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キュート&ニート [読書・ミステリ]

キュート&ニート (文春文庫)

キュート&ニート (文春文庫)

  • 作者: 黒田 研二
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2014/07/10
  • メディア: 文庫



評価:★★★☆

高校時代の "ある出来事" をきっかけに、
"ひきこもり" になってしまった鋭一。

以来10年。28歳になってしまった鋭一の生活は、
バツイチの姉・真矢のニューヨーク出張によって激変する。
真矢の出張中、幼稚園児の姪・リサの面倒をみることになったのだ。

鋭一は日当をもらうことを条件に引き受け、
乗るのは中学の修学旅行以来という新幹線で、
リサの待つ名古屋へやってきた。
しかし、到着早々に迷子になり、姉のマンションが見つからない。
仕方なくリサの通う幼稚園を目指すのだが・・・


主人公の鋭一は、言ってみれば無気力で他者との接触が極端に苦手。
放っておけば一日中アニメのDVDを見てるような、
世間一般から見れば "立派な" ダメ人間である。
とめどなく広がる妄想癖だけは人一倍たくましい。

対するリサは、5歳児とは思えないほどのしっかり者で
簡単な料理なら作るし家事もけっこうこなすスーパー幼稚園児だ。
実は本書で探偵役を務めるのも彼女だったりする。

 帯の惹句には「姪(めい)探偵登場!」とある。
 上手だねえ。座布団一枚。

全6話からなる連作短編集で、いちおう
リサと鋭一が出くわす "日常の謎" 系ミステリ、である。
"いちおう" って書いたのは、本書で扱われる謎は
あまり謎っぽくない場合が多いから。
たいてい、二人が出くわした "ちょっと不可解" な出来事に対して
鋭一が一方的に妄想を暴走させ、騒ぎを大きくしていってしまう。

ミステリと言うよりは、鋭一の妄想が引き起こす
ドタバタ・コメディと言った方が実態に近いだろう。

しかし本書のメインはミステリではない。
リサを始めとする幼稚園児たちや、近所の人々、
園児たちの母親たち、幼稚園の先生など、リサの世話をするなら
否応なく顔を合わせなければならない人々がいる。
ひきこもりにとって一番苦手であろう、
"新たな人間関係の構築" を鋭一は迫られるのだ。

今までなら、そういう煩わしいものからひたすら逃避してきたが、
リサのために、鋭一は毎度毎度脂汗を流しながらも
必死に立ち向かって行かざるを得なくなってしまうわけだ。

そしていつの間にか、内に向かって縮こまっていた心が、
少しずつ外へ向かって開き始めていく。
そんな、鋭一の人間的成長が本書の読みどころだろう。

鋭一の密かなあこがれは、リサの幼稚園に勤務するサチ先生。
萌えアニメ<電撃ナイト★ミスティ>のヒロインにそっくりな
サチ先生に一目惚れしてしまった鋭一の煩悶ぶりもまた笑いを誘う。


鋭一の見事なコメディアンぶりに
ニヤニヤしたりクスクスしたりしながら、やがて迎える最終話。
物語は突如シリアスパートに突入する。

"ある事実" を知らされ、動転する鋭一だが、
真矢やリサも含めて、彼らの未来に
希望が感じられる感動的なエンディングを迎える。
この結末に涙腺が緩む人も多いと思う(私がそうだった)。


「カンニング少女」の時も書いたと思うんだが
また同じことを書きたい。

長編が無理なら短編でもいい。
彼らの数年後の話が読みたい。

真矢はどんな生活をしてるのか?
リサはどんな少女になってるのか?
そして、鋭一は見事 "引きこもり" を卒業しているか?
そしてそして、サチ先生とはどうなったのか?

黒田先生、お願いしますよ。


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mojo

31さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。
by mojo (2014-08-28 22:03) 

mojo

makimakiさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。
by mojo (2014-08-28 22:04) 

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