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自薦 the どんでん返し3 [読書・ミステリ]


自薦 THE どんでん返し3 (双葉文庫)

自薦 THE どんでん返し3 (双葉文庫)

  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2019/01/10
  • メディア: 文庫
評価:★★☆

あらかじめ ”どんでん返しがあります” って銘打って、
ものすごくハードルを上げてる(笑)アンソロジー、その第3弾。


「偶然」折原一
一人暮らしの老女・房枝のもとにかかってきた1本の電話。
それは10年前に家を出て行った一人息子と名乗り、
ヤクザとトラブルを起こして1000万円必要になったのだと告げる。
事情があって家から出られない房枝は、家まで取りに来てくれと言う。
房江のパートと振り込め詐欺犯のパートと交互に描かれ、
最後に意外な展開が。おお、これはかなり驚いた。

「さくら」北村薫
還暦を迎えた老女が、自分の人生を振り返る独白が綴られる。
読んでいくうちに、なにやら不気味な様相を呈してくるのだが
これは文章でないと味わえない ”怖さ” だろう。

「富士参り」鯨統一郎
武蔵国美里藩藩主の姉・りん姫(20歳)は、ある陰謀で暗殺されかかる。
間一髪、脱出に成功するが、その途中で負傷して記憶を失ってしまう。
そこを江戸で居酒屋〈鈴屋〉を営む半助に救われ、
姫は居酒屋の看板娘 ”おりん” として働き始めることになる。
探偵役はこのおりんさんなのだけど、聞き込みと証拠で推理する、
という展開をたどらないので純粋なミステリとは言いがたいかも。
呉服屋の番頭・雄吉の妻おようが殺されるという事件が起こる。
その犯人を突き止めたおりんさんは、
なんと自らの手で下手人を ”成敗” に乗り出していくという、
『必殺仕事人』と『桃太郎侍』を合わせて女性版にしたような話。
本作は『鬼姫人情事件帖』というシリーズの第1話とのこと。
全話を読もうとは思わないけど、
最後にりん姫がどうなるのかは知りたいかも。

「ハガニアの霧」長岡弘樹
グアム島で実業家として暮らす甲野は、
買い取った民家の物置から1枚の絵画を発見した。
それは有名な女性画家の描いたもので、現存する作品が少ないことから、
世界中の画廊から買い取りの申し出が殺到した。
しかし甲野はどんな高価格を提示されても絵は売らなかった。
そんなとき、甲野のオフィスに電話がかかってくる。
それは彼の息子を誘拐したという知らせだった・・・
誘拐事件の真相は見当がつくけど、そのあとさらにひとひねり。

「拾ったあとで」新津きよみ
ストーリーは1人の女性の独白で綴られる。
彼女はある晩、現金を拾った。その額は242万円。
警察に届けたが拾い主は現れず、半年後にそっくり彼女のものとなる。
しかしそれから彼女の人生は、坂道を転がるように転落していく。
要するに ”あぶく銭” は身につかない、って話なんだが
まわりまわって最初のところに戻ってくるのはよくできてる。

「九州旅行」麻耶雄嵩
短編集で既読。”銘” 探偵メルカトル鮎シリーズの一編。
ミステリ作家・美袋(みなぎ)のマンションを訪ねてきたメルカトル。
二人で外へ出た途端、メルカトルは「血の臭いがする」といって
同じ階の別の部屋へ向かい、そこで刺殺死体を見つけてしまう。
遺体を前に推理を巡らす美袋とメルカトルだが・・・
ミステリとしてのオチではなく、物語としてのオチに驚く話かな。
今回再読してみたら、内容があまりにも
「九州旅行」というタイトルと関係がないことに改めて驚いた(爆)。

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