7デイズ・ミッション 日韓特命捜査 [読書・ミステリ]
評価:★★★
隅田川で見つかった死体は、韓国の麻薬王ドン・インチェルだった。
韓国警察は、エリート女刑事ソン・ジヒョンを日本へ派遣する。インチェルの死の真相、そして日本での目的を探るためだ。
彼女はソウル大学を首席で卒業、射撃はオリンピック強化選手に指名されるほどの腕前、テコンドー四段。大統領警護チームにも在籍していたという ”完璧超人” だ。そして彼女のモチベーションを支えているのは彼女の兄の存在。彼はインチェルの組織に殺されていたのだ。
彼女を出迎えたのは警視庁の新人刑事・後藤陽平。コリアンマフィア対象の海外麻薬取締課八係の所属だ。
しかし彼に与えられた命令は「韓国の捜査官には何もさせるな」だった。
捜査に首を突っ込まれて邪魔されることを嫌う上層部は、彼女の滞在期間に歓迎行事を詰め込み、残りは東京観光をさせてそのまま帰ってもらおうという目論見だったのだ。
しかし、捜査を行う気が満々のジヒョンがそれで引き下がるはずもない。顔を合わせたときから二人は衝突を繰り返し、雰囲気はどんどん険悪になっていく。
ジヒョンの祖父は、韓国が日本に併合されていた時期に日本人に殺されていた。その恨みは今でも彼女の中に厳然と存在していた。陽平に対して日本で見るもの聞くものすべてを扱き下ろし、韓国の優位性を口にするジヒョン。
当然ながら陽平も反発するわけで、ついには堪忍袋の緒が切れて・・・となるのだがそれで終わっては話にならない。ある時点を境に二人は協力関係を築き、インチェル殺害の真相に手を携えて迫っていくことになる。
さて、そんなに拗れきった二人が、どんなきっかけで ”和解” するのか。それは実に意外で単純なことだった。
「そんなことで仲良くなれるんかい?」とも思うのだけど、20代の若者同士ならアリなのかなぁ・・・このあたりはなんとも私には判断できないが・・・
国家同士の仲は難しくても、個人同士の仲はまた別だ、というのはわかるつもりだけど。
まあエンタメとして成立させるには、このあたりで手を打たないと収拾がつかなくなるからねぇ・・・
序盤から中盤にかけては、(日本人から見れば) ”実に嫌な女” として描かれてきたジヒョンだけど、ラストシーンでは真逆の印象を振りまいて去って行く。
このあたりは作者の見事な筆の冴え、なのだろう。