七月に流れる花 / 八月は冷たい城 [読書・その他]
『七月に流れる花』
主人公は大木ミチルという少女。
中学生の彼女は、6月という中途半端な時期に
夏流(かなし)という田舎の町へ転校してきた。
1学期の終業式を迎えたころから彼女の周囲に謎の人物が出没を始める。
それは「みどりおとこ」と呼ばれる、全身が緑色の人間。
「おとこ」と言われているが男女の性別もよく分からない。
そのみどりおとこから封筒を渡されるミチル。
それは、夏流城(かなしろ)と呼ばれる場所で行われる
”林間学校” への招待状だった。
「夏のお城には、呼ばれたら必ず行かなくてはならない」
手紙で指定された日に、夏流城へやってきたミチルは
自分以外にも4人の少女が呼ばれていたことを知る。
その1人は、ミチルのクラスメイトの佐藤蘇芳(すおう)だった。
5人の少女たちによる、古城での奇妙な共同生活が始まるが・・・
『八月は冷たい城』
主人公は嘉納光彦(かのう・てるひこ)という少年。
本書は、『七月に流れる花』と時間軸を同じくする。
つまり、同時期に少女たちと少年たちが古城に招かれており、
光彦は集められた4人の少年たちのひとりである。
とは言っても、両者が生活するスペースは分けられているので
お互いにその存在を知らないのだが、
光彦と蘇芳はいとこ同士で、互いのグループの存在を知っていた。
光彦たち男子の側にも、いろいろ事件が突発するのだが、
こちらはかなり悪意を感じるような凶悪なことも起こる。
そんな中、光彦と蘇芳は密かに ”ある方法” で
連絡を取り合って情報交換を続け、事態の真相に迫っていく・・・
最初はファンタジーかと思って読んでいたのだが、
『七月』の終盤で夏流という町が成立した経緯、
子どもたちが古城に呼ばれてきた理由が明かされ、
さらに『八月』では、「みどりおとこ」の衝撃的な正体が示される。
これがあまりに衝撃的で、途中まで★3つにしようかと
思ってたんだけど、1つ減点しちゃいました。
ごめんなさい。この手のネタは苦手なんです。
あまり詳しく書くとネタバレになるのでちょっとだけ。
本作はファンタジーではない(ファンタジー要素はあるけど)。
現在の我々と地続きな世界を描いている。
そういう意味ではSFに分類したほうがいいかもしれない。
さらに『八月』ではミステリ要素もある。
もともと作者は複数のジャンルにまたがった作品を書く人なのだが。
本書の初刊は2016年なんだけど、
2021年の今になって読むと、また違う感想を抱くのではないかな。