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ハンターキラー 潜航せよ [映画]


いつの間にか6月も終わろうとしています。
ブログの更新もすっかりサボってしまいました。

しかし、しなければいけないことを忘れて
好きなこと三昧にふけるのも快いものです(おいおい)。

私の父は、60歳で定年を迎えてからは毎日昼寝ばかりしていたらしい。
「らしい」というのは、当然ながら私は毎日働いてましたから。
20代から30代にかけては、職場を退勤するのが8時9時は当たり前で
家に帰れば酒を飲んで寝るだけでしたからねえ。

 うーん、今とあまり変わらないような気がしているが・・・


さて、私の場合はどうかというと、
60を迎えて定年になってもすぐには年金が出ないので
親父のように寝て暮らすわけにはいかず、働かなくてはならない。

再雇用制度のおかげでとりあえず職には就けたものの収入は激減。
まあこの時代、高齢者を雇ってくれるだけで御の字ですね。
暇な時間も増えたことだし、文句は言うまい。


5月中旬頃までは、新しい職場に適応するために
気持ちの余裕なく過ごしてきましたが
5月下旬あたりからはかなり落ち着いた生活を始めてます。

かみさんと連れだって出かけたり、映画を見に行ったりという
夫婦の時間もかなり増えてきました。

6月一杯くらいは更新をサボってしまおうかとも思ってたのですが
休んでる間に読み終わった本もかなり貯まってきて
これ以上 ”宿題” が増えるのも如何なものかと思い、
これから読書記録を再開しようと思います。

ついでに観た映画の感想なんぞも時折挟んで。

hunter killer.jpg
もう3ヶ月近く前に観た映画なので
いささか時機を逸した感もあるのだけど・・・

「潜水艦ものにハズレなし」とよく言われる。

漫画では「サブマリン707」、映画では「眼下の敵」、
小説では「終戦のローレライ」とみな名作ぞろい。
「沈黙の艦隊」や「レッド・オクトーバーを追え」
なんてのもあったし、数え上げればけっこうな作品が思い浮かぶ。

そんな「潜水艦もの」に連なる系譜として本作がある。

まず小説で発表され、ハリウッドで映画化されて
日本では原作の翻訳出版と映画公開がほぼ同時に行われた。

小説の出版が2月、映画の公開が4月というわけで
私は原作の方を先に入手していた。

昔の角川映画のキャッチコピーに
「見てから読むか、読んでから見るか」
なんてのがあったのだが、私はまず映画を観ることにした。


ロシア国防相ドゥロフは、ロシア帝国復権のためにクーデターを敢行、
北海沿岸ムルマンスクの潜水艦基地に滞在していた
穏健派の大統領ザカリンを拉致監禁して
アメリカ相手に武力行使をする準備を整えていく。

その手始めに、北海を航行していた自軍の原潜<コーニック>を
謀略を以て撃沈し、その責任をアメリカになすりつけようとする。

そのとき、同一海域にいて<コーニック>を追尾中だった
米軍の原潜もまた、消息を絶ってしまう。その捜索・救助のため、
現地へ向かう攻撃型原潜<アーカンソー>の
艦長ジョー・グラスが本作の主人公である。

そしてもう一方の主役は
海軍特殊部隊SEALSのリーダー、ビル・ビーマン。
ロシア国内の不審な情勢を探るべく、
ビーマンの部隊はムルマンスク基地へと潜入する。

彼らの報告からロシア大統領の監禁を知った米国政府は
ビーマンの部隊にザカリンの救出を命じる。

そして、沈没地点で<コーニック>の生存者を発見・救助した
<アーカンソー>もまた、特殊部隊と露大統領を収容するために
ムルマンスクへ向かうことになる。

そして、いろいろあって(笑)ビーマン部隊は大統領の救出に成功、
彼らを収容した<アーカンソー>は尻に帆かけて逃げ出すわけだが、
そうは問屋が下ろさないとばかり、
ドゥロフが差し向けた追撃艦隊が立ち塞がる・・・
というところがクライマックスだ。


全体的に思ったことは、作りがいささか雑かなあ・・・ということ。

ムルマンスク軍港の深奥まで入りこむにあたり、グラス艦長は
<コーニック>の生存者であるアンドロポフ艦長の助力を受け、
海底や機雷まで数mというギリギリの空間をすり抜けていくのだが
雰囲気はハラハラ、亀のようにノロノロと進む。

それが一転、部隊と大統領を収容してからは
行きの苦難が嘘のようにさらりと通り抜けていく。
(というか、機雷原を通り抜ける描写自体が皆無)

「一回通ってるんだからOKなんだろな」とは思うが
いささか安易な気もしないでもない。

特殊部隊も、潜入時点でメンバーはわずか4人しかおらず、
しかも一人は怪我を負って動けない。
こんな状態で軍の基地への潜入なんてできるのか、
さらにはその中で大統領の監禁場所までたどり着き、
ましてや救出なんてできるのか、とか心配になってしまうが、
これも大統領の警備班の生き残りが1人いて、
彼のおかげですんなりと大統領の居場所まで行けてしまう。

 敵の助けを借りて敵地の奥まで潜入する、というのは
 展開としてはアリだと思うが、海でも陸でも同じ手を使うのは
 いささか安易ではないのか?

さらには、脱出していく<アーカンソー>を追撃する駆逐艦の乗組員が
(艦長を除いて)全員がアンドロポフの教え子だった、ってのは
いくらなんでも偶然が過ぎるのではないか。

もっと言えば、クライマックスのミサイル迎撃シーンは・・・
いや、もう書かないようにしよう。


ストーリーの発想は面白いし、
海中の戦いだけでなく、地上部隊の動きも同時に描いたりと
潜水艦ものに新味をもたらそうという意義は十分に感じるのだけど
もうちょっと丁寧に作ってもらえたらなあ・・・
というのが私の感想。


さて、それでは小説版はどうか。
上に書いたような感想を持って小説を読んだのだけど・・・

ハンターキラー 潜航せよ〔上〕 (ハヤカワ文庫NV)

ハンターキラー 潜航せよ〔上〕 (ハヤカワ文庫NV)

  • 作者: ジョージ・ウォーレス
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2019/03/06
  • メディア: 文庫
ハンターキラー 潜航せよ〔下〕 (ハヤカワ文庫NV)

ハンターキラー 潜航せよ〔下〕 (ハヤカワ文庫NV)

  • 作者: ジョージ・ウォーレス
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2019/03/06
  • メディア: 文庫

評価:★★☆

驚いたことに(というか当たり前なのかもしれないが)
小説版と映画版はかなり内容が異なる。

ロシア海軍のドゥロフ提督(映画では国防相)がクーデターを起こして
大統領を監禁し、それをアメリカの特殊部隊と原潜が救出に行く、
という大まかな設定とストーリーは同じだけど
細かいところはかなり違う。

例えば、<アーカンソー>(小説版では<トレド>)には
救助したロシア潜水艦の艦長・アンドロポフは乗り込まない。
(救助されて早々に後方移送されてしまう)

 だから、彼の助力で機雷原を抜けるとか、
 追撃の駆逐艦の乗組員が教え子云々というのもナシ。

基地に潜入した地上部隊は、護衛の生き残りと遭遇することもなく
行き当たりばったりにウロウロしているうちに
偶然、大統領の監禁場所に行き着いてしまう(おいおい)。

クライマックスのミサイル迎撃シーンもナシ。


そして、原作と映画の一番異なるところは
ニューヨーク証券取引所にまつわるエピソード。

実はドゥロフは、クーデターを起こすに当たり
アメリカ内部にも ”爆弾” を仕込んでおいた。

ニューヨーク証券取引所のシステム改修を請け負ったベンチャー企業には
ロシアマフィア(裏でドゥロフとつながってる)の息のかかったメンバーが
潜んでおり、彼らが新システムに仕込んだプログラムが動き出した途端に
証券取引所は大混乱に陥るようになってる。

ロシア軍の武力行使と、金融市場の混乱と
内外からアメリカを揺さぶっていこうという作戦だったわけだ。

しかし、証券取引委員会の女性監査官キャサリンがそれに気づき、
彼らの陰謀を阻止しようと孤軍奮闘する様が描かれていく。

要するに原作ではグラス艦長率いる<アーカンソー>、
ビーマン隊長率いる特殊部隊、そしてキャサリン監査官と
3つのストーリーラインが並行して語られてる。
で、映画版ではキャサリンの部分はバッサリ切られてるわけだ。

たぶん一番大きな理由は尺の問題だろう。
なにせ原作は文庫上下巻で850ページ近い分量だし。

二つ目は株価の混乱とかは映像にしにくいからだと推察する。
ちょっと前に邦画で「人類資金」って作品があったが、
あれも株式市場のシーンはよく分からんかった(笑)。

そして、小説版で私が一番気になったのは視点人物の多さ。
ストーリーラインが3つあるのに加え、
それぞれ複数の人物の視点から描かれていく。

グラス艦長、ビーマン隊長、キャサリン監査官はもちろんとして
ドゥロフ提督、ロシア大統領、アメリカ軍上層部、
証券取引員会でのキャサリンの上司/同僚、
陰謀側のロシアマフィアも一枚岩ではなく複数の人物が関わる。

その結果、常に7~8カ所での同時進行するストーリーが
語られていくことになり、当然ながら個々のシーンは短くぶつ切りに。

書いてる方は、読者の興味を先につなぐつもりで
頻繁に視点を変えてるのだろうけど、読んでいる方としては
「おお、盛り上がってきたなぁ・・・」と思ったら
「一方、○○では・・・」とばかりに別の場所へ飛ばされてしまう
ということの連続で、いささかフラストレーションが貯まる。

映画などの映像作品では気にならないのかもしれないが
小説という表現でこの手法を使うのは逆効果のようにも思う。

でも、映像世代の若い人たちからしたら
こういう感じの文章の方が読みやすいのかなぁ・・・?

なあんてこともちょっと思ってしまった。

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