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サイバー・ショーグン・レボリューション [読書・SF]

サイバー・ショーグン・レボリューション 上 (ハヤカワ文庫SF)

サイバー・ショーグン・レボリューション 上 (ハヤカワ文庫SF)

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2020/09/17
  • メディア: 文庫
サイバー・ショーグン・レボリューション 下 (ハヤカワ文庫SF)

サイバー・ショーグン・レボリューション 下 (ハヤカワ文庫SF)

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2020/09/17
  • メディア: 文庫
評価:★★★★☆

本書は第二次世界大戦で日独の枢軸国側が勝利した世界を舞台とした
三部作の第3巻にあたる。

枢軸国側は連合軍側よりも先に原子爆弾を完成、
先制使用したことによりアメリカは降伏する。時に1948年7月4日。

これによりアメリカは、ナチス・ドイツが支配する東半分と
大日本帝国が支配する西半分に分割される。その西半分は
『ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン(USJ:日本合衆国)』
と呼ばれ、これが第1作のタイトルとなっている。

この世界には、『ガンダム』のような巨大ロボットが存在し、
それらは ”メカ” と呼ばれていて軍の制式兵器となっている。
第2作『メカ・サムライ・エンパイア(MSE)』は
メカ・パイロットを目指す少年の成長を描いていた。

第1作が1988年、第2作が1990年代半ばに設定されているのに対し、
本書は一気に時間が飛んで2019年に始まる。

 この3部作は、ほとんどストーリー上のつながりはないのだけど、
 本作に関して言えば第1作『USJ』を読んでおいた方が、
 より楽しめるかとは思う。

大戦終了後のこの世界は、”こちらの世界” と同様に
戦勝国である日独が、互いを仮想敵にした ”冷戦状態” にある。

 前作『MSE』のラストでは「これで一気に戦争状態へ突入か」
 とも思ったんだけど、結局戦火の拡大は起こらなかったみたいで、
 本書の2019年でも相変わらず睨み合いの状態が続いている。

主人公・森川励子(れいこ)は軍のメカ・パイロット。
秘密組織〈戦争の息子たち〉のメンバーの1人だ。
組織の目的は、ナチスドイツと癒着したUSJ現総督・多村を倒し、
真の愛国者による新政権を樹立すること。

励子たちによるクーデターは、”伝説のナチスキラー” の異名を持つ
正体不明の暗殺者・ブラディマリーの参加もあって成功し、
大日本帝国首相は組織の指導者である山岡将軍を新総督に任じた。

前総督の暗殺から100日目、〈戦争の犬たち〉は記念祝賀会を行うが
そこに現れたブラディマリーは、なぜか集会のメンバーを殺し始める。

ブラディマリーの殺戮から辛くも生き残った励子は、
高校時代の同級生・若菜ビショップと再会する。
彼は特別高等警察(特高)課員となっていた。

2人に下った新たな命令は、ナチスドイツが支配する ”東側” から
USJへ密輸されているメカ部品の調査だった・・・

物語は、励子とビショップのバディものとして進んでいく。
このあたり、第1作『USJ』での陸軍大尉・石村紅功(べにこ)と
特高課員・槻野昭子のコンビを彷彿させる。

その昭子女史は特高の警視監として登場し、
励子とビショップを指揮する立場になっている。
初登場した第1作から31年も経っているからねぇ。
彼女もしっかり出世してるんだ(笑)。

ちなみに『USJ』で初登場以来、ぶっ飛んだキャラで大活躍した
天才パイロット・久地楽(くじら)も、
前作『MSE』で主人公の同級生だった橘範子も再登場する。

久地楽は変名で出てくるんだけど、特徴的な言動ですぐわかる(笑)。
優等生でエースパイロットだった範子さんの姓が変わってるのは
結婚したのか、どこかに養子にでも入ったのか(まさかね)。
もうアラフォーのはずだが、しっかり少佐に昇進してるのは流石。

物語の終盤は、ブラディマリーの正体とその目的、
そしてUSJを根底から覆そうとする陰謀を巡って、
『MSE』に負けないくらいメカ・バトル満載のシーンが連続する。
第1作と第2作をうまく ”いいとこどり” したストーリーだろう。

ラストでは、アメリカ西半分のUSJと、ドイツが支配する東半分の
双方で大きな変動が起こりそうな予兆が描かれる。

作中から読み取る限り、この世界が辿る(であろう)
いくつかの未来が想像できる。

再び大きな戦争が始まるのかも知れないし、
案外簡単に鎮圧されてしまって現状維持に落ち着くのかも知れないし。
日独の軍政を退け、東西に分割されたアメリカ合衆国が
1つになって再び独立を勝ち取るという、という可能性もありえそう。
果たして歴史は ”修正” されるのか?

とはいっても、作者はこの続きはもう書かないといってるらしいので
この後の展開は読者の想像に任されるということでしょう。

とても面白いシリーズだったので
もうちょっとこの世界で遊ばせてほしかったなあ。
ちょっと残念。


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