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法医昆虫学捜査官 [読書・ミステリ]

法医昆虫学捜査官 (講談社文庫)

法医昆虫学捜査官 (講談社文庫)

  • 作者: 川瀬 七緒
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/08/12
  • メディア: 文庫



評価:★★★☆

「よろずのことに気をつけよ」で乱歩賞を獲った作者の受賞第一作。

「法医昆虫学」とは初めて聞くが、巻末の解説によると
遺体に取りついた昆虫の種類や成長具合を調べることによって
犯行場所や殺害時刻を割り出すことができるのだという。
アメリカや中国ではデータの蓄積もかなりあって
実用化レベルに達しているらしい。


近隣での小火騒ぎが続く中、アパートが全焼し、
住人だった心理カウンセラー・乙部みちるが焼死体で見つかった。
放火殺人を疑う警察は遺体を司法解剖するが、異様な事実が明らかに。
炭化した遺体の腹部に大量のハエの幼虫(つまりウジ)が
団塊状になって棲息していたのだ。

理解の範疇を超えてしまった事態に遭遇し、
警察は法医学昆虫学者・赤堀涼子に捜査協力を依頼する・・・

とは言っても、警察組織は旧態依然としている。
警察関係者がこぞって涼子のことを迷惑がる中、
彼女の研究に理解を示したのは二人の刑事、
岩楯と鰐川だけだった。

物語は涼子の探求と、刑事二人の捜査を両輪に進む。
お互いの情報を交換していくうちに、
三人はみちるの死に隠された意外な秘密に近づいていく・・・


登場するキャラクターがとにかくいい。

昆虫を目の前にすると奇行に走って周囲をドン引きさせる涼子。
堂々たるリケジョぶりで、36歳なのに童顔で20代に見え、
けっこう美人だけどちょっと惚れっぽいのが玉にきず?

岩楯は典型的な "刑事ものの主人公" って感じなんだけど
涼子のこともきちんと認めるように思考に柔軟性もある。
鰐川はなんでも記録するメモ魔で、
虫絡みで涼子から "いじられ" て涙目になる様子はちょっと可哀想だが
刑事としてはちゃんと仕事が出来て有能。

主役三人以外の登場人物もみなキャラが立ってるのがスゴイ。

特に、被害者のみちると交際していた
"女を食い物にする" 詐欺師・國居(くにい)の
人間のクズっぷりがずば抜けてる。
読んでて本気で腹が立ってくるんだからホントに作者は上手い。

みちる自身も物語が進むにつれて意外な面が明らかになっていき、
物語序盤のイメージとは大きく異なる素顔を見せる。

デビュー作と同じく、本書も "普通の" ミステリではない。
「誰が殺した」という要素よりも、
「何が起こった」「なぜ起こった」という部分にウエイトを置いたつくり。

それでも、昆虫絡みの魅力的な謎が提示されていて
それが解明されてゆくにつれてすこしずつ犯人に近づいていく展開は
充分に興味をそそるものではある。

ただまあ、私の好みのミステリの形ではないのは確か。
だから途中までの評価は星3つだったのだけど、
終盤で涼子が見せる命がけの大活躍が
とても素晴らしかったので星1/2個増量。


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コメント 3

mojo

31さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。
by mojo (2014-09-29 19:03) 

mojo

げいなうさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。
by mojo (2014-09-29 19:03) 

mojo

makimakiさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。
by mojo (2014-09-29 19:04) 

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