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雨の日のきみに恋して [読書・ミステリ]

雨の日のきみに恋をして (双葉文庫)

雨の日のきみに恋をして (双葉文庫)

  • 作者: 松尾 由美
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2016/10/13
  • メディア: 文庫



評価:★★☆

主人公の沼田渉(わたる)は30歳の独身サラリーマン。
キャリアウーマンの叔母がロサンゼルスへ赴任することになり、
その間、空室となった彼女のマンションで暮らすことになる。

引っ越しが済んでひと月ほど経った、9月の末の雨が降る夜、
渉は部屋の中で女性の声を聴く。

その声は自らを小田切千波と名乗り、
3年前にこのマンションで死んで幽霊となったのだという。


千波は語る。

このマンションの3年前の持ち主はデザイナーの守山薫。
妻のある身でありながら、多くの女性と浮名を流す男だった。

千波もまた彼に憧れる一人で、
守山がマンションを出て愛人と暮らしている間、
彼に求められるままに留守番役を引き受けていた。

そんな生活を続けて3ヶ月、
千波に "あること" が起こり、彼女は自殺を決意した。

しかし決行する直前、千波は思いとどまる。
ところが、そこに現れた何者かがその状況を利用して
千波を殺害したのだという。

彼女自身は "犯人" の顔を目撃しておらず、
"真相" が分からないゆえに自らの死を納得できないまま、
現世に留まっているらしい。

千波は、渉に自分の死の真相を探ってくれるように頼むのだが・・・


渉は "幽霊" の証言をもとに、真相を探り始める。
当時の千波の上司・望月や同僚だった女性・武井、
マンションの管理人だった渡辺、
"事件" の捜査をした刑事・曽我部、
守山の助手だった倉岡・・・

渉は千波と関わった多くの人と会い、話を聞いて
真相解明に努めるものの、一向に犯人の目星はつかない。
しかしその代わりに、守山とその妻の間の
"ある事情" が明らかになってくる・・・


ミステリとしてはけっこう良くできているとは思う。
少ない "容疑者" の中で、最終的に明らかになる "犯人" には
それなりの意外性もある。

それ以外にも、手紙に秘めた "暗号" とか、
"被害者フェチ"(笑)なオタク刑事とか、
面白く読ませる要素も盛り込んである。


でも、上に書いたように本書の評価はあまり高くない。
その理由をいくつか挙げてみる。、

まず、"ヒロイン" である千波さんが今ひとつ好きになれない。
幼い時に両親が亡くなり、親戚の家に身を寄せて苦労したりとか
同情すべき点は多々あるにしろ、
ろくでもない男にばかり引っかかっている。
"事件" のことも自業自得と言ってしまっては可哀想だが
多分に彼女の "脇の甘さ" が招いたことじゃないかなぁ。
そのあたりが、彼女に対して素直に感情移入しにくいところ。

 まあ、頭の固いオジサンの言うことですから。
 若い人や女性からしたら、また違って見えるのかも知れないけど。

あと、「事実」が明らかになって行くにつれて
千波の姿が少しずつ見えてくる(それも足から上に向かってとか)
って展開は、やや品がないと思うんだがどうだろう。

見えてくるのは良いとして、
下半身しか(もちろん服を着てるが)見えない女性の身体を前にして
心穏やかでない渉くんというのもねえ・・・
面白がる人もいると思うけど、私は好きになれないなあ・・・

裏表紙の惹句には「奇跡の恋を描いたラブストーリー」ってあるけど
そもそもこの二人の関係は "恋" なのか?
読んでいてそのあたりもちょっと疑問。

 まあそれを言ったら、人間と幽霊が
 恋仲になれるのかという話になってしまうし、
 たぶん "恋" の定義も人それぞれなんだろうけど。

「ラブストーリー」と銘打つ以上は、主役カップルに対して
読者がどれだけ感情移入できるかが評価を左右すると思うんだけど
本作についてはそこが今ひとつ弱い気がしてる。


というわけで、ミステリとしては星3つ、
ラブストーリーとしては星2つ。
総合して星2つ半、ってことで。


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コメント 3

mojo

@ミックさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。
by mojo (2017-04-11 00:50) 

mojo

鉄腕原子さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。
by mojo (2017-04-11 00:51) 

mojo

31さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。
by mojo (2017-04-18 02:04) 

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