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Guilty 殺意の連鎖 ミステリー傑作選 [読書・ミステリ]

Guilty 殺意の連鎖 ミステリー傑作選 (講談社文庫)

Guilty 殺意の連鎖 ミステリー傑作選 (講談社文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/04/15
  • メディア: 文庫



評価:★★★

2010年に発表されたミステリ短編から選ばれた12編を
2分冊で文庫化した、その前半分。


「芹葉(せりば)大学の夢と殺人」(辻村深月)
 のっけから恐縮だが、私にはこの作品の良さが分かりません。
 若さは "バカさ" だというのは百も承知しているし、
 私自身もまた、かつては "大バカ" だったことは認めるが、
 それをさっ引いてもなお
 ろくに夢を追うことすらできない幼稚でおバカな男と、
 分かっていながら別れられずにずるずるつき合うおバカな女の話を
 70ページにわたって延々と読まされるのは、かなり辛かった。
 辻村さんごめんなさい。

「アポロンのナイフ」(有栖川有栖)
 連続通り魔殺人の犯人として指名手配されたのは、17歳の男子高校生。
 当然ながら顔も名前も公表できない。いつしかネットやマスコミからは
 <アポロン>と呼称されるようになるが、その行方は杳として知れない。
 折しも、有栖の住む大阪で二人の高校生が死体で発見される。
 犯人は<アポロン>なのか・・・
 安定の有栖川有栖。
 "犯人" の過去を考えればあながち責められない気もするが
 成人年齢が18歳に引き下げられると、
 少年犯罪の報道のあり方も変わってくるのだろうなあ・・・

「天の狗(いぬ)」(鳥飼否宇)
 立山連峰の一角にそびえる<天狗の高鼻>は、
 高さ90mの絶壁に囲まれた円柱状の岩。
 そこに登頂を果たした大学生が首切り死体で発見される。
 登攀中から衆人環視の中にあった現場はさながら天空の密室。
 観察者・鳶山とカメラマン・夏海のコンビが不可能犯罪に挑む。
 私は高いところが苦手なんだが、明かされる真相と犯行のトリックは
 実行するところを想像しただけで気が遠くなりそうなほど恐怖だ。

「死ぬのは誰か」(早見江堂)
 ある大学の修士2年に在籍する八代が事故死した。
 彼の残したブログの記事から、死の直前に八代は
 研究室の誰かに恨みを抱き、ある毒物を飲ませたことが判明する。
 その毒物は無味無臭だが、100%の率で肝臓ガンを発症させる。
 摂取後48時間以内に解毒剤を服用すれば助かるのだが・・・
 誰が恨みを買っていたのかをつきとめるべく、
 研究室のメンバーによる議論が延々と続く。
 ミステリと言うよりはブラックなコメディ。
 いやはやこんな底意地の悪い話を考えつくとは。

「棺桶」(平山瑞穂)
 通学路の傍らには "コフィン" と呼ばれる宿泊用カプセルが並び、
 初老の者まで生徒として通う中学校は、
 いつ卒業できるとも知れない "無期刑の監獄"。
 そんな中、上級生の不良からパシリを命じられた主人公は
 出向いた先の飯場で教師の死体を発見してしまう・・・
 異様な世界で不条理な出来事が延々と続く。
 「芹葉大学-」もそうだったが、読み続けるのが辛い。
 この作品も私には良さが分からない。
 平山さんごめんなさい。

「満願」(米澤穂信)
 司法試験を目指す苦学生・藤井が下宿したのは畳屋の2階。
 しかし鵜川重治・妙子の夫婦が営む畳屋は左前で
 重治はしばしば酒におぼれ、仕事の手を抜くようになっていく。
 かいがいしく面倒を見てくれる妙子にほのかな憧れを抱きつつ、
 藤井は司法試験を突破、晴れて弁護士となった。
 その5年後、妙子が金融業者・矢場を刺殺した容疑で逮捕される。
 かつての恩に報いるため、妙子の弁護に立つ藤井だったが・・・
 「連城三紀彦の<花葬>シリーズ」を彷彿とさせる雰囲気は
 「このミステリーがすごい!2015」での作者のインタビューや
 本書の解説でも触れられている。
 なんとなくセピア色を感じさせる時代風景や
 ヒロインのイメージが終盤で変転するところなど
 共通点も多いけど、微妙に異なるところもある。
 <花葬>シリーズが "底知れぬ情念" の世界なら
 本書で描かれているのは "計算された狂気" だろう。
 まあ私がどう解釈しようとそんなことは些細なことで
 本作が本書でピカイチなのは間違いないんだが。


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