「分岐点」 [読書・ミステリ]
評価:★★
昭和20年、夏。
勤労動員された中学生たちが、本土決戦に備えて
陣地の構築にあたっている。
毎日のように鳴る空襲警報、
降り注ぐ焼夷弾、銃弾。
米軍上陸の恐怖。
そんな極限状態の中で
一人の少年が軍の下士官を殺した。
物語は、将来の見えない中学生たちを中心に
終戦直前の人々の様子を描きながら、
「ホワイダニット」「なぜ殺したのか」の
謎を保ったまま、進行する。
作者はミステリ作家としてデビューしたが、
ここ何作か、太平洋戦争を題材にして長編を書いている。
たしかにリアルな描写は戦争小説としてよくできていると思うが、
その分、ミステリ的要素が薄まっているような気がする。
私としては戦時中のような特殊な状況下を描いても、
あくまでミステリをメインに据えて書いてほしいのだけれど
この人は、戦争そのものを書くことに意を注いでいるようだ。
そのこと自体は何ら非難されることではないし、
意義のあることだとも思うけど、
私のような単純なミステリ馬鹿にはちょっと物足りないなあ。
(あくまでミステリとして、の話)
この作品も、「戦時下だからこそ生じる殺害動機」
を扱っているのだけれど、
具体的に何が原因だったのかは
どうも私にはよくわからなかった。
(ただ単に私の頭が悪いだけなのかもしれないが)
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