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四元館の殺人 探偵AIのリアル・ディープラーニング [読書・ミステリ]


四元館の殺人―探偵AIのリアル・ディープラーニング―(新潮文庫nex)

四元館の殺人―探偵AIのリアル・ディープラーニング―(新潮文庫nex)

  • 作者: 早坂吝
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2021/06/24

評価:★★★


 主人公・輔(たすく)の父は、《探偵》のAI・相以(あい)と、《犯人》のAI・以相(いあ)を開発した。"相互対戦" することで "成長" するように設計された2つのAIが、様々な事件を通じて対決していくミステリ・シリーズ、第3巻。


 ネット空間で開かれた犯罪オークション。《犯人》のAI・以相が立案した犯罪計画を競り落とすものだ。
 そこに現れたリボンをつけたゾウ(アバター)が、「親しい人を殺した犯人を見つけて、そいつを殺してほしい」と願いを口にする。その口調から幼い女の子と推測されるが、意外にも以相はそれを引き受けるのだった。

 それを知った輔と《探偵》のAI・相以は、雪の残るR県の山中へとやってきた。犯罪オークションで以相の犯罪計画を競り落とした少女がここに住んでいる、と相以が推理した場所だった。

 そこには奇妙な白い洋館、"四元館" があった。風車、太陽光、地熱、水車と4つの発電装置を備えた屋敷だ。

 そしてそこには四元錬華(よつもと・れんか)という10歳の少女が住んでいた。どうやら彼女が以相の犯罪計画を落札した人物らしい。

 彼女の父・錬二(れんじ)はかつて株の相場で大儲けをして資産家となったが、趣味の登山にいったきり、消息を絶ってしまう。
 錬二の妻・凜花(りんか)は、夫が行方不明になった山に四元館を建設したが、2年前に病没してしまう。その後、この屋敷には錬二の兄・欽一(きんいち)の一家をはじめ、錬二の遺産を狙う親類たちが押し寄せ、同居を始めていた。

 そして、二日後には錬二の失踪から7年がたつ。錬二は公的に死亡扱いとなり、錬華が唯一の遺産相続人となるはずだった。錬華が生きている限り、錬二の遺産は親類たちの手には入らない。

 金の亡者ばかりの親類の中で、唯一、錬華が打ち解けられる存在だったのは従姉妹の四元てとら。しかし彼女も一年前に屋敷の風車塔近くで変死体となって発見された。遺体の周囲には雪が積もり、足跡は一切なく、凶器も存在しないという不可解な状況で。

 錬華が犯罪計画を落札したのはてとらの復讐が目的と思われた。しかし事件はそれだけでは終わらず、第二、第三の殺人が起こる・・・


 不可解な状況での殺人事件の数々が、ラストで解明されるんだが、真犯人とメインのトリックだけを見たら、驚くというより唖然としてしまう。怒り出す人もいるんじゃないかなぁ。それくらい "トンデモ/バカミス系" のネタだ。
 ある意味、館ミステリの限界に挑んでいるとも云えるかな。作者の意欲というか度胸は買うが、評価は分かれそう。

 そして終盤はミステリというより、生命の危機にさらされた状況からの脱出ゲームみたいな雰囲気に。物語としてはけっこう面白いと思うんだけどね。



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