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金田一耕助に捧ぐ九つの狂想曲 [読書・ミステリ]

金田一耕助に捧ぐ九つの狂想曲 (角川文庫)

金田一耕助に捧ぐ九つの狂想曲 (角川文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2012/11/22
  • メディア: 文庫



評価:★★★

9人の作家が、「金田一耕助」をテーマに競作したミステリ短編集。

本人をそのまま登場させたものあり、
ちょっと違う "キンダイチ" さんが登場するものあり、
あるいは意外な変化球ありとなかなかバラエティに富んでる。


「無題」(京極夏彦)
 百鬼夜行シリーズのキャラ、売れない作家関口くんの登場。
 長編「陰摩羅鬼の瑕」の中のエピソードを抜粋したもの。
 夏のある日、暑さにへばった関口が、ある人物と遭遇する。

「キンダイチ先生の推理」(有栖川有栖)
 キンダイチ先生こと推理作家の錦田一(にしきだ・はじめ)と
 金田耕一少年が、シンガーソングライター殺人の謎を解く。
 これ、短編集で既読だった。

「愛の遠近法的倒錯」(小川勝己)
 昭和27年10月、岡山県の僻村で起こった殺人事件。
 久保銀造からそのあらましを聞いた金田一耕助は、
 解決済みのはずの事件に隠された真相を見抜く。
 犯人が犯行に至るまでの経過が鬼気迫る。
 これはいい。本家のあの独特の雰囲気を再現してる。

「ナマ猫亭事件」(北森鴻)
 金田一ならぬ "近田一" 耕助が登場する。
 およそ本家とは似ても似つかぬ外見の探偵・近田一が
 新興宗教の教祖が殺されて首を持ち去られた事件に挑む。
 この手の事件では、首を切断する理由に、
 どんな理屈づけをするかが作者の腕なんだろうけど
 このオチは何というか・・・反則すれすれ?

「月光座 -金田一耕助へのオマージュ-」(栗本薫)
 名探偵・伊集院大介がある日出会ったのは、
 「病院坂の首縊りの家」事件後に渡ったアメリカから
 密かに帰国していた金田一耕助だった。
 二人は歌舞伎・月光座に招待されるが、その舞台の上で
 50年前の「幽霊座」とそっくりの事件が起こる。
 半世紀前の事件に新たな解釈を示す大介。
 そして金田一耕助は何を語るのか。
 これもいい。"自前の探偵と金田一耕助の共演" というのは
 いくつか読んだけど、これがいちばん良いように思う。
 大介が耕助へ見せるリスペクトぶりは、
 そのまま栗本薫の横溝正史へのそれなんだろうと思った。

「鳥辺野の午後」(柴田よしき)
 学生時代に友人だった "私" と由季子。
 時が経ち、作家と編集者として再会した二人。
 しかし二人が一人の男性を愛したことから悲劇が始まる。
 "私" が出会った謎の老人(金田一耕助と思しき?)は
 「安楽椅子探偵は苦手」と言いながらも、"悲劇" の真相を見抜く。

「雪花 散り花」(菅浩江)
 京都にある「金・田・一 探偵事務所」。
 金(キム)、田(デンちゃん)、一(ニノマエくん)の若者三人組で、
 「三人揃って金田一!」というゴレンジャーみたいな連中。
 ある美女の依頼によって、会員制クラブの常連だった老人が
 自殺してしまった事件の真相に挑む。
 菅浩江ってSF作家のイメージだったんだけど、ミステリを、
 それも京都を舞台に書くなんて。かなり意外。

「松竹梅」(服部まゆみ)
 昭和44年。風邪を引いて荏原病院を訪れた金田一耕助は
 院長の母親・荏原タケから、新橋演舞場に招待される。しかし
 退職した等々力元警部と共に劇場を訪れた耕助が出会ったのは
 荏原家の使用人・宮下梅子の死体だった・・・
 これもいいなあ。犯人の見せる執念が本家を彷彿とさせる。

「闇夜にカラスが散歩する」(赤川次郎)
 "私" が乗り込んだ列車は、人家のない山中を駆け抜けてゆく。
 そして、車中で "私" は、謎のサスペンス劇に巻き込まれる。
 これのどこが金田一?って思ったけど、しっかり金田一でした(笑)
 それよりも「赤川次郎」と「金田一耕助」なんて、
 およそ接点があるとは思えなかっただけどねえ・・・
 タイトルページ裏の紹介文では「獄門島」のファンらしいが。


どれもそれなりに面白いけど、やっぱり金田一耕助本人が登場する
「愛の遠近法的倒錯」「月光座」「松竹梅」がベスト3だと思う。

短編もいいけど、誰か長編書いてくれないかなあ。
山田正紀の「僧正の積木歌」がホント良かったから。

でもまあ、超有名キャラを使って独自の物語を書くって
考えたらものすごく大変だし、プレッシャーも相当あるだろうし。
やってみたくても、なかなか踏み切れないんだろうなあ・・・


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コメント 4

コースケ

mojoさん、こんばんは。
私も金田一耕助オマージュとしては「愛の遠近法的倒錯」が好きですね。
後は「鳥野辺の午後」の雰囲気が好きです。

ホームズもののパロディやパスティーシュはたくさんありますが、
日本を代表する金田一耕助、明智小五郎のそういった作品は
あまりない気がするので、今の作家さんに書いてほしい気持ちはありますねえ。
by コースケ (2015-03-15 19:11) 

mojo

31さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。
by mojo (2015-03-15 20:50) 

mojo

コースケさん、こんばんは。
nice! & コメントありがとうございます。

「愛の遠近法的倒錯」は、本書の中では
いちばん本家の雰囲気の再現に成功してるように思います。

私も日本の名探偵もののパスティーシュは少ないと思いますので
たくさん書いて欲しいですよねぇ・・・

金田一、明智はもちろん、その他の名探偵も。
神津恭介なんかも読んでみたいなぁ・・・

また、よろしくお願いします。
by mojo (2015-03-15 21:00) 

mojo

makimakiさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。
by mojo (2015-03-16 20:27) 

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