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梟の一族 [読書・冒険/サスペンス]


梟の一族 (集英社文庫)

梟の一族 (集英社文庫)

  • 作者: 福田和代
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2022/04/07

評価:★★★


 常人を超えた身体能力をもつ梟(ふくろう)の一族。彼らがひっそりと暮らす山中の集落が何者かに襲撃され、住人はいずこかへ連れ去られてしまう。唯一、難を逃れた少女・榊史奈(さかき・ふみな)は一族の奪還と事態の真相を究明するべく、”敵” の正体を探っていく・・・


 〈梟〉と呼ばれる民がいた。常人を超える身体能力に加え、一切の睡眠を必要としない特殊な体質をもつ彼らは、太古の時代からさまざまな勢力に仕え、歴史の中で大きな役割を果たしてきた。いわゆる "忍者" にも、多くの人材を供給してきたらしい。

 彼らは滋賀県の山中の集落に暮らしてきたが、現代になってからは、多くの者が "一般人" との婚姻を機に集落を去り、今では10名あまりが暮らすだけ。
 主人公・榊史奈は16歳。集落で最後の十代の若者だ。〈梟〉の〈ツキ〉(長)を務める祖母とともに暮らしている。

 ある夜、集落を謎の一団が襲撃、1人が殺され、残りの者はすべてどこかへ連れ去られてしまう。

 祖母の機転で唯一難を逃れた史奈の前に現れたのは、長栖(ながす)諒一・容子の兄妹。2人は、12年前に一家そろって集落を出ていた。長栖家も襲われ、父親(一般人)は負傷、母親(〈梟〉出身)は拉致されたのだという。

 史奈は2人とともに東京へ向かい、連れ去られた一族の奪還を目指して行動を始めることになる・・・

 このあと、史奈には様々なイベントが起こる。
 父親との再会、失踪した母親の探索、そして集落を襲った集団の背後には「郷原(さとはら)感染症研究所」という組織があることを知る。
 史奈は一族奪還のために研究所に潜入することになるのだが、そこでは意外な展開が待っていた・・・


 どうも私のような昭和脳(笑)の人間は、こういう設定をみるとどうしても往年の少年マンガや、平井和正のハードアクションSFを連想してしまう。
 〈梟〉の一族をさらったのは、その秘密を分析し、"眠らない兵士" を創り出そうとする陰謀があるのではないか、とか。襲ってきた集団も、自衛隊や在日米軍の特殊部隊、あるいは外国(中・ロ・北朝鮮)の諜報部隊じゃないか、とか(おいおい)。
 戦闘シーンでも、史奈さんは最新科学機器に身を固めた突撃兵をも身一つで次々に無力化していってしまうほど超絶な技を見せるんじゃないか(えーっ)とか、いろいろ妄想が暴走してしまう(笑)。

 しかし残念ながら、そんな派手な展開にはならず、至って現実的なルートに乗ってストーリーは進行する。戦闘、というか格闘シーンもなくはないが比較的穏当なものだ。

 リアリティという面では順当なのだろうけど、私からすればちょいと物足りないんだなぁ。
 まあ、昭和脳のわがままな老害ジジイが、勝手な妄想を抱いて文句を垂れてるだけです。作者さんゴメンナサイ。
 うーん、「昭和は遠くになりにけり」ということですね(おいおい)。


 〈梟〉の一族がもつ力の源泉は何なのか、というのもテーマの一つ。さらには、超常の力と引き換えの "宿命" みたいなものも描かれ、サイエンス・ミステリ的な側面も持つ。

 ラストでは、物語にいちおうの幕引きがなされるのだけど、その気になれば続編が作れなくもない形。
 私としては、もうちょっとアクション増し増しの続きが読みたいんだけど、無理ですかねぇ・・・



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