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新任刑事 [読書・ミステリ]


新任刑事(上) (新潮文庫)

新任刑事(上) (新潮文庫)

  • 作者: 古野 まほろ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2020/03/28
  • メディア: 文庫
新任刑事(下) (新潮文庫)

新任刑事(下) (新潮文庫)

  • 作者: 古野 まほろ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2020/03/28
  • メディア: 文庫
評価:★★★★

 交番勤務の警官から突然、刑事として ”取りたて” られた主人公。新人刑事として、始めて出くわす業務の数々にてんてこ舞い。
 その一方で、時効の迫る逃亡犯についての情報がもたらされ、署を挙げての追及捜査、そして逮捕に向けての計画が実行されるが・・・
 新人刑事の ”お仕事小説” でありながら、本格ミステリでもある。その真相はまさに驚きの一言。


 前作「新任巡査」と同一の県警を舞台にしているが、時代も異なり、共通して登場する人物もいない。ストーリーも独立しているので、こちらから読んでも差し支えない。


 2010年1月。愛予県警察で交番勤務に勤しむ原田貢(はらだ・みつぐ)は、愛予署刑事一課強行班への異動を命じられる。
 そこには警察学校同期にもかかわらず、その優秀さで、いち早く刑事への転属を果たした上内亜梨子(かみうち・ありす)がいた。
 先輩刑事や、かつての同期からの指導を受けながら、新人刑事としての一歩を踏み出す貢。

 序盤は、あまり世に知られていない刑事の仕事の一端が描かれていく。
 例えば、変死体が発見されたときの処理。TVドラマなどでは、鑑識の調査や監察医の検死が終わってから刑事がやってきて捜査に入る・・・というふうに描かれるが、実は刑事は死体発見時から現場に関わっている。そして、捜査に入る前にまず報告・記録のために膨大な書類を書かなければならない。このあたりはけっこう驚かされる。刑事の仕事の中で ”書類書き” はものすごくウエイトが高いことを読者は知ることになる。

 このあたりは映像化しても、見栄えするものになるかは疑問だろう。フィクションの中でそこのところが省略されているのもむべなるかな、である。

 さて、この時期の愛予県警は大きな問題を抱えていた。10年前に起こった傷害致死事件で指名手配となった渡部美彌子(わたなべ・みやこ)の時効を3ヶ月後に控えていたのだ。
 当時の県警幹部をナイフで刺し、結果的に死に至らしめた美彌子の逮捕は、愛予県警の悲願となっていた。

 そんな中、愛予署に一本の密告電話が入る。美彌子によく似た女が、愛予駅前の店でホステスをしているというものだった。まさかの ”お膝元” での潜伏情報に、愛予署は沸き立つ。

 直ちに人物確認の極秘調査が立案され、貢も亜梨子もその一員として動員される。該当人物の指紋を入手、確認でき次第即逮捕という段取りのもと、実行の日を迎える。
 しかし物語はこの後、二転三転する。警察官を巻き込んだ放火殺人事件が発生、そして美彌子本人からの長文の手紙が警察宛に届くのだが・・・

 終盤、時効成立の時刻を前に、刑事たちの懸命の捜査が続く。そして明らかになる真相。文庫本上下で700ページ近いが、伏線はもう序盤からあちこちに撒かれている。それが一斉に回収されていくことによって、既定の事実と思われていたことがどんどんひっくり返っていく様は、まさに壮観。本格ミステリとしても素晴らしい。

 冒頭にも書いたが、警察内の様子も詳細に描かれる。新人刑事の仕事ぶりからはじまって、県警上層部の権力抗争まで。このあたりは、もと警察官僚だった作者の独壇場だろう。



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