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曲がった蝶番 [読書・ミステリ]

曲がった蝶番【新訳版】 (創元推理文庫)

曲がった蝶番【新訳版】 (創元推理文庫)

  • 作者: ジョン・ディクスン・カー
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2012/12/20
  • メディア: 文庫



評価:★★★☆

創元推理文庫の改訳新装版シリーズ。
名探偵ギディオン・フェル博士が活躍する長編としては9作目。


ジョン・ファーンリーは英国貴族の次男坊だったが、
放蕩が過ぎて15歳の時にアメリカへと追い払われてしまった。

しかし25年後、兄の死に伴い爵位と領地を継ぐべく
ケント州マリンフォード村へ帰ってきた。

ジョンは幼なじみのモリーと結婚し、すべては順風満帆かと思われたが
その1年後、「我こそは本物のジョン・ファーンリーだ」
と名乗る人物が現れた。

その男、パトリック・ゴアは語る。
25年前の渡米の際に乗り込んだタイタニック号(!)で出会った二人は、
その場でお互いの身分を入れ替えたのだと言う。
かの船が沈没したその夜に・・・

15歳の頃のジョンをよく知るかつての家庭教師を呼び寄せ、
真偽を判別する決定的な証拠が明らかにされようとした時、
ジョンが不可解な死を遂げる。
複数の目撃者のもと、周囲に誰もいない状況で
喉を切り裂かれていたのだ・・・


創元推理文庫の新装版の表紙はちょっと不気味なんだが
これは "自動人形" だ。
からくり仕掛けで楽器を弾いたりチェスを指したりと
驚くべき "性能" を示したもので、
先代(ジョンの父)が大枚はたいて買い込み、
ファーンリー家の屋敷の屋根裏部屋に安置してあったもの。
中盤でこれが登場したあたりから、ぐっと事件の怪奇性が増してくる。
"真相" にも少なからず関わってくるアイテムだ。

あと、意味深なタイトルなんだけど、
これは物語が2/3ほど進行したあたりで出てくる言葉。
この「曲がった蝶番」が、どこの何を表してるのかは
最終章までお預けだ(笑)。

本作はカーお得意の "不可能犯罪もの"。
明かされる真相は実に大胆で驚くべきものなんだけど
実際、どれくらいバレないものなのかはちょっと疑問。

 発表当時はともかく、現代で同じネタを使ったら
 (いろんな意味で)けっこう物議を醸すような気もする。

それを補って余りあるのは、カーのストーリーテリングの巧みさ。
ジョンが本物か否か、自殺なのか他殺なのか、
二転三転するストーリーは読者を飽きさせない。

終盤近くになっても、「これで決まり」かと思わせておいて
さらにひっくり返して見せたりと、もう作者に翻弄されっぱなし。

そして最終章では、真犯人の独白が綴られるんだけど
雰囲気も文体も一転して、"物語" としての本書の面白さが堪能できる。


密室と不可能犯罪の巨匠と言われているけど、それだけに留まらない。
犯人の意外性も充分だし、なにより物語として面白い。
ガーはやっぱり大好きな作家だ。


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コメント 3

mojo

鉄腕原子さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。
by mojo (2017-04-12 22:40) 

mojo

@ミックさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。
by mojo (2017-04-12 22:41) 

mojo

31さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。
by mojo (2017-04-18 02:04) 

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