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力士探偵シャーロック山 [読書・ミステリ]


力士探偵シャーロック山 (実業之日本社文庫)

力士探偵シャーロック山 (実業之日本社文庫)

  • 作者: 田中 啓文
  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2018/10/04
  • メディア: 文庫

評価:★★★


 小結・斜麓山(しゃろくやま)は、銅煎(どういる)部屋の唯一の三役力士だが、ミステリマニアで稽古嫌い。シャーロック・ホームズにハマって「自分は探偵だ」と言い出す。付け人の輪斗山(わとさん)は、そんな彼の奇行に悩まされる日々。しかしなぜか斜麓山の周囲では、怪事件が頻発するのだった・・・
 短編4作を収めたユーモア・ミステリ連作集。


「第一話 薄毛連盟」
 薄毛のために髷(まげ)が結えなくなって力士を引退した入村(いりむら)は、神田にある実家の神社を継いで宮司となった。しかし小さい神社で経営は苦しく、入村本人も何か副業をと考えていた。
 そんなとき、"薄毛連盟" なる組織から声がかかった。「薄毛の人の力になりたい」と考えた創立者が、薄毛の人に高給の仕事を世話しようというものだった。入村に与えられたのは小田原の薄毛連盟関東支部の電話番。月曜から金曜まで、毎日朝7時から夜9時までで週に30万円もらえるという。ただその代わり、月曜から金曜までは小田原に泊まり込まなければならない・・・
 まるっきり「赤毛連盟」で、裏の事情も似たようなものだが、"力士探偵" のタイトル通り、斜麓山の "力技" による解決が見ものだ。


「第二話 まだらのまわし」
 グアム島出身の具編海(ぐあむうみ)は、ついに優勝を果たして大関へ昇進、四股名を鬼天狗(おにてんぐ)とした。そして今度の巡業では、部屋に伝わる豪華な化粧まわしを着けることになったのだが、それは "呪いの化粧まわし" と呼ばれる曰く付きのものだった。
 30年前、そのまわしをつけていた先代鬼天狗は連戦連勝で大人気力士だった。しかし優勝争いをしていた九州場所13日目、宿泊先のホテルで頭から血を流しているところを発見され、「まだらのまわし」と言って息絶えたのだという。
 そして今回の二代目鬼天狗もまた、巡業での宿泊先のホテルで、胸にはさみが刺さった瀕死の状態で発見され、「ま・・だら・・のまわ・・し」と言い残して病院へ搬送されていった・・・。
 犯人指摘のロジックはしっかりしているのだが、ダイイングメッセージの真相には(なんとなく予感はしてたんだが)脱力してしまう。


「第三話 バスターミナル池の犬」
 両国のバスターミナルに面した犬神(いぬがみ)池。そこにUMA(未確認動物)が出没するらしい。目撃者は、人面魚ならぬ "犬面魚" と呼んでいるらしい。斜麓山は輪斗山とともに調べに行くが・・・
 今回は、斜麓山がホームズ・ファンになった経緯が語られ、同時に楯髪(たてがみ)部屋の幻日漢(げんじつかん)との因縁も明らかになる。そして、大相撲ファンの女性・芽阿利(めあり)も登場。


「第四話 最後の事件」
 夏場所では上位陣の休場が相次ぎ、終盤では斜麓山と幻日漢が一敗で並走する展開に。斜麓山の周囲では、なぜか不穏な事故が相次ぐようになり、さらに幻日漢の対戦相手が謎の休場を続けてしまう。幻日漢側の嫌がらせと不正工作は明らかと思われた。
 土俵に個人的な遺恨を持ち込むことを嫌う斜麓山は、角界からの引退を賭けて幻日漢に決闘を申し込むことに。場所は近郊のM山にある滝だという・・・

 「第三話」「第四話」は、ストーリー的には前後編になっている。全体としては、ミステリとしてはきっちりしてるんだけど、あちこちにおやじギャグと云うかダジャレが頻出するのは、いかにもこの作者らしい。でもまあ、ここまで徹底すると、いっそ清々しいかも知れない(えーっ)。
 ホームズもののパロディとしてもよくできてる。あまり深く考えなければ(笑)楽しい読書の時間を過ごせるだろう(おいおい)。



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