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猫柳十一弦の後悔 不可能犯罪定数 [読書・ミステリ]

猫柳十一弦の後悔 不可能犯罪定数 (講談社文庫)

猫柳十一弦の後悔 不可能犯罪定数 (講談社文庫)

  • 作者: 北山 猛邦
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2015/03/13
  • メディア: 文庫



評価:★★★

名探偵に憧れながらも、自らの才能に見切りをつけ、
探偵の助手になることを目指した、クンクンこと君橋君人くん。

彼が入学したのは大東亜帝国大学の "探偵助手学部"。
2年生からは "探偵号" を持つ指導教官のゼミに入るのだが、
志望のゼミに落ち、友人のマモルとともに配属されたのは
猫柳十一弦(ねこやなぎ・じゅういちげん)という
25歳の若さで指導教官を務める女性探偵のゼミだった。
(表紙イラスト中央の女性ですね。)

早速、名探偵と評判の高い雪ノ下樹(ゆきのした・いつき)のゼミとの
合同合宿が決まり、探偵2名と学生9名が
本土から船で20分ほどの孤島へ渡ることになった。

しかし、2泊3日の合宿初日の夜、2人の女学生が相次いで殺害される。
その後も、殺人を狙ったトラップが次々と発見され、
犯人は島にいる全員の殺害を意図しているものと思われた。
おりしも台風が接近しており、本土との交通手段が断たれてしまう。

猫柳とクンクンとマモルは、犯人の魔の手を逃れて生き延び、
真相に迫ることが出来るのだろうか・・・


読んでいてまず感じるのは探偵役の性格設定。
昔から "名探偵" というものは、たいていエキセントリックな人が多く
シャーロック・ホームズや御手洗潔とか、数え挙げていくと
両手で余るくらいはすぐに思い浮かぶのではないだろうか。

本書の探偵役の猫柳は、まず妙齢の美女であり、
さらに控えめでおとなしく、常識人でもある。
およそ自己主張というものもほとんどしない。
(確かに名探偵としては珍しい設定だろう。)
主人公・クンクンからすると、保護意欲をくすぐられるくらい
"か弱さ" も感じさせる。

 もっとも、か弱いだけでは探偵は務まらないわけで、
 ラストでは充分に有能なところも証明してみせるけれど。

そして猫柳の、探偵としての目標。
たいていの探偵は事件が起こってから活動を始めるのだが
彼女は、「次の殺人」を未然に防ぐことを最優先として行動する。
つまり、犯人の行動の先を読むことだ。

 本書でも、次々に起こる犯行から、共通するもの
 (いわゆるミッシング・リンク)を見つけ出し、
 そこから犯人の行動を予測しようとするのだが・・・

 もっともこのミッシング・リンク、読んでいて
 何となくは分かるような気もするが、
 カンペキに「これだ!」って見抜くことは至難の業だろなあ。

犯人が、わざわざ容疑者の限られる孤島を犯行場所に選んでいながら
ネットや電話といった通信インフラを断ち切らなかったりと
「お約束」を外しているところも、キチンと理屈づけされているし、
孤島を舞台としたクローズト・サークルものという、
いわば「よくある舞台設定」を使用しながら、
それだけには終わらない工夫が凝らされている。

ついでに書くと本書の犯人はとても勤勉で、
一生懸命にいろいろとトリックを弄している。
中には、成功確率がいささか怪しいものもあるような気もするが
まあそのへんは甘く見てあげないと、この手の話は楽しめないとも思う。

古い舞台に新しい趣向を盛り込んだ作品。
探偵役・猫柳嬢のキャラの魅力も相まって、楽しく読めた。


本書はシリーズになっていて、すでに第2作が出版されているらしい。
本書でなかなかいい雰囲気になった
猫柳嬢とクンクンの仲も、進展するのでしょうか。


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mojo

コースケさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。
by mojo (2015-04-06 00:44) 

mojo

31さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。
by mojo (2015-04-07 01:04) 

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