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バチカン奇跡調査官 天使と悪魔のゲーム [読書・その他]

バチカン奇跡調査官    天使と悪魔のゲーム (角川ホラー文庫)

バチカン奇跡調査官 天使と悪魔のゲーム (角川ホラー文庫)

  • 作者: 藤木 稟
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2012/12/25
  • メディア: 文庫

評価:★★★

カソリックの総本山、バチカン市国。
世界中から寄せられてくる "奇跡" に対して
その真偽を判別する調査機関『聖徒の座』。

そこに所属する「奇跡調査官」である
天才科学者の平賀と、その相棒で
古文書の読解と暗号解読の達人・ロベルト。
この神父二人の活躍を描くシリーズの第7作。

今回は、番外編4作を集めた短編集になっている。


「陽だまりのある所」
 過酷な生活を送ったために精神を病み、
 自分の名前以外の記憶を失った少年・ロベルト。
 児童施設へ収容され、併設された幼年学校へ通うようになるが
 成績こそ首席であるものの、周囲の者と一切打ち解けようとせず
 問題児のレッテルを貼られてしまう。
 しかし施設の責任者・ランバルド司祭のはからいで
 名門進学校であるサン・ベルナルド寄宿舎学校へ入学する。
 そこでも相変わらず孤独に過ごすロベルトだが、
 図書委員を務める少年・ヨゼフとの出会いが、
 彼を少しずつ変えていく。
 しかし、ヨゼフにはある秘密があった・・・
 ホラーでもミステリでもないが
 切なく哀しく、そして美しい話だ。

「天使と悪魔のゲーム」
 ローレン・ディルーカは、わずか15歳にして
 ローマ大学の大学院に籍を置く天才。
 物理・化学・生物・工学の博士号を持ち、
 数々の特許によって巨万の富をも得ていた。
 しかし、遺伝子の突然変異率を飛躍的に高めて
 その個体を死に至らしめるウイルスを開発したことにより、
 警察に逮捕、そして精神鑑定を受けていた。
 鑑定医の結論は、彼をバチカンへ預け、宗教的矯正を与えること。
 その頃、平賀は奇跡調査官として最初の仕事を終えたところだった。
 ローレンと引き合わされた平賀は、
 彼の心を救うべく、あるゲームでの対戦を申し出る。
 そしてそのゲームの最中、平賀は
 自分がかつて耳にした不思議な話を始めるのだが・・・
 エキセントリックなローレンに対して
 飄々と接する平賀が、とても彼らしくていい。
 この二人の天才の掛け合いは面白いのだけど
 平賀の語る作中作はいかにもホラーな話で、
 とっても後味が悪いんで私は好きになれないんだなあ・・・

「サウロ、闇を払う手」
 平賀とロベルトの上司にして、
 伝説的悪魔祓い師(エクソシスト)としても高名なサウロ大司教。
 イタリアの小さな町に生まれ、貧しい家庭に育ったサウロは、
 町の教会の司祭・ザカリアに引き取られ、彼の養子となった。
 養父ザカリアに馴染めないものを感じつつ、
 やがてサウロは成長し、神父見習いとなる。
 そして彼はザカリアの持つもう一つの仕事、
 "悪魔祓い" の現場に初めて立ち会うことになるが・・・
 文字通り命をかけて悪魔との対決に臨む師の姿、
 そしてそれを受け継いだサウロに、ある "試練" が降りかかる。
 今でこそ英雄扱いのサウロ大司教だが、
 彼も人並みに、いろいろと煩悩にまみれた青春時代を
 送っていたんだなあ・・・というのが分かる話(笑)。
 人間は、若いうちに苦労をしなければ一人前にはなれないのだねえ。

「ファンダンゴ」
 父を知らずに育ったジョナサンは、
 幼少期から容姿端麗にして成績優秀、そしてスポーツ万能。
 それに加えて母親はかなりの資産家だったので、当然のように
 我が儘で気まぐれで世の中を舐めきった青年へと成長した。
 しかし、ジョナサンの人生のあちこちで現れて、
 彼の邪魔をする謎の人物がいた。
 ジョナサンと全く同じ顔で、名も同じ「ジョナサン」という男。
 彼はジョナサンのドッペルゲンガーなのか?
 やがて明らかになるその正体は・・・
 でも、裏表紙の惹句でネタバレしてるんだよねえ。


本作は短編集かつ外伝ということもあり、
「陽だまりのある所」以外の3篇はかなりホラー風味が濃い。
まあ、「ホラー文庫」なんだから当たり前とも言えるが。
そして、それらに登場する超常現象も投げっぱなしで、
シリーズの持ち味であるところの
(納得できるかどうかは別として)独自の科学的解釈もなし。
そのへんはちょっと不満なんだけど、まあ短編なんだから我慢(笑)。

もう一つの読みどころは、シリーズキャラクターの
ロベルト、平賀、ローレン、サウロの過去の話が描かれること。
どれもなかなか興味深いけど、やっぱり本書の中では
「サウロ大司教・若き日の大冒険」がオススメかな。

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