>の今日子。
3人娘の推理が炸裂するクライマックスは
まさにページを繰る手が止まらない。

3人の推理によって、この村の "真実" が暴かれていくところは
まさに圧巻のひと言しかない。
これでもかこれでもかとぶち込まれてくる「鬱墓村」の全貌。
700ページの厚さを、この密度で描ききるなんて
つくづく古野まほろは天才だと思うよ・・・

そして、そもそも3人をこの村へ送り込んだのは
アリスガワ女学校の上層部だ。
彼らの最終的な目的に3人がどう関わってくるのかは未だ不明だが
それは次巻以降で語られるのかも知れない。

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コメント 4

mojo

鉄腕原子さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。
by mojo (2017-10-06 22:50) 

mojo

@ミックさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。
by mojo (2017-10-06 22:50) 

mojo

サイトーさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。
by mojo (2017-10-06 22:50) 

mojo

31さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。
by mojo (2017-10-08 17:44) 

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