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密室・殺人 [読書・ミステリ]

密室・殺人 (創元推理文庫)

密室・殺人 (創元推理文庫)

  • 作者: 小林 泰三
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2014/01/21
  • メディア: 文庫



評価:★★★☆

小林泰三、初の長編ミステリだとのことだ。
もともとホラーの人で、たまにSF書いてたまにミステリ書く人、
ってイメージだったんだけど、本作は直球の本格ミステリですね。

探偵・四里川陣(よりかわ・じん)の助手を務める四ッ谷礼子。
彼女の前に現れた年輩の女性・仁科順子が持ち込んだ依頼は
息子・達彦の無実を証明して欲しい、というものだった。

山奥に建つ達彦の別荘で殺人事件が起こった。
現場はカードキーでロックされ、衆人環視の下にあった密室。
被害者はそこから姿を消し、死体は外部で発見される。

状況はかなりシンプルで、容疑者の数も多くない。
でもその分、事態の不可解性が際立つように思う。
そして、この真相にたどり着ける人はかなり少ないのではないかな。

謎解きは鮮やか。どう考えても無理そうに思えたものが
視点を変えると、するすると解けてしまう。
子供の頃に遊んだ「知恵の輪」を思い出したよ。


"徳さん" こと岡崎徳三郎、弁護士の西条源治、謎の女・新藤礼都など
他の作品でも活躍する "小林泰三ワールド" の住人も多数登場して、
にぎやかにストーリーを盛り上げ(?)る。
ファンには嬉しい趣向かも。

ミステリとしてもとても良くできていて、
個人的には、今まで読んできた短編ミステリよりもいいと思う。


ただ、本書に仕込まれたもう一つの "ネタ" については
ちょいと頭を捻ってしまう。
確かにミステリとしては "大仕掛け" ではあるのだけどね。

このネタ抜きでも充分楽しめるミステリなんだし、
これがあるためにラストが何だかモヤモヤしてしまって
据わりが悪いような気が。

 まあ、そう思うのは私だけかも知れないが。

もっとも、作者はこのネタこそ作品の "目玉" として
使いたかったのだろうから・・・