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葬式組曲 [読書・ミステリ]

葬式組曲 (双葉文庫)

葬式組曲 (双葉文庫)

  • 作者: 天祢 涼
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2015/01/15
  • メディア: 文庫



評価:★★☆

作者の名前、どこかで見たなあと思ったら
「キョウカンカク」の人だったんだね。
あそこまでぶっ飛んではいないけど、本作も一風変わった設定。

葬式を無駄と考える人が増え、遺体は火葬して終わり、
というのが普通になったパラレルワールドが舞台。
そんな中でS県だけは「葬儀は文化」とする人が多く
全国で唯一、葬式が行われる地域になっている。

そのS県で、死んだ父の後を継いだ若き女社長・北条紫苑と、
彼女が率いる北条葬儀社の面々が活躍する。

人が殺されるミステリではなく(もう死んでるんだし)、
葬式にからむさまざまな謎をめぐる、連作ミステリである。


「父の葬式」
 造り酒屋の杜氏が亡くなるが、遺言で喪主に指名されたのは
 跡継ぎの長男ではなく、7年も音信不通だった次男だった・・・
 この手の作品は "父親の隠された思い" ってのが明らかになって
 "ホロリ" とさせる人情もので終わる、ってのが定番。
 この作品もその範疇に入るとは思うんだが
 作者の "芸風" なのか "照れ" なのか分からないが
 途中の紆余曲折がありすぎて、なかなか物語が収まらない。
 この短編、第66回日本推理作家協会賞短編部門の
 候補作だったらしいけど、惜しくも受賞を逃したそうな。
 もっと素直にキメテれば、あるいは?

「祖母の葬式」
 亡くなった祖母の葬儀で、喪主である孫娘は、
 「棺を自作するから葬儀を延期しろ」と言い出す。
 すべては "絶対神ゼロの戒律" なのだという・・・

「息子の葬式」
 葬儀の廃止を訴える議員・御堂克樹の息子・潤が交通事故死した。
 主張通り、火葬のみで済まそうとする克樹だが、
 その夜、棺の中から潤の遺体が消えてしまう・・・

「妻の葬式」
 妻が自殺して2ヶ月。火葬にして送った夫だったが
 時折、妻の声が聞こえるようになってきた。
 義母の願いもあって、きちんと葬儀をすることにしたが
 幻聴はますます酷くなってゆく・・・

「葬儀屋の葬式」
 この短編によって、それまでの作品がすべてひとつながりになる、
 という連作短編集のシメらしい作品になっている。
 登場人物たちの会話につれて、全体に隠された真相が
 二転三転するという、かなりアクロバチックな展開だけど、
 その内容についてはかなり好みが分かれそう。


北条葬儀社の皆さん、キャラ立ちは充分かと思う。
葬儀屋稼業の大ベテラン・餡子邦路、
(変わった姓だが本人は本名だと主張してる)、
意外な過去を持つ寡黙な裏方・高屋敷英慈、
そして、初めて知る業界の慣習に戸惑う新入社員の新実直也。

物語はおおむね新実の視点で語られ、
餡子が謎解き、最後に高屋敷がひと働きして事態を収める、
というのがだいたいの役回り。

それに比べて、社長の紫苑さんの魅力が今ひとつ伝わってこない。
最終話はともかく、それまでの4話での出番が少ないのも原因か。

表紙イラストのように容姿に恵まれてるし、
母親との関係や、父の後を継ぐ決意など、
個々の要素では魅力がたくさんありそうなんだけどね・・・
なんだかもったいない。


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mojo

makimakiさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。
by mojo (2015-01-26 21:51) 

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