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不老虫 [読書・SF]


不老虫 (光文社文庫 い 35-18)

不老虫 (光文社文庫 い 35-18)

  • 作者: 石持浅海
  • 出版社/メーカー: 光文社文庫
  • 発売日: 2022/10/12
  • メディア: 文庫

評価:★★★


 東南アジア奥地に棲息しており、現地では "不老虫" と呼ばれている未知の寄生虫。それが日本に持ち込まれた。不老虫は3人の女性に寄生した状態で秋葉原近辺に潜伏しているという。
 農林水産省の官僚・酒井恭平は、アメリカからやってきた専門家・ジャカランダとともに調査に向かうことになるが。


 農林水産省・家畜防疫対策室の若手官僚・酒井恭平は、上司から寄生虫サトゥルヌス・リーチが日本に入ってくるとの情報を知らされる。そしてその事態に対応するために、アメリカからやってくる "専門家" のサポートを命じられる。

 しかし、実際に "専門家" に会った恭平は驚く。20歳ほどの女子大生だったのだ。もっとも大学はさすがにスタンフォード大学だが(笑)。
 彼女の名はジャカランダ・マクアダムス。東アジア系の容貌をもつ美女だ。彼女の追う寄生虫サトゥルヌス・リーチは、別名 "不老虫"。ある商社が日本国内に持ち込んだとの密告があったのだという。
 彼女が連れてきたスナドリネコの "ビオ" は、不老虫を感知する能力があるのだという。恭平はジャカランダ、ビオとともに秋葉原駅近辺を巡回して不老虫を探すのだが・・・


 まず、不老虫の設定が凄まじい。
 東南アジアの奥地に棲息しており、哺乳類の子宮に寄生するのだという。体外に引っ張り出されても自在に動き回り、近くにいる哺乳類のメスを感知して体内への侵入を図る。一方、オスを感知すると一転して襲いかかるという凶暴さ。
 切り刻んでも死なず、息の根を止めるには炎で焼き殺すしかないという驚異の生命力。寄生虫というよりほとんど異星生物、エイリアンという印象だ。
 これが人口密集地の東京で解き放たれたら、一気に日本中に広まってしまう。これはたしかに怖い。

 ジャカランダとビオが不老虫対策に呼ばれた理由は、ストーリーの進行とともに明らかになっていく。
 そして、このとてつもなく危険な寄生虫を持ち込んだのは、日本の商社と製薬会社の混成チーム。なぜそんなことをしたのかは、こちらも中盤で明らかにされるのだが、こちらも社運を賭けているので一歩も引けない状況だ。

 寄生虫蔓延を阻止するべく奔走する恭平&ジャカランダと、混成チームのせめぎ合いが描かれていく・・・


 上のストーリー紹介部を読むと、ジャカランダ嬢も不老虫並みに人間離れした超人みたいに感じるかも知れないが、そんなことはない。最初こそ、ちょっととっつきにくいが、恭平とも次第に打ち解け、年相応の女性としての魅力も十分に描かれる。

 悪役となる混成チームのメンバーについても個々に深掘りされていて、危険を知りつつも不老虫の持ち込みに協力する研究者たちの苦悩も描かれている。

 ミステリというよりはサスペンス、もっと云えばSFなのだが、中国から出てきたコロナウイルスが瞬く間に世界中に蔓延してしまった現実を知った身からすれば、この物語を荒唐無稽と笑い飛ばすことはできない。

 おそらく続編はないのだろうが、短編でもいいので恭平とジャカランダのその後が知りたいなぁ・・・



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