さらば愛しき魔法使い [読書・ミステリ]
評価:★★★
八王子警察署の刑事・小山田聡介の家にいる住み込みのメイド・マリィは、実は魔法少女。聡介が取り組む事件に毎回介入するが、魔法で犯人が分かっても逮捕はできない。かくして聡介の奮闘が始まる・・・というシリーズの3巻目。
熟女好きのヘタレ刑事の主人公・聡介、彼の上司・椿木綾乃警部はアラフォーで、事件の関係者の中から金持ちのイケメンを見つけては婚活しようとする。キャラ立ちがバッチリなレギュラー陣も健在。
魔法というある意味 ”掟破り” の要素を取り入れてるんだけど、謎解き部分は至って正統的。最後には、聡介の推理が犯人のミスをついて引導を渡す。
このシリーズは、犯人による殺害シーンから始まる倒叙ものなのだけど、最後に聡介が犯人に引導を渡すシーンは『刑事コロンボ』ばりによくできてる。
「魔法使いと偽りのドライブ」
弁護士・岡田英明には、そっくりな異父弟・高野英夫がいた。英明の父が愛人に密かに産ませた子で、彼の存在を知る者はいない。
英明は社長夫人・森加代子と英夫に長野県へドライブに行かせて自分のアリバイを作り、その間に加代子の夫・森敬三を殺害するが・・・
序盤で、加代子と英夫のポルシェと、聡介とマリィが乗る中古のカローラとのカーチェイス(笑)がある。車の対比が笑いを誘うのだけど、これも伏線の一部になってるのは流石。
「魔法使いと聖夜の贈り物」
人気の映画コメンテーター・西脇雅也は、売れない女優・中澤美奈子との愛人関係を精算すべく彼女を殺害する。美奈子が持っていたカフェのレシートから、アリバイ工作を思いつくのだが・・・
決め手となるのはある事実なのだけど、これは現代だからこそ成立するもの。まあ、これから先はこれが普通の光景になるのだろうなぁ・・・
「魔法使いと血文字の罠」
経営するバーの資金繰りに困った高森敦史は、保険金目当てに叔父・健作を殺害する。しかし瀕死の叔父は血文字のダイイング・メッセージを残していた。
現場を去る前にそれを見つけた敦史は、これを使って他者の犯行に見せかけることを思いつくが・・・
これも数年前には使えなかったネタだね。ミステリ作家というものは貪欲で、常にミステリに使えるものを探している、ってことか。
「魔法使いとバリスタの企み」
カフェを経営する有名バリスタ・波佐間健二は、妻の叔父が重役を務める飲料メーカーからコラボ商品の缶コーヒーを出すことになった。
そのために店員で愛人の愛沢仁美の存在が邪魔になり、殺害してしまう。健二は店の常連客・橋口誠に犯行をなすりつけることを思い立つが・・・
缶コーヒーと○○。云われてみればよく見た取り合わせではあるが、最近はとんと見かけなくなったなぁ・・・。こういうものもネタになるんだねぇ。
さて、本書の最後で、マリィは聡介の前から姿を消してしまう。八王子近辺で魔法少女の目撃情報が出ていることがオカルト系の雑誌に取り上げられたためらしいのだが・・・。
次巻でシリーズ完結らしいので、聡介とマリィの関係がどうなるのか注目だ。
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